侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

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番外編

オスカーの誤算2

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 明るくなって小屋の中が照らされると、埃だらけなことがわかった。よく見ると、奥にも部屋がある。

 どうやら、奥が寝室のようで、ベッドらしきものがあった。座ってみると、ギシという音ともに、大量の埃が舞い上がる。

 「ゴホッゴホッ、なんだここは!こんな所でどうやって生活しろと言うんだ!あの糞虫たちめ!誰か掃除しろ!」

 と怒鳴るも、誰もいないので、反応もない。

 「誰が掃除したり食事を作るんだ。もしかして、俺に自分でやれと言うのか?」

  夢をみた。
  「上は優秀だし、2番目も賢い。
   でも賢すぎて時々寂しいよ。」
  「あら。
   賢いなんてとても
   良いことじゃないの。
   でも、そうね。
   この子も合わせて3人とも、
   人の気持ちのわかる
   優しい子になって
   欲しいわ。」

   ——早く生まれておいで。


 腹が立って仕方がない。なんで俺がこんな目に遭うんだ。上手くやってきたはずだ。

 家族からは庇護対象として認識させた。先回りしてオスカーの望みを叶えたくなるように立ち回った。そしてそれは、成功していたはずだ。

 リリアのことは、焦って失敗してしまったが、あれはもう仕方がない。予定では、庇護欲でゲイル家から出さずに、オスカーを守っていきたいと、家族全員が思うように仕向けるはずだった。てっきり、リリアは嫁にくるものだと思っていたのに、婿に出されるのだと知って動揺してしまったのだ。

 それならば、リリアをそういうふうに育てなくてはいけない。そう考えたが、他人を操縦する知識が足りていなかった。

 結果、失敗したので、予定通りゲイル家に引き篭もるつもりだったが、家族のオスカーを見る目が変わってしまったので、方向性を変えるしかなかった。

 それなりに上手く方向転換できたはずだ。目論見通り、離れに閉じ込められた。義弟の存在を疎ましく思わないよう、兄嫁の懐柔も順調だった。時期を見て、心が回復したように見せかけ、このままそこで生きていけば良いと思わせるまで、後少しだったのに。

サイラーが、まず、思い通りに動かなくなった。何故だ。何故失敗した。

 「チッ」
 あいつだ。リリア・マリノル。あの異分子が、全てを壊した。あいつが現れなければ、オスカーの周りは、オスカーにとって完成された世界のままでいられたはずだった。

  夢をみた
  「綺麗な物を沢山みせてあげよう。」
  「心の豊かな優しい子になるわ。」
 
 
 「あいつ。いつか殺してやる。」

 どうやって殺してやろうか。
 誘拐して、どこかに閉じ込めて、そうだ。俺が味わっている、この生活をさせれば良い。同じでは芸がないからな。裸にひん剥いて縛り付けて、1日に一度だけ食料を与えてやる。俺の味わった屈辱を上回る屈辱を味わせなくては気が収まらない。ひざまずいて、許しを請わせる。泣いて謝っても許してやるものか。気が済んだら、俺の世話をする奴隷として飼ってやろう。

 目的ができたら、元気がでてきた。復讐するためには、ここを脱出しなくては。ここは何処なのか探る必要があるな。

 外に出て周りを調べる。フェンスはそこそこの範囲を囲っていて、耕せば1人分の畑など作れそうな広さがある。井戸もあった。飲めそうだ。火が起こせれば風呂にも入れるな。

 違う。ここで生きる方法を考えてどうする。どうせ畑など、耕す方法も知らない。

  夢をみた
  「名前をどうする?」
  「上の2人と似た響きで、
   オスカーってどう?」
  「いいね。」

  ——早く、早く出ておいで。

 何日もそうして周囲を調べているうちに、小屋の中の汚さが目についてきた。元々ほこりだらけだったのに加えて、オスカーが食べ散らかした残骸や、脱ぎ散らかした服なども散乱している。

 「チッ」そういえば何処かにほうきがあったなと、探し出して、全部外へ掃き出す。

 「この際、全部履くか。」
 何もかも全て掃き出した。少し小屋の中が綺麗になった。
 「お。こうやれば、」
 布団やらカーテンやらを叩くと埃がどんどん出てくる。部屋が片付くと、掃除道具や調理道具など、色々見つかった。スコップがあったので、敷地内に穴を掘って、全てのゴミらしい物をそこに埋めた。

 「そうだ。これで、深い穴を掘って、そこにリリアを落として上から眺めるのも良いな。」

 何をするにも、リリアへの復讐を糧にした。
 
  夢をみた
  「オスカー。早く生まれておいで。」
  「この子、悪阻も少なかったし、
   きっと母親思いなんだわ。
   人に優しくできる子よ。」
   
   ——早く、このままだと、
  
 フェンスの具合を確かめるためにくまなく歩き、料理を覚え、体を鍛え、少しの畑を作った。

 ここは、中々居心地が良い。
 寒くもなく暑くもない。
 
 最初はこんな場所、と思っていたが、自分好みに整備が進んでくると、思いの外、快適な空間だと思うようになっていた。

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