王道学園のコミュ障ニセチャラ男くん、憧れの会長と同室になったようで

伊月乃鏡

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監禁! 最後の文化祭

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胸糞お化け屋敷を出て数分。武藤様は休憩しながら消沈していた。

「何だったんだ…………」
「いやぁ、二回目でもなかなか探索しがいがあったね」

村の地図と日記のような本は昨日買って読んでいたので、それに照らし合わせつつあの場所にしかない資料を読み合わせると新たな事実がわかり、さらに“嫌”が増してよかった。ああいうのは胸糞悪い反面謎が残ると気持ち悪くなるタイプなのだ。

別のクラスがやっているバーガーショップでおかず系のものを買ってきて武藤様に渡す。気持ち悪いのはわかるが、そろそろ昼に差し掛かる。何か食べておかなければ。

「掘れば掘るほど胸糞悪気ィ……男児が儀式の道具ってことは、成人男性が少ないのは説明がつく。が、老人が比較的多く、同じ歳の女が少ねぇ。産む人間が必要だ、つまりあの牢獄は……」
「悍ましい~……ちなみにあそこに調査へ行ったっていう体で書かれた本も売られてるよ」
「何考えてんだ今年の一年」

本当にな。
あってか、本で思い出した。花音さんに渡したい本があったんだ。お土産に買ってて……うっかりしてたな。なんか俺が少女小説持ってんのも気恥ずかしいのでさっさと渡したい。

ぐったりとしている──生徒たちの手前顔にはあまり出していないが、雰囲気がね──武藤様はいったん休憩したいだろうし、ちょっとフードコートの方に行こう。来栖が復活してなかったらいいんだけど。

「ごめん武藤様、ちょっと花音さんに渡したいものがあって、行ってくる」
「……」
「? 武藤様?」

ぐい、と腕を引かれる。さっきから色んなところを引っ張られてるな、俺を呼ぶ時に物理で引き留めるのをやめてほしい。

「俺も行く」
「え? いや別に、来なくても……疲れてるでしょ。いくら恋人同士でもそんなに常にべったりはしてないし」

多分。武藤様、さっきから花音さんに会いたがっている。それにしては話しかけもしなかったが、何か気になることでもあるのだろうか。まさか恋……!? だとしたら俺お邪魔虫なのでは!?

「良い。つーか渡したいもんって何だ。テメーこそ疲れてんだろ、休んでろ、俺が渡しに行く」

え!?!?!?!?!? やっぱそうじゃんわかりやす!! めちゃくちゃムッとしてるし嫉妬してるじゃん!?!?!?!?!?
いや、そうか。武藤様は別に男が好きってわけじゃないもんな。可愛い子がいたらそら気になる……それにしては本当に喋らなかったが、奥手だと考えられるし。

さっき武藤様が武藤家のアピールポイントをつらつら言ってたのもそういう……!? そりゃ困るよな変なイメージつけられたら! うわ恥ずかし、もしかしたら俺に言ってくれてたのかもーなんてちょっと期待してたわ!!

「えっ、や、やだ。俺が持ってくから」
「は?? てめーじゃなきゃダメな理由とかあんのかよ」
「めっちゃ怒るじゃん……」

しかし俺でなければいけない理由もない。まぁお土産買ってきたので出来れば喜ぶ顔を見たいというのはある。ガキの頃お土産は家に直接いったり学校で会ったタイミングで渡してたし。

ガヤガヤと騒がしい周囲も俺たちには近づいてこない。少なくとも何か喧嘩しているのは察知しているらしく遠巻きに見られている。
仮でも恋人の俺が隣にいるというのに、会ったばかりの女の子に恋人のお土産を利用して会いに行くのは浮気ではないのか。

「いや、こういうのは俺が直接行ったほうがいいだろ? そもそも俺の用事なんだし……武藤様は座っておきなよ」
「直接……ッ、この俺様に待たせてテメーはお楽しみってか? いいからオタクは静かに待ってりゃいいんだよ、さっさと渡すもん出せ」
「何でそんなこだわるんだよ……」

てかずっと出してるんだけど。手元に恋愛小説を持っているから、有る事無い事言われそうで怖い。あんまり恋愛色の強いものは好まないし、買いたて新品の状態で渡したい。忘れそうだし。

その程度なので別に後日に回してもいいのだが、バイトの時はわりと身軽な状態で来ているので今渡せるなら渡したいんだよな。興味が出たら図書委員会のブースに行って新たな本を開拓してくれてもいいし。

「大体、……今離れなくても、明日とか……大事な話っつーなら電話とかメッセージとか、色々あんだろ。俺の見えるところでしなくとも……」
「電話とかメッセージ……?? 論外では??」

明日は花音さんいないし。てかお土産を電話で渡すって何だ? メッセージはあれか、メッセージアプリ通して通販送れるもんな。いやそれこそお土産の意味なくない……? 仕送りとかでやるやつでない? それは。
というか大事な用事であって話ではないし。ああだから電話? 電話一本で呼びつけたら後で萌さんにくどくど叱られそうだけどな。

「テメーは直接言われんのがいいンかよ」
「直接っていうか、そっちのが手っ取り早くね?」
「情緒が無ェ!」
「情緒いるんかこれに」

土産だぞ。
やっぱ武藤様の家って変な価値観してるなぁ。真道とかに知られたらめちゃくちゃ怒られそうなことを考えつつ、俺はますます機嫌の悪くなる武藤様に大きくため息をついた。

強情だ。仕方ない、折れてやる。今日のどっかのタイミングでする告白で、他の女を見るなって言ってやろ。その頃には遅いかもだけどさ。

「……じゃ、預けるよ」
「おう……あ? んだこの本」
「は? お土産だけど」

と、預けたはずなのだが武藤様はめちゃくちゃ困惑している。えっ困惑したいのは俺なんだけど。何その反応。
珍しくぽかんと口を開けて目を見開いて、まぁ要するにちょっと間抜けな顔をさらしている武藤様に本を渡した。

「昨日花音さんが好きそうな本見かけてさぁ、お土産って直接渡したいし、ちょうどいたから渡そうと思って。そんなに行きたいならいいけど……武藤様?」
「直接……用事……渡すもん、情緒ってそりゃ…………」

何やらぶつぶつ言っている。聞き取れない。
近づこうとすれば、がしりと襟首を掴まれた。

「……行くぞ!!」
「えっ、ええ!?」
「土産なんか直接渡したほうがいいだろうが!! 反応次第で次のもんも決まるし、電話やらメッセージやらは論外に決まってるだろ!」
「どうした手のひらドリルとかにされた!?!?」

くるっくるやんけ!!
土産の本は俺の胸元に握られ、なぜか怒っている武藤様に引きずられるがまま移動した。
花音さんは喜んでくれたが、その上でダシにするなと怒られもした。ダシにするって何なんだ。
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