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9 帰郷
しおりを挟む「本当に辞めてしまうの?」
「最後まで務められなくて、申し訳ありません、シャーロット様。」
辞表を出したことを知ったシャーロット様が惜しんでくれる。
「寂しくなるわ。私、あなたが大好きだったのよ。」
「シャーロット様を残していくことは本当に心残りではありますが、でも、私はもう……。」
——ここに居ることが辛いのです。
ここに居ると、壊れた恋が刺さりすぎる。その原因のことも、たまにでも見たくなかった。
「辞めて、どこへ行くの?」
シャーロット様が心配してくれる。
「兄がいつでも来ていいと言ってくれていますので、頼ろうと思っています。」
「そう……。たまには思い出して、手紙をちょうだいね。」
「ええ、もちろん。シャーロット様もお元気で。」
伯爵領に帰った私を、兄も兄嫁も歓迎してくれた。
お兄様は戻ってきた理由を何も聞かずに、こう言ってくれた。
「少しのんびりしたら良いさ。これからのことはゆっくり考えたら良い。」
「ありがとうお兄様。領地の隅にでも住まわせてください。すみません義姉さん。すぐに部屋を見つけて出て行きますから。」
そう言うオリヴィアに、兄嫁も
「あらだめよ。オリヴィアさんの部屋はそのままになっているから、掃除をすればすぐに使えるわ。そこに住んだら良いじゃない。」
と、言ってくれる。
「え、でも、家族の邪魔をしてしまうんじゃ。」
「良いのよ。知らない仲じゃないし、子供達も喜ぶわ。その代わり家のことを手伝ってよ。この人ったら、早く言ってくれれば、準備をしておけたのに。」
「いや、何か言いにくくて。」
「知らない女ならともかく、オリヴィアさんだもの。変なところで気を回すんだから。」
「ごめん。ありがとうな。妹と仲良く頼むよ。」
「義姉さん、お世話になります。」
「ふふ。大丈夫よ。嫌になったら言うから。」
兄夫婦の優しさと仲の良さに癒される。
それから義姉さんと部屋を掃除した。
「暇だったら、この人の仕事を手伝ってくれても良いのよ。」
と、義姉さんは言う。
「優秀だと聞いているわ。手伝ってくれるなら、その分、私達が領地に出る仕事ができるわ。」
「なるほど。それはいい考えかもしれないな。給料は……悪いけど妹割引で頼むよ。」
義姉さんが許してくれるのなら、それも良いかもしれない。
「居させてもらえる上に仕事をさせてもらえるなら、できる限りのことはさせていただきます。もちろん領民の手伝いも。」
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