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しおりを挟むオリヴィアはシャーロット王女の、付き人を務めている。本来なら、この地位はもっと爵位の高い女性が務めるものだが、運良く仕事を得ることができた。
仕事内容は、一言で言えば貴婦人になりきること。主人と一緒に時間を過ごし、話し相手となり、客をもてなすのを助け、しばしば社交行事に同行する。時には主人の足りない知識を補い、書類仕事を手伝う役割も担っていた。オリヴィアの場合、給金は王宮の予算から出ているが、主人は、シャーロット王女だ。
辺境に位置する、しがない貧乏伯爵の出で、父と母は既に鬼籍に入っている。現在は兄が伯爵として領地を収めており、オリヴィアには、いつでも戻って来いと言ってくれているが、既に妻子のいる兄に頼るのは何となく罪悪感を感じる。
何しろ貧乏伯爵家なので、持参金のアテもなく、戻ったところで、嫁入りもできないだろう。
中央貴族の叔母を頼って王立学院に通ったオリヴィアは、文官になれたら、と勉学に力を入れ、希望通り、王宮勤めの推薦を受けた。とは言っても、推薦を受けるのは学生だけではなく、その人数は少なくはない。が、それでも、推薦を受けたということ自体が実績となり職を得るのに有利となる。王宮でなくても職業夫人になれるだろうと安堵していた。
そこに、叔母の夫の、なんとかのなんとかの……とにかくどうにか親戚の、忘れた頃に少しお会いする程度の、同じく伯爵位の息子、レイルが王宮文官として務めていることを知り、ダメ元で尋ねたところ、内部からの推薦もつけてくれた。
これで確実に王宮文官になれるかという時に、王女の付き人が婚姻で退職するとのことで、ちょうど良い女性を探しているという。
全体的な女性の地位はまだまだ低い。例え選ばれなくとも、この選考にいくらか残るだけでも実績なるから履歴書を出してみたら、というレイルの勧めで、これもダメ元で出してみたのだが、運良く選んでもらえたのだ。
今の主人はシャーロットだが、オリヴィアは王宮に勤める人材なので、もしも、シャーロット王女が嫁入りなどで王宮から出ることになっても、ついて行くか、他部署に配属されるか、それは王宮の人事部の辞令に従う。
王宮に勤めれば、その年数に従って、職を辞した後も恩給が出る。この待遇にオリヴィアは大変満足している。
王女は16歳、私は18歳。この年齢差が選考に有利に働いたと、後から聞いた。運が良かった。運要素が強いため、多少の陰口もあるが、この運を引き寄せる努力をした自負も十分あるため、負け犬の遠吠えと、聞き流すことにしている。
もちろん、オリヴィアの幼馴染の伯爵子息レイルのおかげも、大いにあるだろう。
このレイルも三男で、婚姻を諦めているので、王宮文官として生きることを決めた口で、オリヴィアは、この頼れる遠い親戚のレイルに淡い憧れを抱くようになっていた。
思えば子供の頃から、好感を持っていたかもしれない。
そして、領地も爵位もないが、比較的自由に恋愛のできる立場である私達は、お互いの気持ちがあればと、ある程度のお金を貯めてから結婚しようと約束をしていた。
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