婚約解消の理由はあなた

彩柚月

文字の大きさ
2 / 18

2

しおりを挟む

 シャーロット王女と午後のお茶を楽しんでいると、訪問者があった。この国の王弟の息子ウィリアム、王女の従兄弟に当たる人物だ。年齢は17歳。この従兄弟殿下は、王女を気に入っているのか、何かと訪問して邪魔をする。

 「午前中にも来られたのに、午後にも邪……おいでになられたのですか?今は王女の休憩時間なのに、気が休まらないではありませんか。」
 「お前、今、邪魔って言いかけなかったか?不敬だぞ?」
 「いえいえ。気のせいでございます。勉強にお疲れなのですね。お耳がおかしくなってしまわれているようですわ。侍医を呼びましょう。」
 「参った。許してくれ。良いじゃないか。俺も休憩時間なんだよ。可愛い従姉妹殿の顔を見て癒されたいんだよ。」

 「まあ確かにシャーロット様の可愛らしいお顔は癒しを与えますね。でも、シャーロット様自身が癒されません。」
 
 メイド達も心得たもので、すかさずウィリアムの分のお茶を準備する。もはや、王女のお茶の時間が3人になるのは当たり前だと思われているようだ。

 シャーロットはクスクス笑いながら、
 「2人の漫才を見るのは楽しいわ」
 と楽しげだ。

 「シャーロット様に楽しんでいただけるなら、いくらでもやりますわ。」

 「お前、俺が一応、王弟の息子って知ってる?」
 「殿下こそ、私の方が年上ってご存知でしたか?お前、などと言う相手を敬う必要を感じません。」
 「あー言えばこー言う。可愛くないなっ」
 「私を可愛いと思ってくださる方は、世界に1人で十分ですわ。」
 「えっ、お前にそんな相手いるの!?」

 とうとう、クスクスから、アハハと口を開けて笑い出した王女に、
 「いけません。シャーロット様。お口を閉じてください。」
 「あら、失礼したわ。ねえウィリアム。オリヴィアはこれでもモテるのよ。私の大事なお友達を虐めないでね。」

 「虐められてるのはオレじゃねえ?」
 「まあ!どうしましょうシャーロット様!この方、殿下の偽物に違いありませんわ。殿下がこんな言葉遣いをするわけがありません。衛兵を呼びましょう!」

 「参った。ごめんなさい。ほら、やっぱり、俺が虐められてるじゃないか。」

 ぶつぶつと言いながら、大人しくお茶を飲んでいる。

 この殿下と話すのは嫌いではない。荒んだ王宮の中で楽しく話せる、数少ない人物だ。

 従兄弟とは言え、男性である以上、シャーロットに近づきすぎるのは、体面的によろしくないので、オリヴィアをクッションにしているのだろうが、この会話を楽しめることは役得だ。

 今日も美味しくお茶が飲めた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

君を自由にしたくて婚約破棄したのに

佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」  幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。  でもそれは一瞬のことだった。 「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」  なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。  その顔はいつもの淡々としたものだった。  だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。  彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。 ============ 注意)ほぼコメディです。 軽い気持ちで読んでいただければと思います。 ※無断転載・複写はお断りいたします。

身代わりーダイヤモンドのように

Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。 恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。 お互い好きあっていたが破れた恋の話。 一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛
 私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。  私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。  だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。  今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。  彼は心は自由でいたい言っていた。  その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。  友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。  だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。 ※このお話はハッピーエンドではありません。 ※短いお話でサクサクと進めたいと思います。

【完結】愛くるしい彼女。

たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。 2023.3.15 HOTランキング35位/24hランキング63位 ありがとうございました!

私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?

山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。

「ばっかじゃないの」とつぶやいた

吉田ルネ
恋愛
少々貞操観念のバグったイケメン夫がやらかした

一番でなくとも

Rj
恋愛
婚約者が恋に落ちたのは親友だった。一番大切な存在になれない私。それでも私は幸せになる。 全九話。

〖完結〗私を捨てた旦那様は、もう終わりですね。

藍川みいな
恋愛
伯爵令嬢だったジョアンナは、アンソニー・ライデッカーと結婚していた。 5年が経ったある日、アンソニーはいきなり離縁すると言い出した。理由は、愛人と結婚する為。 アンソニーは辺境伯で、『戦場の悪魔』と恐れられるほど無類の強さを誇っていた。 だがそれは、ジョアンナの力のお陰だった。 ジョアンナは精霊の加護を受けており、ジョアンナが祈り続けていた為、アンソニーは負け知らずだったのだ。 精霊の加護など迷信だ! 負け知らずなのは自分の力だ! と、アンソニーはジョアンナを捨てた。 その結果は、すぐに思い知る事になる。 設定ゆるゆるの架空の世界のお話です。 全10話で完結になります。 (番外編1話追加) 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。全て読ませて頂いております。ありがとうございます。

処理中です...