王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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激動! 体育祭!

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まぁ普通に山田くんは大敗を喫したわけだが、そろそろ借り物競走の時間が近づいてきていたので席を立つ。体育祭だけ妙な一体感があり楽しい。

「じゃ~ちょっと得点板してくる~」
「青ブロックに五点くらい入れてきてください」
「めちゃくちゃ怒られるからやらんよ」

しかも五点て。運動会における初手の五点ってあんま関係なくない? そういう点差すぐ大逆転されるイメージあんだけど。

「あ、兄貴。チス」
「東郷くんお疲れさま」

行きがけ、自陣営に戻る東郷くん(※俊足は履いていない)とすれ違った。本部テントは本校舎方面、青ブロックとはそれぞれ遠いところにあるので地味に移動がかったるい。

「来たか」
「あれっ、会長さま~……え? めっちゃソファ座ってる何で?」
「自由席は生徒の距離が近ンだよ」
「Aクラスもそんな感じなんだ~」

もう一人の得点板らしい武藤さまが、優雅に生徒会テントの日陰でソファに座っていた。したにはラグ代わりにかござが敷いてある。いいよねござ。

ソファの前にローテーブルを置き、そこに魔法瓶と競技順が書かれたプリントが放置してある。その他クッションと扇風機完備。くつろぎすぎだろ。

「アイツら、髪一本落としただけで狂喜乱舞するからな。俺様が好きなら俺様に迷惑がかからねぇはしゃぎ方をしろって話だ」

重々承知である。武藤さまの髪は確かに回収したい衝動に駆られるが、同居人としては様子のおかしいサマは見せられない。
俺は無言で、得点を記録する紙を挟んだなんかあの……立ったまま書くときに下敷きになる便利なやつを手に取った。

「思い出したこれ用箋挟ようせんばさみだ」
「そのなんか便利な奴、名前あったんか」

わかる。

「次の競技が~、スプラッシュ玉入れだって」
「ス……なんて?」
「水風船で球入れするヤツだよ~。めちゃくちゃ水飛沫が飛ぶ、ほら」
「だからビニールシート敷いてんのか。競技を“オモロ”に振りすぎだろ」

その辺に転がっている水風船を拾ったりカゴに入ってある水風船を取ったりで自分のエリアに投げていく競技である。バシャンバシャンと大音量が鳴っており、男子生徒のダハハーッみたいな笑い声も同時に上がる。

たのしそ~~

「あれ得点どうなってんだ? 全部破れてるのに」
「放送委員会がビデオ判定して都度得点加算してる~」
「放送委員の労力」

ほんとに。これをやりたいがために大量の人間が先日から駆り出されており、俺も得点板の仕事がなければ参加していたところだった。

武藤様は下々の争いを眺めながら魔法瓶を開け、なんかおしゃれそうな何かを付属のコップに注いだ。なんか黒いぶつぶつが浮いてる水色の液体だった。

「バジルシードドリンクな」
「ばじるしーどどりんく」
「トロピカルフルーツ味」
「バジルシードドリンク・トロピカルフルーツ味!?」
「別にバジル味とかではない」

名前に情報量が多すぎる。飲料に関してはぶどうジュースとかの段階にいるので、フレーバーが二個あるとお手上げなのだ。あまりにも現代に適応できていないかもしれない。

黒いぶつぶつ(多分バジルの種)を飲み干している武藤様にちょっと引く。最近何となくわかったけど、武藤様って時々ミーハーだよな。百円均一とかに売ってるよくわからん飲み物とか食べ物とか買ってそう。

「危ない!」
「ぅえ」

突然声がした。声の方向に振り向くと、何かが当たってバシャン!! と音がする。音がしたどころか全身に冷たい液体がかかって、一拍遅れて水風船の流れ弾が当たったのに気付く。

「ぶぇ……ぺぺっ。なんかべたべたする……」
「すみませーん! 水の代わりにスポーツ飲料入れておいたんですが……」
「ですが……じゃないよ。別にぶつかって濡れた不快感はペカリ等によってかき消されないよ。そいつがかき消してくれるのは熱中症の危険だけだよ」
「ツッコミくどいですね」
「散々な言いよう」

これが芸風なんだから許してくれよ。
どうやらこの水風船にはペカリスワット(超大手スポーツ飲料。塩分補給も同時にできる優れもの)が入っていたらしい。水入れろ。

ここまで飛んだのだから、武藤様にも被害がいってるかもしれない。そうして後ろを向いた俺の目に、傘を構えた黒服のおっさんが写った。

「ウワーーーーーッッビックリした誰ェ!?」
「武藤家の執事だが? こういう流れ弾のある競技で俺様に被害が及びそうになったときだけ現れる」
「歩合制? 時給?」
「歩合制」
「大変だねおっさん、こんなことのためだけに」

傘を閉じたおっさんはこくりと頷いた。そのままどこかへ姿を消す。こういう変な人たちは一定数いるもんなんだなぁ。
しかし、大変なことになってしまった。体操服がベッタベタである。何でこんなにペカリ入れた?

「下着も濡れてる~」

しかし替えがないので仕方がない。髪を絞りつつあげ、体操服をぺろりとめくってぎゅうっと力を入れる。

ふとソファの方から視線を感じる。

「なに? えっち……」

体育の着替えとか全然気にならないけど、武藤様の目に晒さられてると思うと少し……恥ずかしい。
俺の言葉に武藤様が顔を顰める。

「っな、……見たくて見てるんじゃねぇよ、調子乗んな」
「わかってま~す。別にいつもフツーに着替えてるし~……」
「それはそれでテメェどうかと思う」

なんで??
武藤様は少し俺の後ろに視線をやった後、思っ路に自分のジャージを脱ぎ始めた。

「とりあえずこれ着てろ、ノロマ。どーせ着替えねぇんだろ」
「これ下とかは貸してもらえん感じ?」
「調子乗んな」

ダメか。自分のジャージがあるので着替えに行けるなら取りに行くのだが、それをいったらこのいい匂いのジャージが没収されそうなので黙っておいた。

得点版の仕事をどうしようかと用箋鋏を上下させていたら奪われた。ありがたく頭を下げ、どこか着替えられるところに行こうとグラウンドから出た。本校舎、鍵かかってるんだよな……旧校舎は今閉鎖してるし……
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