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密着! 夏休み旅行!
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「なるほど、アイツを好きになって、ほんで逃げてきたとですね」
「ヴン……」
「ははぁ~」
号泣し始めた俺を獅童くんは冷静に宥め、十三階の自分の部屋に連れて帰ってきていた。同室の市ヶ谷くんはもう寝ているからと懐かしい間取りの寝室でベッドに座らせてもらう。
「ごめんなんか、ほんと、変なとこ見せて」
「や、それはいっすよ。大体センパイは変なことしかしとらんので」
「それは風評被害……」
「ほれ、ポテチっす。食いましょ」
購買でヤケクソのように売られているビッグクソデカポテトチップスを棚の奥から取ってきて、獅童くんが渡してくれる。流石にベッドの上で食べるのはと首を振ればふん、と鼻で笑われた。
「解っとらんすねセンパイは! しんどい時こそ思っきり後悔することするんすよ」
「うそだぁ」
「嘘やないっす。センパイと違って俺はサンプル多いんで」
「なんて物言いをするんだ」
友達をサンプルとか呼ぶな。だが獅童くんのあっけらかんとした態度は、なんだかいつも通りな感じがして面白くなってきた。
寝室とはいえ一部屋使っているので他にわちゃわちゃと押し入れや棚、机もありワンルームの家みたいになっている。
獅童くんの部屋は整頓されておらず、その辺に空き缶やらお菓子のゴミ、カップ麺が捨て置かれていた。別に自炊しないわけではないらしく、こういうのはたまのサボりが良いのだと豪語している。
「これ何味? ……ん? 何味…………??」
「あそれ《自主規制》味のポテチなんすよ。もう廃盤なっとる」
「ワーーッッッなんてものを食わせるんだ!」
《自主規制》味のポテチは特有のエグ味と苦味と青臭さがあり食べられたものではない。クソデカビッグな《自主規制》である。まだ大量の枚数が残っており、えっこれを今から? 食うの?
困惑していると、かつらとメガネを外した紅顔の美少年が心の底から美しく可憐に笑った。
「困っとったんでセンパイ来てくれて助かりました!」
「お前八割これ食わせるために呼んだな?」
「センパイが泣くのなんて日常茶飯事なんだからこれが無けりゃ帰しとりましたよ普通に」
「ッッダァ騙された!!」
優しさだと思ったのに! 良いけど!! そういう奴だよ君は、最近水瀬に似てきたな。
「なんか食べたことを後悔する味だな、食べたことない味なのになんでこんなでかい袋で買ったの? 俺の膝上くらいまであるよ? 袋のデカさがさぁ」
「玉袋っすか?」
「その冗談が笑える時と笑えない時を見極めろよガキ」
「口が悪くなっとるわ」
変なチップス、珍チップス。
ああっ脳内でTwitterし始めてしまった俺はもう終わりだ。
無言でポリポリと食べているが、隣の獅童くんはニコニコとしつつ一つも口をつけていない。ある程度減っていたので本当に困ってはいたのだろう。残飯処理に先輩を使うその精神はいかがなものか。
「まぁ俺あんま味覚発達してないからいいけど」
「センパイ一時期餃子定食しか食っとらんかったんですもんね」
「なつかしいな」
今思えばあれきっかけで武藤様に食事を作ってもらったのだった。その時の優しさを思えば胸の奥に棘が刺さったような心地になる。
やはり俺は、あの人のそばにいてはいけない。
「懐かしなぁ。あの頃センパイが芋くれて、打算なしに優しゅうしてくれる人、俺初めて出会ったとですよ」
「えぇ、君なら誰にでも優しくされそうなもんだけど」
「そらこの顔持っとりますからね。近づきたい輩なんていくらでもおるやろ」
首を傾げた拍子に銀の髪がさらりと流れる。夢の中に舞う粉雪みたいに綺麗な髪だ。神秘的な、上質なワインみたいな猫目に透き通るような肌。
確かに美しい少年だと思う。ここまで造形の整った人間は存在しない。人間と作り物の臨界点みたいな。
「確かに、獅童くんは綺麗だ。でもそれ以上に、君が他人に優しくするから優しくされてるんだよ」
「……した覚えなかですよ」
「あはは! そうかなぁ。俺は君が園芸委員会に入ってくれて嬉しかったけど」
旧校舎もずいぶん賑やかになったものだ。
獅童くんと話しているとなんだか落ち着く。彼のテンションがいつも変わらないからだろう。あっけらかんとしていて、言いたいことを言ってやりたいことをやる。
素直な後輩は可愛らしかった。
「……ほんなら、俺にすりゃええのに」
「ん? どうしたの」
「なーんでもないっす! さっさと振られりゃええのにって思っとるだけー!」
「言いにくいことガンガン言うな君は。普通今恋に気づいて傷心してる人に言う?」
そうか、振られるという手もあるのか。
でも武藤様に手を煩わせたくない。それに、今振られたら自分が何をするかがわからない。恋は人を狂わせる。俺はそういう人をたくさん見てきた。
「まぁもうすぐ旅行やし、もうちょい泊まってってたらよかやないですか? センパイ旅行行くんやろ?」
「あっ、そうか」
そういえば来週にはもう旅行だった。なんかドタバタして忘れてたな。
寝転がって俺の膝を枕にする獅童くん。この子やっぱ距離近いよな。環境が特殊だったんだろうけど。
