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しおりを挟む「あの湖が何かわかるか?」
「あれは…この国の根幹、アンゲルスレイク、でしょうか。」
その通りだ。と陛下は頷く。
アンゲルスレイク。御伽話にも出てくるそれは、不毛の地に生きる人間を哀れに思った女神レウラーが与えてくださったという、祝福の湖。
「あれは、正確には湖ではなく、泉なのだ。」
そして陛下は話し始める。
あの泉はこんこんと美しい水を湧かせつづけ、今ではこの国全域に行き渡らせている水の水源であるということ。この水があるから、国民全てが安心して暮らせること。長い歴史の中では、他国からこの水源が狙われてきたこと。そして、言い換えればこの国には、この水源しかないこと。などを呟くように話した。
「だがね。水源をこの泉に頼り続けることには、問題もあるのだ。」
「問題、ですか?」
「湧く水の量は今までのところ、変化していない。つまり、この水で養える人数には上限があるということだ。」
「あ……なるほど。」
現状、貧民層にはこの水が届いていないこと、増える人数を支えるには圧倒的足りなくなっている現実があることを教えてくれた。それでも、国庫を潤すために、他国に水を売らなくてはならいところまで、逼迫しているのだと言う。
「女神が本当に居たかどうかはわからない。伝説として伝わっている以上のことを知る方法はない。だが、女神が選んだ若者の……おそらく、女神の恋人であったのだろうな。その若者の血筋が我々王家の者であるということだ。そして我々はこの泉を守っていくことが至上の務めだと言われ続けてきた。しかし、先々代の時代から、後継が生まれにくくなってしまった。先先代の王弟の血筋は繁栄しているのに、だ。」
一息ついて、話を続ける。
「先々代の体に問題があったのか、一部の信心深い者達が言うように、女神の怒りを買ったのか。そんなことはどうでも良い。とはいえ、言い伝えがあってね。若者の血が途絶えた時、この泉も枯れる。この言い伝えが真実か否か。検証することができない以上、危険を冒して守り人である血筋を絶やすことはできないのだ。」
「なるほど。それは確かに……」
途絶えさせてしまって、もしも泉が枯れたなら、取り返しがつかないことになるわけね。
「そして、この泉の存在を隠していかなければならない。」
え?そうなの?公表して皆で守った方が良いのではないかしら。
「ふ。納得のいかない顔だな。良い。意見を述べてみよ。」
「え。あ、はい。国をあげて全体で管理することはできないのですか?」
「それはね。今は無理なんだよ。」
口を挟んできたのは、次男様。
「人口が水に対して余裕のある頃に、その政策を取っていれば、あるいは可能だったかもしれないが、今となっては、水を欲する者が多すぎるんだ。生き物は等しく、水がなければ生きてはいけないだろう?それを解放してしまえば、どんな風に汚されるかわからない。汚れてしまったら、皆で共倒れだ。その懸念を残したまま、漠然と( 皆で守ろう )と言ったって、それは無理だ。性善説を無闇に信じて失敗してからでは遅いからね。」
「ああ、失敗する可能性のあるものは失敗するという、アレですね。」
「面白いことを言う。——の法則だね。」
再び陛下が話す。
「失うわけにはいかないからな。この水源を守る重大さを、わかる者にか託せないのだ。だが、それだけでは、先に言った問題は解決できない。」
「人口を支えられない。と。」
「そうだ。この国は、この泉に頼りすぎているのだ。だが、他の国にはこの泉がないだろう。」
そういえば、他の国はどうやって水を確保しているのかしら。
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