60 / 68
56 対決
しおりを挟むオスカーの部屋には既に医師がいて、いつものように問診をしているようだった。先に伯爵が入り、続いて小伯爵とサイラー様。リリアは少し開けたままのドアの外で待機する。
威圧的な態度で接してくるオスカーしか知らないリリアは、普段のオスカーを見てみたいと思ったので、後から入ることにした。
「父上に兄上達、一緒に来るなんて珍しいですね。どうかしたんですか?」
「ああ、たまには良いかと思ってね。」
「わあ、嬉しいです。」
中での会話は、ごく普通の家族の挨拶程度だったが、普段のオスカーが可愛らしいという言葉の意味を瞬時に理解できて、リリアは少なからず驚いた。記憶にあるオスカーと、扉の向こうにいるオスカーが同一人物とは思えない。他の人とリリアのイメージの差に納得がいく。
そんなことを考えている間に、中での話は進んでいて、リリアとサイラーの結婚式の話を伝えているようだ。
「リリアとも話したけれど、できれば家族全員で出席してしてほしいと思っているので、具合が良いようなら、是非オスカーにも参列してほしい。」
「ボクとリリアの結婚式にボクが行かないわけないじゃないですか。楽しみだなあ。」
「サイラーとリリアの結婚式だ。」
「何度も言うが、お前に婚約者はいない。」
「何を言っているんですか?父上が言ったんですよ?ボクはリリアと結婚して侯爵家に行くって。」
「その話はなくなったと、何度も言っただろう。」
「何故なくなるんです?ボクはそんな話、聞いていません。リリアだって悲しみます。」
「いいえ。とても喜びましたよ。」
これ以上は聞いていられないと、部屋に入ってしまった。
「リリア?」
オスカーは驚いたようで、目をはちきれんばかり見開いている。
「お久しぶりです。オスカー様。」
「あ、ああ……。びっくりしたよ。」
突然のことに焦ったのか、取り繕ったような笑顔を見せてきた。
「そうですか。今日は、私とサイラー様の結婚式の相談をしに来たのです。ついでにご挨拶にまいりました。」
「ん?何を言っているのかな?リリアはボクと結婚するんだよ。そういえば、ボクの部屋の準備はしたのかい?」
「いいえ?サイラー様と結婚します。今、2人で新婚生活を楽しむための離れを建てています。」
さりげなくサイラー様が私の側に来て腰を抱いてくれた。そして、伯爵とテイラが、オスカーをさりげなく抑えている。
それが見えているのかいないのか、
「またそんなことを言って。素直にならないと可愛がってあげないよ?ボクのことが好きだろう?」
と言う。
「オスカー様を好きだったことなんて一度もありませんけど。ああでも、これでも感謝しているんですよ。あなたが嫌な人だったおかげで、サイラー様と結ばれますから。」
「はは……何を言っているんだ。目を覚ませ。」
「起きています。」
「なら、何故、兄上と結婚するなんて!」
「サイラー様を愛していますから。」
「お前が!愛していいのは!俺だけだ!」
だんだん剥げてくる虚像。こんなオスカーを見るのは初めてのようで、リリア以外は全員驚いている。
「私が、オスカー様を愛さなければならないなんて、誰が決めたのかしら?」
「教えてやっただろう!お前は、俺のために生きるんだ!だいたい、何だその服装は!そんな地味な服を着て、俺の気を引くために努力をしろと言っただろう!」
「困りましたわね。オスカー様の気を引く理由が見つかりません。」
「このっ!」
椅子から勢いよく飛び跳ねて、腕を上げて殴りかかる素振りを見せた。——が、伯爵とテイラーに取り押さえられ、再び椅子に座らされる。
「離してください!リリアを教育しないと、教え込まないといけないんです!じゃないと、ボクの行くところがなくなります!」
……わりと早く白状したわね。
と、リリアは思った。
118
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします
たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。
荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。
「この猫に構うな。人間嫌いだから」
冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。
猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。
冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました
鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」
そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。
しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!?
だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。
「彼女を渡すつもりはない」
冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!?
毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし!
さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜――
リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される!
政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー!
「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」
婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております
鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。
彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う!
「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」
「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」
貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。
それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム!
そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。
ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。
婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。
そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!?
「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」
復讐も愛憎劇も不要!
ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!?
優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**
鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、
突如として現れた「本物の聖女」。
空中浮遊、瞬間移動、念動力――
奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、
王太子はその力に目を奪われる。
その結果、
王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、
一方的に婚約を破棄されてしまった。
だが、聖女の力は――
・空中浮遊は、地上三十センチ
・瞬間移動は、秒速一メートル
・念動力は、手で持てる重さまで
派手ではあるが、実用性は乏しい。
聖女の力は、見世物レベル。
少なくとも、誰もがそう判断していた。
それでも人々は喝采し、
権威は少女を縛り、
「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。
そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、
ある違和感に気づき始める。
――奇跡よりも、奪われているものがあることに。
派手な復讐はない。
怒鳴り返しもしない。
けれど静かに、確実に、
“正しさ”は明らかになっていく。
見世物にされた奇跡と、
尊厳を取り戻す少女たちの物語。
---
お金がありすぎて困っておりますの(悪役令嬢ver.) ~悪役令嬢は噂も相場も支配しますわ~
ふわふわ
恋愛
「お金がありすぎて、困っておりますの」
ヴァレンティス侯爵家当主・シグネアは、若くして膨大な資産と権限を手にした“悪役令嬢”。 しかし彼女は、金にも噂にも振り回されない。
──ならば、支配すればよろしいのですわ。
社交界を飛び交う根拠のない噂。 無能な貴族の見栄と保身。 相場を理解しない者が引き起こす経済混乱。 そして「善意」や「情」に見せかけた、都合のいい救済要求。
シグネアは怒鳴らない。 泣き落としにも応じない。 復讐も、慈善も、選ばない。
彼女がするのはただ一つ。 事実と数字と構造で、価値を測ること。
噂を操り、相場を読まず、裁かず、助けず、 それでもすべてを終わらせる“悪役令嬢”の統治劇。
「助けなかったのではありませんわ」 「助ける必要がなかっただけです」
一撃で終わる教育的指導。 噂も相場も、そして人の価値さえも―― 悪役令嬢は、今日も静かに支配する。
『婚約破棄された公爵令嬢は、王と交わらない道を選ぶ』
ふわふわ
恋愛
婚約者である王太子アルベルトから、一方的に婚約破棄を告げられた公爵令嬢エレノア。
だが彼女は、涙も復讐も選ばなかった。
「婚約は、役目でしたもの。終わったのなら、それで結構ですわ」
王宮を去ったエレノアは、領地に戻り、
干渉しない・依存しない・無理をしない
ただそれだけを軸に、静かに領地運営を始める。
一方、王となったアルベルトもまた、
彼女に頼らないことを選び、
「一人の判断に依存しない国」を作るための統治に身を投じていた。
復縁もしない。
恋にすがらない。
それでも、二人の選択は確かに国を安定へと導いていく。
これは、
交わらないことを選んだ二人が、
それぞれの場所で“続けられる世界”を完成させる物語。
派手なざまぁも、甘い溺愛もない。
けれど、静かに積み重なる判断と選択が、
やがて「誰にも壊せない秩序」へと変わっていく――。
婚約破棄から始まる、
大人のための静かなざまぁ恋愛ファンタジー
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる