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監禁! 最後の文化祭
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今日はやけに食わされたなと腹をさすりながら旧校舎に戻ると、何やら騒がしい。俺がいるから、というわけでもないらしく。騒ぎの中心は食堂らしい。旧校舎一階、一番広い室内にひょこっと顔を出すと美味しそうなスープの匂いがやけに漂っていた。
「ん、どうした?」
「おおー! 大将か! 丁度えい!!」
夕食の時間だからか生徒は食堂に集まっていて、しかし何か食べることもなくもちゃもちゃ固まっている。厨房の方から慌てたようにイブキがやってきた。
「聞いてくれんか、最近悪戯ながか色んなものが盗まれたりひっくり返されちょって」
「ひっくり返されてるぅ? 大鍋が?」
「そうじゃ、ほれ」
イブキに呼ばれるがまま厨房内に顔を出せば、確かに酷いことになっていた。美味しそうな鶏の匂いからすれば、鶏ガラでスープでも作ろうとしていたのだろう。新メニューの考案か何かだろうか?
「冷たい鶏がらスープが作りたくてな、冷ましちょいてら間にこがなザマや……」
「なるほど……まぁ、イタズラするとしたら熱いスープはひっくり返さんわな」
べっちょりと地面に捨て置かれた鶏肉は汚れて食べれもしないだろう。……と、その光景に少し違和感を覚える。
「……まぁいいか。それで、最近いたずらがあったってのは? 俺は聞いてないぜ」
「わざわざ大将に報告するほどでもない思うちょったがじゃ。すまん」
「いいよ、いつでも聞いてくれ。どうせ暇だし尽力する」
じっくり作っていたらしいスープが台無しにされて、イブキがガックリと落ち込んでいる。流石にかわいそうだ、俺も鶏がらスープ食いたかった。
他に被害はないのかと聞けば、鍋以外に特にないらしい。今作っているメニューは大量のピリ辛フライドチキン、ビリヤニ、炊飯器の中の白米、爽やかな酸味の柑橘ミルキーシャーベット。
どういう栄養管理だとは思うが、最近みかんが大量に送られてきた生徒がいたので仕方がないのである。
「鶏がらスープだけか……他に嫌がらせされた人は?」
「うさぎ知ってるの!」
「うおーっびっくりした~ッ!」
それこそウサギのように入り口からぴょっこんと跳ねてきたうさぎくん。
「や、うさぎくん。うさぎくんは被害に遭ってない~?」
「だいじょーぶ……とは言えないけど、結構軽めなの。どっちかというと酷いのはトイレとか、ランドリーとか……」
「そりゃまた随分……」
「案内するの!」
どうやらトイレは掃除をしてもしても糞尿が散らかされる状況、ランドリーでは洗濯物を置いておいたら盗まれている──特に下着が多いらしい──という状況だ。
それ以外にも個室から盗まれていることもあり、信頼関係で成り立っている旧校舎寮が全体的にピリついているという。
旧校舎二階のランドリーに案内してもらい、様子を見回す。今日もどうやら悪戯犯が入ったらしく、衣類が散らばっていた。すっかり怯えてしまったうさぎくんを背に庇い、しゃがみ込んで見回す。一応写真も撮っておいた。
「言ってくれたらよかったのに~」
「だ、だって……せっかくうさぎたちを招いてくれたのに、こんなことする人がいるって知られたら呆れられちゃうと思ったの……」
「別に構わんよ~。外部から侵入した人がいるってことではないんだね?」
てか、俺が招いたんじゃなくて君達がここに住んでるんだよ。君たちの学舎がここなんだ、と振り返れば、うさぎくんの大きな瞳がうりゅりゅと揺れる。
「ご、ごめんなさい──っ!」
「え、なになに」
今のは励まされる流れのやつではない!?
慌てている俺に、うさぎくんがボロボロと大粒の涙をこぼしながらごめんなさいと再度謝る。
感情豊かな子だなと思うが、俺から見捨てられれば居場所がないと思っているのだろう。それはそう。
だからこそ簡単には見捨てないが。
「植物っ、うさぎたち、大事な植物さんっ、わぁぁあん!!」
「どうしたのほんとに!」
わんわんと泣くうさぎくんを宥めすかしながら、中庭に案内してもらう。旧校舎二号館にある中庭には確か生垣の真ん中に噴水が置いてある空間だったはずだが……
「なるほど」
グスグスと鼻を啜るうさぎくんの頭を撫で、俺は中庭の惨状にそっと眉間を押さえた。
枝が折れ、土は掘り返され液体肥料が打ち捨てられている。綺麗に咲いた花は散り、見るも無惨な姿になっていた。
「うさぎたち、もうこんな目に遭わないと思ってて、でも、ごめんなさいなの、身内の不始末なの……」
やけに怯えているなと思えば、イブキ派──報われなかった子達はこういう嫌がらせを常日頃から受けていたのか。
まぁたしかに、正体不明の誰かにこんなことをされていたら俺も眠れなくなっちゃうかもしれない。
しかしまぁ、なるほどなぁ。
「だから早く言えって言ったのに……」
「ほえ?」
「犯人特定した。確認なんだけど、被害の出なかった部屋を教えてもらっていい?」
「…………ええ!?!?」
全く、呆れ返るほど簡単な話である。うさぎくんからいくつか確認事項を聞き終え、俺はある仕掛けに取り掛かった。
「ん、どうした?」
「おおー! 大将か! 丁度えい!!」
夕食の時間だからか生徒は食堂に集まっていて、しかし何か食べることもなくもちゃもちゃ固まっている。厨房の方から慌てたようにイブキがやってきた。
「聞いてくれんか、最近悪戯ながか色んなものが盗まれたりひっくり返されちょって」
「ひっくり返されてるぅ? 大鍋が?」
「そうじゃ、ほれ」
イブキに呼ばれるがまま厨房内に顔を出せば、確かに酷いことになっていた。美味しそうな鶏の匂いからすれば、鶏ガラでスープでも作ろうとしていたのだろう。新メニューの考案か何かだろうか?
「冷たい鶏がらスープが作りたくてな、冷ましちょいてら間にこがなザマや……」
「なるほど……まぁ、イタズラするとしたら熱いスープはひっくり返さんわな」
べっちょりと地面に捨て置かれた鶏肉は汚れて食べれもしないだろう。……と、その光景に少し違和感を覚える。
「……まぁいいか。それで、最近いたずらがあったってのは? 俺は聞いてないぜ」
「わざわざ大将に報告するほどでもない思うちょったがじゃ。すまん」
「いいよ、いつでも聞いてくれ。どうせ暇だし尽力する」
じっくり作っていたらしいスープが台無しにされて、イブキがガックリと落ち込んでいる。流石にかわいそうだ、俺も鶏がらスープ食いたかった。
他に被害はないのかと聞けば、鍋以外に特にないらしい。今作っているメニューは大量のピリ辛フライドチキン、ビリヤニ、炊飯器の中の白米、爽やかな酸味の柑橘ミルキーシャーベット。
どういう栄養管理だとは思うが、最近みかんが大量に送られてきた生徒がいたので仕方がないのである。
「鶏がらスープだけか……他に嫌がらせされた人は?」
「うさぎ知ってるの!」
「うおーっびっくりした~ッ!」
それこそウサギのように入り口からぴょっこんと跳ねてきたうさぎくん。
「や、うさぎくん。うさぎくんは被害に遭ってない~?」
「だいじょーぶ……とは言えないけど、結構軽めなの。どっちかというと酷いのはトイレとか、ランドリーとか……」
「そりゃまた随分……」
「案内するの!」
どうやらトイレは掃除をしてもしても糞尿が散らかされる状況、ランドリーでは洗濯物を置いておいたら盗まれている──特に下着が多いらしい──という状況だ。
それ以外にも個室から盗まれていることもあり、信頼関係で成り立っている旧校舎寮が全体的にピリついているという。
旧校舎二階のランドリーに案内してもらい、様子を見回す。今日もどうやら悪戯犯が入ったらしく、衣類が散らばっていた。すっかり怯えてしまったうさぎくんを背に庇い、しゃがみ込んで見回す。一応写真も撮っておいた。
「言ってくれたらよかったのに~」
「だ、だって……せっかくうさぎたちを招いてくれたのに、こんなことする人がいるって知られたら呆れられちゃうと思ったの……」
「別に構わんよ~。外部から侵入した人がいるってことではないんだね?」
てか、俺が招いたんじゃなくて君達がここに住んでるんだよ。君たちの学舎がここなんだ、と振り返れば、うさぎくんの大きな瞳がうりゅりゅと揺れる。
「ご、ごめんなさい──っ!」
「え、なになに」
今のは励まされる流れのやつではない!?
慌てている俺に、うさぎくんがボロボロと大粒の涙をこぼしながらごめんなさいと再度謝る。
感情豊かな子だなと思うが、俺から見捨てられれば居場所がないと思っているのだろう。それはそう。
だからこそ簡単には見捨てないが。
「植物っ、うさぎたち、大事な植物さんっ、わぁぁあん!!」
「どうしたのほんとに!」
わんわんと泣くうさぎくんを宥めすかしながら、中庭に案内してもらう。旧校舎二号館にある中庭には確か生垣の真ん中に噴水が置いてある空間だったはずだが……
「なるほど」
グスグスと鼻を啜るうさぎくんの頭を撫で、俺は中庭の惨状にそっと眉間を押さえた。
枝が折れ、土は掘り返され液体肥料が打ち捨てられている。綺麗に咲いた花は散り、見るも無惨な姿になっていた。
「うさぎたち、もうこんな目に遭わないと思ってて、でも、ごめんなさいなの、身内の不始末なの……」
やけに怯えているなと思えば、イブキ派──報われなかった子達はこういう嫌がらせを常日頃から受けていたのか。
まぁたしかに、正体不明の誰かにこんなことをされていたら俺も眠れなくなっちゃうかもしれない。
しかしまぁ、なるほどなぁ。
「だから早く言えって言ったのに……」
「ほえ?」
「犯人特定した。確認なんだけど、被害の出なかった部屋を教えてもらっていい?」
「…………ええ!?!?」
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