「俺はあんたの心を守んのが優先なんでね。しばく離れたったらええんやない?」
かっこいいな、我が後輩ながら。
「ヴン……」
「ははぁ~」
号泣し始めた俺を獅童くんは冷静に宥め、十三階の自分の部屋に連れて帰ってきていた。同室の市ヶ谷くんはもう寝ているからと懐かしい間取りの寝室でベッドに座らせてもらう。
「ごめんなんか、ほんと、変なとこ見せて」
「や、それはいっすよ。大体センパイは変なことしかしとらんので」
「それは風評被害……」
「ほれ、ポテチっす。食いましょ」
購買でヤケクソのように売られているビッグクソデカポテトチップスを棚の奥から取ってきて、獅童くんが渡してくれる。流石にベッドの上で食べるのはと首を振ればふん、と鼻で笑われた。
「解っとらんすねセンパイは! しんどい時こそ思っきり後悔することするんすよ」
「うそだぁ」
「嘘やないっす。センパイと違って俺はサンプル多いんで」
「なんて物言いをするんだ」
友達をサンプルとか呼ぶな。だが獅童くんのあっけらかんとした態度は、なんだかいつも通りな感じがして面白くなってきた。
寝室とはいえ一部屋使っているので他にわちゃわちゃと押し入れや棚、机もありワンルームの家みたいになっている。
獅童くんの部屋は整頓されておらず、その辺に空き缶やらお菓子のゴミ、カップ麺が捨て置かれていた。別に自炊しないわけではないらしく、こういうのはたまのサボりが良いのだと豪語している。
「これ何味? ……ん? 何味…………??」
「あそれ《自主規制》味のポテチなんすよ。もう廃盤なっとる」
「ワーーッッッなんてものを食わせるんだ!」
《自主規制》味のポテチは特有のエグ味と苦味と青臭さがあり食べられたものではない。クソデカビッグな《自主規制》である。まだ大量の枚数が残っており、えっこれを今から? 食うの?
困惑していると、かつらとメガネを外した紅顔の美少年が心の底から美しく可憐に笑った。
「困っとったんでセンパイ来てくれて助かりました!」
「お前八割これ食わせるために呼んだな?」
「センパイが泣くのなんて日常茶飯事なんだからこれが無けりゃ帰しとりましたよ普通に」
「ッッダァ騙された!!」
優しさだと思ったのに! 良いけど!! そういう奴だよ君は、最近水瀬に似てきたな。
「なんか食べたことを後悔する味だな、食べたことない味なのになんでこんなでかい袋で買ったの? 俺の膝上くらいまであるよ? 袋のデカさがさぁ」
「玉袋っすか?」
「その冗談が笑える時と笑えない時を見極めろよガキ」
「口が悪くなっとるわ」
変なチップス、珍チップス。
ああっ脳内でTwitterし始めてしまった俺はもう終わりだ。
無言でポリポリと食べているが、隣の獅童くんはニコニコとしつつ一つも口をつけていない。ある程度減っていたので本当に困ってはいたのだろう。残飯処理に先輩を使うその精神はいかがなものか。
「まぁ俺あんま味覚発達してないからいいけど」
「センパイ一時期餃子定食しか食っとらんかったんですもんね」
「なつかしいな」
今思えばあれきっかけで武藤様に食事を作ってもらったのだった。その時の優しさを思えば胸の奥に棘が刺さったような心地になる。
やはり俺は、あの人のそばにいてはいけない。
「懐かしなぁ。あの頃センパイが芋くれて、打算なしに優しゅうしてくれる人、俺初めて出会ったとですよ」
「えぇ、君なら誰にでも優しくされそうなもんだけど」
「そらこの顔持っとりますからね。近づきたい輩なんていくらでもおるやろ」
首を傾げた拍子に銀の髪がさらりと流れる。夢の中に舞う粉雪みたいに綺麗な髪だ。神秘的な、上質なワインみたいな猫目に透き通るような肌。
確かに美しい少年だと思う。ここまで造形の整った人間は存在しない。人間と作り物の臨界点みたいな。
「確かに、獅童くんは綺麗だ。でもそれ以上に、君が他人に優しくするから優しくされてるんだよ」
「……した覚えなかですよ」
「あはは! そうかなぁ。俺は君が園芸委員会に入ってくれて嬉しかったけど」
旧校舎もずいぶん賑やかになったものだ。
獅童くんと話しているとなんだか落ち着く。彼のテンションがいつも変わらないからだろう。あっけらかんとしていて、言いたいことを言ってやりたいことをやる。
素直な後輩は可愛らしかった。
「……ほんなら、俺にすりゃええのに」
「ん? どうしたの」
「なーんでもないっす! さっさと振られりゃええのにって思っとるだけー!」
「言いにくいことガンガン言うな君は。普通今恋に気づいて傷心してる人に言う?」
そうか、振られるという手もあるのか。
でも武藤様に手を煩わせたくない。それに、今振られたら自分が何をするかがわからない。恋は人を狂わせる。俺はそういう人をたくさん見てきた。
「まぁもうすぐ旅行やし、もうちょい泊まってってたらよかやないですか? センパイ旅行行くんやろ?」
「あっ、そうか」
そういえば来週にはもう旅行だった。なんかドタバタして忘れてたな。
寝転がって俺の膝を枕にする獅童くん。この子やっぱ距離近いよな。環境が特殊だったんだろうけど。
「俺はあんたの心を守んのが優先なんでね。しばく離れたったらええんやない?」
かっこいいな、我が後輩ながら。
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