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しおりを挟むシャーロット王女と午後のお茶を楽しんでいると、訪問者があった。この国の王弟の息子ウィリアム、王女の従兄弟に当たる人物だ。年齢は17歳。この従兄弟殿下は、王女を気に入っているのか、何かと訪問して邪魔をする。
「午前中にも来られたのに、午後にも邪……おいでになられたのですか?今は王女の休憩時間なのに、気が休まらないではありませんか。」
「お前、今、邪魔って言いかけなかったか?不敬だぞ?」
「いえいえ。気のせいでございます。勉強にお疲れなのですね。お耳がおかしくなってしまわれているようですわ。侍医を呼びましょう。」
「参った。許してくれ。良いじゃないか。俺も休憩時間なんだよ。可愛い従姉妹殿の顔を見て癒されたいんだよ。」
「まあ確かにシャーロット様の可愛らしいお顔は癒しを与えますね。でも、シャーロット様自身が癒されません。」
メイド達も心得たもので、すかさずウィリアムの分のお茶を準備する。もはや、王女のお茶の時間が3人になるのは当たり前だと思われているようだ。
シャーロットはクスクス笑いながら、
「2人の漫才を見るのは楽しいわ」
と楽しげだ。
「シャーロット様に楽しんでいただけるなら、いくらでもやりますわ。」
「お前、俺が一応、王弟の息子って知ってる?」
「殿下こそ、私の方が年上ってご存知でしたか?お前、などと言う相手を敬う必要を感じません。」
「あー言えばこー言う。可愛くないなっ」
「私を可愛いと思ってくださる方は、世界に1人で十分ですわ。」
「えっ、お前にそんな相手いるの!?」
とうとう、クスクスから、アハハと口を開けて笑い出した王女に、
「いけません。シャーロット様。お口を閉じてください。」
「あら、失礼したわ。ねえウィリアム。オリヴィアはこれでもモテるのよ。私の大事なお友達を虐めないでね。」
「虐められてるのはオレじゃねえ?」
「まあ!どうしましょうシャーロット様!この方、殿下の偽物に違いありませんわ。殿下がこんな言葉遣いをするわけがありません。衛兵を呼びましょう!」
「参った。ごめんなさい。ほら、やっぱり、俺が虐められてるじゃないか。」
ぶつぶつと言いながら、大人しくお茶を飲んでいる。
この殿下と話すのは嫌いではない。荒んだ王宮の中で楽しく話せる、数少ない人物だ。
従兄弟とは言え、男性である以上、シャーロットに近づきすぎるのは、体面的によろしくないので、オリヴィアをクッションにしているのだろうが、この会話を楽しめることは役得だ。
今日も美味しくお茶が飲めた。
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