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14 慟哭
しおりを挟む「俺の好きな人はさ。俺が傷つけてしまったのに、謝らせてもくれないんだ。」
「……。」
「これが最後だ。言えよ。俺を責めたら良い。お前のせいで人生狂ったって怒れよ。そうしないと、お前も後味悪いだろ?」
この人は何を言っているんだろう。後味なんて。これで最後って、もう死ぬみたいじゃないの。傷つけた自覚があったの?ああ、あの時もそんなことを言っていたような気がする。
頭の中がパニックなるとはこういうことだろう。恨みもつらみも、もしも会えたら言いたいことも沢山あったのに、何も出てこない。
「……死なないで、ください。」
「え?」
訳もわからず涙がボロボロ零れ落ちる。止めることは無理。感情が溢れてどうしようもない。言葉の代わりに出てくるように溢れる涙を、拭くこともせずにオリヴィアは言う。
「あなたの言うとおり、あなたのせいで私の人生は狂ったわ。そんな風に私の人生を壊しておいて、死んで終わりなんて許さない。死なないで。必ず生きて帰ってきて。じゃないと許しません。」
「はは……最後まで難しいことを言う。」
「死なないでと言っているの!」
オリヴィアは、首の珊瑚のペンダントを外して差し出す。
「私が、差し上げられるのはこれだけです。唯一、他人から頂いた贈り物なんです。大切なものだから、きっと返してくださいね。そしてもう一度、心から謝罪してください。」
「そうしたら、許せるかもしれません。」
ウィリアムは、黙ってペンダントを受け取った。
「……善処するよ。」
ペンダントを受け渡す時に触れた指先、それだけが、私達の唯一の触れ合いだった。
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