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55 決意
しおりを挟む医師は、サイラーの仮説を元に問診を行ったようだが、決め手に欠けて診断をくだせないようだった。
「何か、決定的な、オスカー君を揺さぶることがあれば良いのですが。」
そのことをサイラーから聞いたリリアは、提案をする。
「私が、オスカー様に会って、挑発したらどうかしら?」
「会わせることは、考えていない。」
「でも、オスカーは、私と婚約することにこだわっていると思うの。だから、その気はないって言えば、彼の心を揺さぶるんじゃないかしら。」
少し考えてから、サイラーは言った。
「私の側から離れないように。必ず、私の後ろにいるんだ。それが約束できるなら、医師に立ち会いを求めるよ。」
「わかったわ。約束する。」
サイラーと未来を共にすると決めたのだから、どうせ、いつかは向き合わなくてはならない相手だ。それに、嫌だと思うあまり、オスカーとは何も話さないまま、終わってしまっている。せめて、自分の言葉で別れを告げることが、誠意だったのではないか。それなら、ズルズルと引き伸ばして、得体の知れない恐怖感を持ち続けるよりも、勢いで決着をつけてしまった方が良い。
医師は私が立ち会うことに難色を示したが、結局、一定の効果は見込めるかもしれないと、消極的ではあるが、認めてくれた。
サイラーは念の為、と、ゲイル伯爵と長兄に事情を話し、同席を頼んでくれた。
決戦の日。私は初めて長兄、嫡男様にお会いした。
「初めまして、リリア嬢。嫡男のテイラ・ゲイルと申します。」
「初めまして、ゲイル家小伯爵様。リリア・マリノルと申します。」
「弟達が済まないことをしたね。」
いつか、サイラー様に言われたセリフと同じだわ。と、思いながら、
「いいえ。サイラー様と縁が結べたことを、嬉しく思っています。」
「そう言ってくれる気持ちが楽になるよ。サイラーをよろしくね。」
「もう良いでしょう兄上。リリアが怯えてしまう。」
「あら、怯えてはいませんよ。ゲイル家小伯爵様、機会を作って、サイラー様の幼少のころのことを沢山教えてくださいね。」
「承知した。」
「幼少のころの話とか、キツいなあ。」
ははっと笑う顔がサイラー様にそっくり。さすが兄弟なのだわ。
「さて。気は進まないが、行こうか。」
ゲイル伯爵が、そう促して、私達3人は伯爵の後に続いた。
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