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監禁! 最後の文化祭
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悪戯事件があり、数日後。
今日も今日とてぼっち登校だと起き出し、寝ぼけ眼を擦る旧校舎の生徒たちに挨拶し、朝の作業をしていると。
「田中さまーーっっ!!」
「土偶ッ」
後ろからドン!! と衝撃が襲ってきて思わず変な声が出た。一緒に作業していた獅童くんが、唐突にダメージを負った俺に目を白黒させている。
コラッ園芸用スコップでも凶器になりうるんだぞやめなさい!
「田中さま田中さま田中さま!! 凄いのどうやったのーっ!?!?」
「あいでででで雑なんだよ誰も彼もが~~」
「こらうさぎ!! 離れんかい!!」
ガタガタと俺を揺らすうさぎくんを見咎めて、獅童くんがさっと間に入る。うさぎくんから庇うように頭を抱きすくめられ、その拍子にふわりと柑橘のいい匂いが弾けた。この子こんな匂いさせてたっけ。
とりあえず落ち着くまで待とう。俺はぎゅむぎゅむと抱きしめてくる獅童くんに力を抜いた。なぜって、強張らせているとその分だけ体に負荷がかかっているからである。なんて力だ。
「へっ、あっ、す、んませんセンパイ!」
「本当にね」
意識が落ちかけていた。ぐってりとする俺を離すことなく、うさぎくんにどうしたのかと問いかける。なんてやつだこいつは。
「それがね田中さまっ、なくなったの!」
「なにが?」
「いたずら!! 凄いの凄いの、どうやったの!?!?」
「そういやされとったとか言っとったな。センパイがやけに自信満々やったから覚えとるわ。珍しなぁおもて」
どうやらイタズラが解決したらしい。俺の読み通りである。獅童くんがしれっと不敬発言していたが悪意はないのでスルーし、キラキラと目を輝かせるうさぎくんにドヤ顔でウインクした。
ちなみにウインクは一年生の時にできるようになったものである。チャラ男がウインクできなかったらなんかやだろ!
「ふっふーん、読み通りだね~」
「あの、でも、犯人は見つかってなくて、申し訳ないの。せっかく解決してくれたのに……田中さまは犯人分かってるの?」
「あっはは! そりゃ~君らには見つかんないだろ~ね~」
うさぎくんが困惑しているのを見て、俺はこういう時に備えて──具体的に言うとドヤ顔で推理を披露する時に備えて──懐に忍ばせておいたあるものを取り出す。
ちゃぷん、と霧吹きの中のそれがゆれた。
「? それは?」
「酢だよ。これを軽く問題の場所に振りかけておいたんだ~」
「酢って、……お酢なの!?」
そう、イタズラがなくなった原因──それはこの手元に持っているお酢の霧吹きなのだ。
指導くんに支えてもらいつつ立ち上がり、俺は旧校舎の一室、俺の管理人室に歩みを進めた。戸惑いながらもうさぎくんもついてくる。
少し時間があるので、種明かしでもしようか。
「そもそも、今回の事件に不審な点がいくつかあったんだ~。ひとつ目は、嫌がらせのためにしては他のメニューに手がつけられてなかったとこ」
そもそも俺が悪戯を認識したのは数日前の鶏がらスープひっくり返し事件だが、それにしたって不思議なものである。鶏がらスープは確かに手間がかかっているが、手っ取り早く嫌な思いをさせたいのなら他の、今日出すはずのメニューを台無しにした方がいい。
「ちょっと考えれば、鶏がらスープにはまだ冷蔵庫で加える手間が要るってわかるんだよね~。少なくともその日出すものではない……よほど料理経験がないのかなぁってその時は思ったんだ」
次に不審だったのはランドリーで散らばっていたものの状態だ。
盗まれているのはもっぱら洗濯前のくたびれた靴下や下着。高めのシャツやブレザーなどではなく、代替の効くものだ。
