「運命の番」だと胸を張って言えるまで

黎明まりあ

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第2章 王宮生活<準備編>

24、相反する理解と納得

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「結婚……した?
 そんな……勝手に……どうして」

 きちんと音声にする気力もなくなり、つぶやくように言った途端とたん脳裏のうりにシルヴィス様の声がよみがえった。

「もしかして……領地に問題が?」

 小さな声に出しただけなのに、姉様はすぐ反応してくれた。

「そう、そうなのよ、レン、ちょうどいい機会というのは建前で……本当は……私たちの領地を救うためなの」

 姉様のよどみない答えに、ねてから聞いてみたかったことを思い出した。

「姉様は『加護かご持ち』って言葉知ってる?」
「ええ、知ってるわ」

 当たり前のように答える姉様に、僕はやり場のない気持ちをぶつける。

「シルヴィス様から、僕が加護かご持ちだと教えられたんだ。
 もしかして姉様は、僕が加護かご持ちだって、前から知ってたの?
 もし知っていたなら、あらかじめ、教えて欲しかったな」

 姉様にとっては、理不尽りふじんな八つ当たりになるはずなのに、いつものように僕の気持ちに寄りい、受け止めてくれる。

「ライと共に、あなたたち2人が、国教会の洗礼を受けた時に、普段冷静な神官様たちが大騒ぎしたことは、おぼろげながら覚えているわ。
 その時に母様から、レンは特別な子だった……とだけ言われたの。
 その時点で、我が領の跡継ぎがあなたに決まった。
 ただ元々、私は他へとつぐと決まっていたし、あなたたちは双子とはいえ、レンの方が兄だから順番的にあなたが継ぐんだなぁ……としか思わなかったわ。

 大きくなるにつれて知ったことは、大領主様と神官様がおりに触れて、レンを気にかけていたぐらいかしら。
 あとは……オメガ性ってこともあったけど、2人にというか、特にあなたに護衛をつけることと、レンだけは領地から離れさせないようにという命令が、大領主様と神官様からされていたことを母様から聞いたけど……跡取りだから大切にせよ……という意味合いでしか私はとらえてなかったわ。

 だって、レンが誰かの怪我をなおすとか、特別な力を持つとかではなかったし、性格の違いとはいえ、レンよりライのほうが何かと話題性があり、常に周囲がはなやかだったから……だけどね」
「だけどって何?」

 初めて聞く話ばかりで、いつの間にか、いきどおる気持ちが僕の中から消えた。
 それどころか息を飲んで、姉様の話に耳をかたむける。

「レンが特別な子だ……と母様たちが言った本当の意味が分かったのは、あなたが眠っていたこの3年間だった。
 この3年……あなたが故郷の領地から去って、まずは気候が激変した。

 変わったというか……残っている領地のお年寄りが言うには、元に戻っただけだと悲しい声で言われたけどね。
 言われてみれば、確かにあの地は極寒ごっかんの北の地で……冬は長く、分厚ぶあつい雪で常におおわれている。
 日照にっしょう時間も短く、土地は肥沃ひよくとはほど遠いわ。
 むしろ本来は、せている土地だったから、育つ作物は限られ、量もそれほどれない。

 めぐまれていた夢みたいな状況からの変化に、人ってすぐに対応が出来なくて……早々そうそうに大勢の領民は逃げ出し、あの地方がすたれるのは、あっという間だった。
 シルヴィス様の個人的援助がなければ……1年も持たなかったわ」
「だったら、尚更なおさら、僕はすぐ領地に帰らないと!!」

 姉様の言葉にかぶせるように僕は提案した。

「確かに、加護かごの者がいる土地は、言い伝え通り栄えるの。
 レンが去った私たちの領地はおとろえたけど、その代わりレンがいたここ王都は、この3年治安が安定し、さらに活気が出てきたわ。
 加護かごのことを知らない人々は、新しい王様の手腕しゅわんだと言っているけれど……レンという存在が大きい、と王様も認められているとシルヴィス様から言われたの」
「そんな……王都なんか僕はどうでもいいんだよ。
 僕たちの領地のほうが、大事に決まっている!」

 僕はすかさず、必死に姉様にうったえた。
 まるで駄々だだねる小さな子をなだめるように、姉様は僕の両頬を両手で包んでくれ、しっかりと目線を合わせてこう言った。

「北の小さな1つの領地が栄えるよりも、王都の安定と繁栄はんえいのほうが大切だから理解してほしいと、王家の意向とはいえ、ほぼ王命に近い形でレンが王宮に住むことが、すでに私たちには伝えられているの。
 同時に、レン不在の損失そんしつ補填ほてんするための援助を、惜しまないこともね」

 一つため息をついてから、さらに姉様は、むしろこちらの方が大事とばかりに僕にげた。

「それに、レン、あなたはシルヴィス様の運命だったわ。
 色んな代償だいしょうは払ったかもしれないけど、逆らわずつがったことで、あなた自身も、それにこの王国での防衛のかなめである、シルヴィス様の命を救った。
 バース性にとって、運命と出逢いつがうことは、お互いに心身ともに落ち着くし、幸せなことだと思うの」
「でも、姉様、いくら国のためにとはいえ、結果的に僕の大事なライとテオが犠牲ぎせいになった……僕は納得ができないよ」

 上手く説明出来ない、なんとも言えない悔しさを……僕は上手く消化できないでいた。
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