13 / 18
13 懐かしい人の来訪
しおりを挟む一通の手紙が届いた。
届いたと言うより、裏門の隙間に差し込まれていた。
宛先にオリヴィアの名前が書かれていたが、差出人の名前はない。封筒にはピンク色の小さな花が挟んであった。
その場で開けて中を読む。
——長い間、手紙を出せなくてごめんなさいね。あなたからの手紙はいつも私の心を温めてくれたわ。全て燃やしてあるから安心して頂戴。あなたが側にいた頃が懐かしいわ。私達はもう、王宮から居なくなるから、2度と手紙を出してはダメよ。私からもこれが最後。信頼する者にこの手紙を預けるわ。無事に届くと良いのだけど。オリヴィア、元気でね。——
「これは、シャーロット様?王宮から出るって……。」
信頼する者とは?思わず裏門に走って、覗き窓から外を見つめた。裏門とは名ばかりの裏口は木材仕様で、隙間が少ない。木の枠が視界の邪魔をしてまどろっこしい。門を開けて外に出て、周りを見渡しながら少しだけ小道を歩いた。
普通に考えたら、いつ届いたかもわからない手紙の届け人が、今も居るわけがない。でも、もしかしたら、居るかもしれないと、オリヴィアには確信めいたものを感じた。
ガサッと音がして、目を向けると、そこには懐かしい、でも何か腹立たしい、その人物が居た。
「ウィリアム殿下」
相当疲れているようで、その顔には疲労が見える。楽な日々ではなかったことが伺える。
「会えて良かった。ギリギリまで待つつもりだったけど。出てきてくれるかは賭けだったよ。」
「お元気そう……では、ありませんね。とりあえず部屋にどうぞ。」
「いや、それはできないことは、わかっているだろう?オリヴィアは元気そうで良かったよ。」
「おかげさまで。ここには憎たらしい殿下がおりませんので。」
「ははっ!相変わらず口が減らないな。」
相変わらずの殿下の口調に安堵して、何か嬉しさも込み上げてきて、少しだけ笑顔を見せてしまう。
「懐かしいな。そのペンダント。」
「あ……。」
付けていたことを忘れていた。
「嬉しいよ。少しでもお前の心に残っているようで。」
返す言葉がなくて殿下を見つめる。
「少しだけ、会って話がしたかったんだ。このままでは悔いが残るから。」
何を言えば良いのかわからず、ウィリアムを見つめ続けるだけになってしまったオリヴィア。
「俺達は、王宮を出た。このまま隣国へ落ち延びる予定だ。だが、多分もう……」
「もう、無理、なのですか?」
「そうだな。伯父は俺たちにとっては良い人だったけど、他の人達にとってはそうではなかったみたいだ。皆、俺達を殺したくて仕方ないらしい。」
「シャーロット様は……」
「近頃、具合が良くなくてな。野営地で休んでいるよ。」
「そうですか……。」
「ああ、そういえば、レイルは反乱勢力の良いポジションに居るらしいぞ。あの男、なかなか優秀だったんだな。」
「……。」
「もしかして、知っていたか?」
「……いいえ。もう私とは関係のない人です。」
それから、ウィリアム殿下は、真っ直ぐにオリヴィアを見つめてこう言った。
「言えよ。」
「え?」
1,165
あなたにおすすめの小説
君を自由にしたくて婚約破棄したのに
佐崎咲
恋愛
「婚約を解消しよう」
幼い頃に決められた婚約者であるルーシー=ファロウにそう告げると、何故か彼女はショックを受けたように身体をこわばらせ、顔面が蒼白になった。
でもそれは一瞬のことだった。
「わかりました。では両親には私の方から伝えておきます」
なんでもないようにすぐにそう言って彼女はくるりと背を向けた。
その顔はいつもの淡々としたものだった。
だけどその一瞬見せたその顔が頭から離れなかった。
彼女は自由になりたがっている。そう思ったから苦汁の決断をしたのに。
============
注意)ほぼコメディです。
軽い気持ちで読んでいただければと思います。
※無断転載・複写はお断りいたします。
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
『悪女と呼ばれた令嬢は、親友の幸せのために婚約者を捨てた』
由香
恋愛
婚約者である王太子を、親友のために手放した令嬢リュシエンヌ。
彼女はすべての非難を一身に受け、「悪女」と呼ばれる道を選ぶ。
真実を語らぬまま、親友である騎士カイルとも距離を置き、
ただ一人、守るべきものを守り抜いた。
それは、愛する人の未来のための選択。
誤解と孤独の果てで、彼女が手にした本当の結末とは――。
悪女と呼ばれた令嬢が、自ら選び取る静かな幸福の物語。
私ってわがまま傲慢令嬢なんですか?
山科ひさき
恋愛
政略的に結ばれた婚約とはいえ、婚約者のアランとはそれなりにうまくやれていると思っていた。けれどある日、メアリはアランが自分のことを「わがままで傲慢」だと友人に話している場面に居合わせてしまう。話を聞いていると、なぜかアランはこの婚約がメアリのわがままで結ばれたものだと誤解しているようで……。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
身代わりーダイヤモンドのように
Rj
恋愛
恋人のライアンには想い人がいる。その想い人に似ているから私を恋人にした。身代わりは本物にはなれない。
恋人のミッシェルが身代わりではいられないと自分のもとを去っていった。彼女の心に好きという言葉がとどかない。
お互い好きあっていたが破れた恋の話。
一話完結でしたが二話を加え全三話になりました。(6/24変更)
【完結】愛くるしい彼女。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢のキャロラインは、所謂悪役令嬢のような容姿と性格で、人から敬遠されてばかり。唯一心を許していた幼馴染のロビンとの婚約話が持ち上がり、大喜びしたのも束の間「この話は無かったことに。」とバッサリ断られてしまう。失意の中、第二王子にアプローチを受けるが、何故かいつもロビンが現れて•••。
2023.3.15
HOTランキング35位/24hランキング63位
ありがとうございました!
二年間の花嫁
柴田はつみ
恋愛
名門公爵家との政略結婚――それは、彼にとっても、私にとっても期間限定の約束だった。
公爵アランにはすでに将来を誓い合った女性がいる。私はただ、その日までの“仮の妻”でしかない。
二年後、契約が終われば彼の元を去らなければならないと分かっていた。
それでも構わなかった。
たとえ短い時間でも、ずっと想い続けてきた彼のそばにいられるなら――。
けれど、私の知らないところで、アランは密かに策略を巡らせていた。
この結婚は、ただの義務でも慈悲でもない。
彼にとっても、私を手放すつもりなど初めからなかったのだ。
やがて二人の距離は少しずつ近づき、契約という鎖が、甘く熱い絆へと変わっていく。
期限が迫る中、真実の愛がすべてを覆す。
――これは、嘘から始まった恋が、永遠へと変わる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる