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監禁! 最後の文化祭
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花音さんにお土産を渡し、きちんと食事をとって色々と見て回る。一年生は他にもカップル限定のメニューを出している完全カップル狙いの店もあり、流石に入るのは遠慮しておいた。シンプルに周囲の浮かれ空気といちゃつきタイムについていけない。
「結構食べ物出してるクラスもあるんだね。三年は許可取れなくてやめてたけど」
「時間ねぇからな」
あらゆる場所で食べ物を買った結果、もらった手持ち鞄がパンパンになってしまった。クッキーとか色々。クッキーでめちゃくちゃ硬い方が美味しいと思うんだけど。
「あ、武藤様食べる? あーん」
「は!? ちょっ、おい、やめろ!!」
「そんな全力で抵抗しなくても」
勢いよくずり下がった武藤様が人に当たらないよう腕を引き寄せて、結局クッキーは俺が食べる。
ガリガリとしていてうまい。歯をへし折らんばかりの硬さである。
「あ?」
「ん?」
と、後ろから声がした。
聞き覚えのあるというか、親より聞いたと言っても過言ではない声に思わず振り向く。
「何だ、宗介じゃないか。まだこんなところで屯ってたのか」
心底呆れたように言う男は頭にお面をつけ、クレープを両手持ちした上でデケェポップコーンを首に下げている。大はしゃぎである。絶対こんなに食えないくせに。
ずっと掴んでるのもアレなので武藤様の腕を離し、おっすおっすと軽く手を上げた。
「たむろってるとかいうな。水瀬こそ、どうしたんだよ。珍しいなお前が一人なん」
「ああ、同行者はいんだけど……今ふれあい犬に夢中でさ。ほら、お前が見つけたやつ」
そういえば。
けっこう前に旧校舎を荒らしていたサモエドの子犬だが、すくすく育っており専用の犬小屋で暮らすことになった。最近は理事長が常駐しており秘書が迷惑しているらしい。
俺もたまに顔を出しに行くが、覚えられているかは怪しいものだ。まぁ卒業してしまえばなかなか会えなくなる。俺のことなど忘れてしまうに越したことはないし。
犬の体感時間は人間よりもずっと長い。下手に懐かせてしまえば、犬にとって永遠に近い時間を別離で過ごさせるのだ。それは残酷だろう。
「めちゃくちゃ懐こいもんな。まぁ~良かったよ。学校で飼うっつってもな、人見知りしちゃうとストレスも強いだろうからな」
「俺も流石にアレは可愛いと思った。凄いな、いぬ」
「水瀬がぁ? 珍し!」
「水瀬、てめー何かのこと可愛いと思える感情あったんか」
「俺を何だと思ってるんだお前達は」
水瀬はからかいとかを抜きにものごとを可愛いと認識することがない。というか割といつもすんとしている。誰かに似てると思っていたが、萌さんだ。テンション感が。
不満そうに顔を顰めてみせるも、すぐに機嫌が治る。こういう、何しても怒んなさそうな飄々としたところが一緒にいて楽なんだよな。
水瀬が俺といて楽かは知らないけど、少なくとも楽しんでいるのは知っている。
「つーかさ宗介。お前、禁止事項はどうなったん?」
「え?」
「いやお前ら、さっき手繋いでただろ。いいことだけどお前、卒業まで恋人っぽいことしないとか言ってなかったか」
…………あ!!!!!!!
そ、そうだった……!!
俺はざっと顔を青ざめさせた。その様子に武藤様が怪訝な顔をして手繋ぎくらいいだろ、と返しているがそういう問題ではない。いや手繋ぎはいいとして、手繋ぎはギリギリ友人でもするとして。
「俺はせんけどな。宗介と手繋ぎ。きしょいし」
「俺もしねーけどきしょいはいいすぎだろ」
「するか手繋ぎ」
「は? きしょ」
「前言撤回早すぎるだろこのコミュ障健忘症野郎。そんなだから後輩の顔が覚えられなくて『自分のこと覚えてますか』って言葉にドラマでも怯えることになるんだよ」
火力が高すぎるんだが……??
一回おふざけに乗っただけでやっていいファイヤではないが、俺は慣れているので酷いなーと流しておいた。武藤様はドン引きした顔をしているが、これが俺たちの日常である。
しかし会わないうちに正論パンチも鍛え上げられてるな。そんなもん鍛え上げるな。
「……そうだ。宗介、ちょっと同行者迎えいってくんね? 俺手が離せないから」
「物理的に……? デート中だから嫌なんですけど……」
「そうか。ところでお前がガキの頃砂月屋に忍び込んで、」
「行かせていただきまーす!! ごめん武藤様一瞬待ってて!!」
「テメーらは話が早すぎんだよ。行ってこい」
黒歴史出してくるのはずるいだろ!!
