婚約解消の理由はあなた

彩柚月

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13 懐かしい人の来訪

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 一通の手紙が届いた。
 届いたと言うより、裏門の隙間に差し込まれていた。
 
 宛先にオリヴィアの名前が書かれていたが、差出人の名前はない。封筒にはピンク色の小さな花が挟んであった。

 その場で開けて中を読む。

 ——長い間、手紙を出せなくてごめんなさいね。あなたからの手紙はいつも私の心を温めてくれたわ。全て燃やしてあるから安心して頂戴。あなたが側にいた頃が懐かしいわ。私達はもう、王宮から居なくなるから、2度と手紙を出してはダメよ。私からもこれが最後。信頼する者にこの手紙を預けるわ。無事に届くと良いのだけど。オリヴィア、元気でね。——


 「これは、シャーロット様?王宮から出るって……。」

 信頼する者とは?思わず裏門に走って、覗き窓から外を見つめた。裏門とは名ばかりの裏口は木材仕様で、隙間が少ない。木の枠が視界の邪魔をしてまどろっこしい。門を開けて外に出て、周りを見渡しながら少しだけ小道を歩いた。

 普通に考えたら、いつ届いたかもわからない手紙の届け人が、今も居るわけがない。でも、もしかしたら、居るかもしれないと、オリヴィアには確信めいたものを感じた。

 ガサッと音がして、目を向けると、そこには懐かしい、でも何か腹立たしい、その人物が居た。

 「ウィリアム殿下」
 
 相当疲れているようで、その顔には疲労が見える。楽な日々ではなかったことが伺える。

 「会えて良かった。ギリギリまで待つつもりだったけど。出てきてくれるかは賭けだったよ。」
 「お元気そう……では、ありませんね。とりあえず部屋にどうぞ。」
 「いや、それはできないことは、わかっているだろう?オリヴィアは元気そうで良かったよ。」
 「おかげさまで。ここには憎たらしい殿下がおりませんので。」
 「ははっ!相変わらず口が減らないな。」

 相変わらずの殿下の口調に安堵して、何か嬉しさも込み上げてきて、少しだけ笑顔を見せてしまう。
 「懐かしいな。そのペンダント。」
 「あ……。」
 付けていたことを忘れていた。
 「嬉しいよ。少しでもお前の心に残っているようで。」

 返す言葉がなくて殿下を見つめる。
 「少しだけ、会って話がしたかったんだ。このままでは悔いが残るから。」
 
 何を言えば良いのかわからず、ウィリアムを見つめ続けるだけになってしまったオリヴィア。

 「俺達は、王宮を出た。このまま隣国へ落ち延びる予定だ。だが、多分もう……」
 「もう、無理、なのですか?」
 「そうだな。伯父は俺たちにとっては良い人だったけど、他の人達にとってはそうではなかったみたいだ。皆、俺達を殺したくて仕方ないらしい。」
 「シャーロット様は……」
 「近頃、具合が良くなくてな。野営地で休んでいるよ。」

 「そうですか……。」

 「ああ、そういえば、レイルは反乱勢力の良いポジションに居るらしいぞ。あの男、なかなか優秀だったんだな。」
 「……。」
 「もしかして、知っていたか?」
 「……いいえ。もう私とは関係のない人です。」
 
 それから、ウィリアム殿下は、真っ直ぐにオリヴィアを見つめてこう言った。

 「言えよ。」

 「え?」

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