ひっくり返されたその中でも数人は下着も靴下も盗まれていなかった。これが三つ目の不審点。
荒らされた植物に関して言っても、人の来ない、他の比べれば手間もかからない生垣ではなくハーブ園を荒らせばよかった。それはしないわけだ。何故か。
「被害にあってない個室も見せてもらったでしょ~? 彼らには皆、ある共通点があった。きみ含めてね~」
「? ボクたちの共通点……?」
被害に遭っていないのはイブキ、俺、うさぎくん、それとうさぎくんの取り巻きが数人。
「イブキは喫茶店でバイトしてるから、いつもほんのりコーヒーの匂いがする。おれはキッチンじゃないけど~、ハーブの匂い……だよねぇ? 獅童くん」
「あ、はい。ええ匂いしてはりますよ」
「ありがと~。それでうさぎくんと取り巻きくんたちは皆美意識が高くて、マニキュアやヘアカラーしてるでしょ~?」
まぁ元々仮説でしかなかったのだが、まさかピンポイントで当たるとは。
今まで上げたものの中にはある共通点がある。図書室の奥、管理人室をキィ、と開けると……
「っきゃう!! ひゅぅーんひゅうーん!」
「…………犬ゥ!?!?」
「こ、子犬や!?!?」
ケージの中でぢゃかぢゃかと暴れる子犬の姿が。ご飯もあげたし水も変えたしさっき散歩に行っただろもう。
「……流石に狭いから仮住まいだけどねぇ。理事長が張りきっちゃって」
「そういうことじゃないのです!! なんで犬!?!?」
「絵、悪戯の犯人(?)犬やったとですか」
いぬやったとです。
「言ったでしょ? コーヒー、ハーブ、揮発剤。全部犬が嫌う香りなんだよねぇ。手を付けられてなかった他のメニューはスパイスがふんだんに使われてるし」
なので犬の最も嫌うお酢の匂いを色んな場所に振り撒き、カメラを使って所在を特定。野良の子犬みたいだったので保護した、というわけだ。
子犬とはいえ中型犬くらいの大きさがあるが、品種的には大型犬である。まだまだ成長するだろう。
今日も今日とてぼっち登校だと起き出し、寝ぼけ眼を擦る旧校舎の生徒たちに挨拶し、朝の作業をしていると。
「田中さまーーっっ!!」
「土偶ッ」
後ろからドン!! と衝撃が襲ってきて思わず変な声が出た。一緒に作業していた獅童くんが、唐突にダメージを負った俺に目を白黒させている。
コラッ園芸用スコップでも凶器になりうるんだぞやめなさい!
「田中さま田中さま田中さま!! 凄いのどうやったのーっ!?!?」
「あいでででで雑なんだよ誰も彼もが~~」
「こらうさぎ!! 離れんかい!!」
ガタガタと俺を揺らすうさぎくんを見咎めて、獅童くんがさっと間に入る。うさぎくんから庇うように頭を抱きすくめられ、その拍子にふわりと柑橘のいい匂いが弾けた。この子こんな匂いさせてたっけ。
とりあえず落ち着くまで待とう。俺はぎゅむぎゅむと抱きしめてくる獅童くんに力を抜いた。なぜって、強張らせているとその分だけ体に負荷がかかっているからである。なんて力だ。
「へっ、あっ、す、んませんセンパイ!」
「本当にね」
意識が落ちかけていた。ぐってりとする俺を離すことなく、うさぎくんにどうしたのかと問いかける。なんてやつだこいつは。
「それがね田中さまっ、なくなったの!」
「なにが?」
「いたずら!! 凄いの凄いの、どうやったの!?!?」
「そういやされとったとか言っとったな。センパイがやけに自信満々やったから覚えとるわ。珍しなぁおもて」
どうやらイタズラが解決したらしい。俺の読み通りである。獅童くんがしれっと不敬発言していたが悪意はないのでスルーし、キラキラと目を輝かせるうさぎくんにドヤ顔でウインクした。
ちなみにウインクは一年生の時にできるようになったものである。チャラ男がウインクできなかったらなんかやだろ!
