侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

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26 サイラーとの話し合い

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 改めてお茶を入れ直してもらい、一応デリケートな話だからと、使用人には下がってもらい、2人だけにしてもらう。お父様の言うとおり、ドアは開けたままだ。

 「さて。では、いきなり本題に入らせてもらいますね。」
 と次男様は話を切り出した。リリアも
 「はい。お願いします。」
 と、どこか間抜けな返事を返す。
 
 「話し合うと言っても、先ほども言った通り、私達には擦り合わせる話がありません。考える材料が足りなさすぎます。」
 「はい。」
 「なので、お父上の提案について、お互いの考えや気持ちを確認したいと思うのです。ここでレディファーストだと言ってもむつかしいでしょうから、まずは私の話を聞いて頂けませんか?」
 「わかりました。」
 
 「それでは、」
 と、一拍置いてから、次男様は話し始めた。

 「正直、私は婚姻をすることはないと思っていました。もしもその機会があっても、よほど運良く棚ぼたか、年齢を重ねてから、……こんな言い方はアレですが、離婚歴があるとか、寡婦であるとか、訳ありの女性の受け入れ先としか、自分の価値がないことを自覚しています。」
 
 いきなり、あまりに自分を卑下した言葉に思わず
 「そんなことは、」
 と言ってしまったリリアだったが、すぐさま、次男様は手で制して、
 「能力や容姿のことは、この際置いておきます。その上で、私の立ち位置は、長男のスペアという価値しかないことは絶対です。父には他に爵位はなく、母方の方にも浮いた爵位はありません。
 世の中の次男はそう言う目で見られるのが普通です。世の貴族令嬢にとって、受け継ぐ家がないことは、魅力のないものであるようです。」

 「婿入りなどの求婚があるのでは?」
 「ええ。ありました。でも、それだと、私の立場がオスカーに渡るでしょう?オスカーに兄の補佐ができると思いますか?」
 「ああ……無理、ですね。」

 「そうなのです。だから、必然的に、オスカーは婿入り先を探しますが、私の所にきてくれるのは、受け継ぐ物がないことを理解してくれる女性でなければなりません。そうなるとなかなかね。私に寄ってくる女性は、恋の駆け引きや火遊びを楽しみたい女性ばかりで、うんざりです。」
 
 次男様は自嘲してから、続ける。
 「ところが、私は幸い、良い縁に恵まれて、職場を得ようとしています。私は既にスペアとしての価値を失いつつあります。兄が成婚し、子を儲けました。男児と女児をひとりずつ。家では万が一の保険、くらいの立場にまで落ちています。このまま家に居続けるのも、義理姉に申し訳ないと思っていたところでしたので、渡りに船でした。このまま、忠臣として一生を国に捧げるのも良いと思い始めていたところに、今回の騒動がおこり、今、リリア嬢のお父上から、申し出をいただきました。」

 それから、リリアをじっと見つめながら言う。
 「もちろん、そういう意味で、リリア嬢に対して、下心がないとは言い切れません。私とっては、これ以上の条件はありませんから。ですが、お父上の言うことにも一理あると、私は思います。」

 下心と聞いて、ほんの少しチクリとするが、次男様は、この下心をもたれないことで、婚姻を諦めていたという話をしている。ならば、それは隠すべきだろう。


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