「ふっふーん、読み通りだね~」
「あの、でも、犯人は見つかってなくて、申し訳ないの。せっかく解決してくれたのに……田中さまは犯人分かってるの?」
「あっはは! そりゃ~君らには見つかんないだろ~ね~」
うさぎくんが困惑しているのを見て、俺はこういう時に備えて──具体的に言うとドヤ顔で推理を披露する時に備えて──懐に忍ばせておいたあるものを取り出す。
ちゃぷん、と霧吹きの中のそれがゆれた。
「? それは?」
「酢だよ。これを軽く問題の場所に振りかけておいたんだ~」
「酢って、……お酢なの!?」
そう、イタズラがなくなった原因──それはこの手元に持っているお酢の霧吹きなのだ。
指導くんに支えてもらいつつ立ち上がり、俺は旧校舎の一室、俺の管理人室に歩みを進めた。戸惑いながらもうさぎくんもついてくる。
少し時間があるので、種明かしでもしようか。
「そもそも、今回の事件に不審な点がいくつかあったんだ~。ひとつ目は、嫌がらせのためにしては他のメニューに手がつけられてなかったとこ」
そもそも俺が悪戯を認識したのは数日前の鶏がらスープひっくり返し事件だが、それにしたって不思議なものである。鶏がらスープは確かに手間がかかっているが、手っ取り早く嫌な思いをさせたいのなら他の、今日出すはずのメニューを台無しにした方がいい。
「ちょっと考えれば、鶏がらスープにはまだ冷蔵庫で加える手間が要るってわかるんだよね~。少なくともその日出すものではない……よほど料理経験がないのかなぁってその時は思ったんだ」
次に不審だったのはランドリーで散らばっていたものの状態だ。
盗まれているのはもっぱら洗濯前のくたびれた靴下や下着。高めのシャツやブレザーなどではなく、代替の効くものだ。
ひっくり返されたその中でも数人は下着も靴下も盗まれていなかった。これが三つ目の不審点。
荒らされた植物に関して言っても、人の来ない、他の比べれば手間もかからない生垣ではなくハーブ園を荒らせばよかった。それはしないわけだ。何故か。
「被害にあってない個室も見せてもらったでしょ~? 彼らには皆、ある共通点があった。きみ含めてね~」
「? ボクたちの共通点……?」
被害に遭っていないのはイブキ、俺、うさぎくん、それとうさぎくんの取り巻きが数人。
「イブキは喫茶店でバイトしてるから、いつもほんのりコーヒーの匂いがする。おれはキッチンじゃないけど~、ハーブの匂い……だよねぇ? 獅童くん」
「あ、はい。ええ匂いしてはりますよ」
「ありがと~。それでうさぎくんと取り巻きくんたちは皆美意識が高くて、マニキュアやヘアカラーしてるでしょ~?」
まぁ元々仮説でしかなかったのだが、まさかピンポイントで当たるとは。
今まで上げたものの中にはある共通点がある。図書室の奥、管理人室をキィ、と開けると……
「っきゃう!! ひゅぅーんひゅうーん!」
「…………犬ゥ!?!?」
「こ、子犬や!?!?」
ケージの中でぢゃかぢゃかと暴れる子犬の姿が。ご飯もあげたし水も変えたしさっき散歩に行っただろもう。
「……流石に狭いから仮住まいだけどねぇ。理事長が張りきっちゃって」
「そういうことじゃないのです!! なんで犬!?!?」
「絵、悪戯の犯人(?)犬やったとですか」
いぬやったとです。
「言ったでしょ? コーヒー、ハーブ、揮発剤。全部犬が嫌う香りなんだよねぇ。手を付けられてなかった他のメニューはスパイスがふんだんに使われてるし」
なので犬の最も嫌うお酢の匂いを色んな場所に振り撒き、カメラを使って所在を特定。野良の子犬みたいだったので保護した、というわけだ。
子犬とはいえ中型犬くらいの大きさがあるが、品種的には大型犬である。まだまだ成長するだろう。
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