まぁ、水瀬も別に俺にめちゃくちゃ不都合なことはしないだろう。そういうやつだ。多少は嫌がらせくらいはするかもしれないが、武藤様に対して露骨に嫌味を言うとか嫌がらせとかはしないと思う。
さて、ふれあい犬のエリアはけっこう近くだ。教室内でやっているのを見たので、そこで同行者とやらを探すことにする。ガヤガヤと騒がしい雑踏を掻き分け、ふれあい犬をやっているエリアに行って…………
「んん????」
とてもここにいるとは思えない人が、犬を撫でている光景が遠くに見えた。
「……副会長?」
水瀬、あの人が同行者……とか言わないよな?
「結構食べ物出してるクラスもあるんだね。三年は許可取れなくてやめてたけど」
「時間ねぇからな」
あらゆる場所で食べ物を買った結果、もらった手持ち鞄がパンパンになってしまった。クッキーとか色々。クッキーでめちゃくちゃ硬い方が美味しいと思うんだけど。
「あ、武藤様食べる? あーん」
「は!? ちょっ、おい、やめろ!!」
「そんな全力で抵抗しなくても」
勢いよくずり下がった武藤様が人に当たらないよう腕を引き寄せて、結局クッキーは俺が食べる。
ガリガリとしていてうまい。歯をへし折らんばかりの硬さである。
「あ?」
「ん?」
と、後ろから声がした。
聞き覚えのあるというか、親より聞いたと言っても過言ではない声に思わず振り向く。
「何だ、宗介じゃないか。まだこんなところで屯ってたのか」
心底呆れたように言う男は頭にお面をつけ、クレープを両手持ちした上でデケェポップコーンを首に下げている。大はしゃぎである。絶対こんなに食えないくせに。
ずっと掴んでるのもアレなので武藤様の腕を離し、おっすおっすと軽く手を上げた。
「たむろってるとかいうな。水瀬こそ、どうしたんだよ。珍しいなお前が一人なん」
「ああ、同行者はいんだけど……今ふれあい犬に夢中でさ。ほら、お前が見つけたやつ」
そういえば。
けっこう前に旧校舎を荒らしていたサモエドの子犬だが、すくすく育っており専用の犬小屋で暮らすことになった。最近は理事長が常駐しており秘書が迷惑しているらしい。
俺もたまに顔を出しに行くが、覚えられているかは怪しいものだ。まぁ卒業してしまえばなかなか会えなくなる。俺のことなど忘れてしまうに越したことはないし。
犬の体感時間は人間よりもずっと長い。下手に懐かせてしまえば、犬にとって永遠に近い時間を別離で過ごさせるのだ。それは残酷だろう。
「めちゃくちゃ懐こいもんな。まぁ~良かったよ。学校で飼うっつってもな、人見知りしちゃうとストレスも強いだろうからな」
「俺も流石にアレは可愛いと思った。凄いな、いぬ」
「水瀬がぁ? 珍し!」
「水瀬、てめー何かのこと可愛いと思える感情あったんか」
「俺を何だと思ってるんだお前達は」
水瀬はからかいとかを抜きにものごとを可愛いと認識することがない。というか割といつもすんとしている。誰かに似てると思っていたが、萌さんだ。テンション感が。
不満そうに顔を顰めてみせるも、すぐに機嫌が治る。こういう、何しても怒んなさそうな飄々としたところが一緒にいて楽なんだよな。
水瀬が俺といて楽かは知らないけど、少なくとも楽しんでいるのは知っている。
「つーかさ宗介。お前、禁止事項はどうなったん?」
「え?」
「いやお前ら、さっき手繋いでただろ。いいことだけどお前、卒業まで恋人っぽいことしないとか言ってなかったか」
…………あ!!!!!!!
そ、そうだった……!!
俺はざっと顔を青ざめさせた。その様子に武藤様が怪訝な顔をして手繋ぎくらいいだろ、と返しているがそういう問題ではない。いや手繋ぎはいいとして、手繋ぎはギリギリ友人でもするとして。
「俺はせんけどな。宗介と手繋ぎ。きしょいし」
「俺もしねーけどきしょいはいいすぎだろ」
「するか手繋ぎ」
「は? きしょ」
「前言撤回早すぎるだろこのコミュ障健忘症野郎。そんなだから後輩の顔が覚えられなくて『自分のこと覚えてますか』って言葉にドラマでも怯えることになるんだよ」
火力が高すぎるんだが……??
一回おふざけに乗っただけでやっていいファイヤではないが、俺は慣れているので酷いなーと流しておいた。武藤様はドン引きした顔をしているが、これが俺たちの日常である。
しかし会わないうちに正論パンチも鍛え上げられてるな。そんなもん鍛え上げるな。
「……そうだ。宗介、ちょっと同行者迎えいってくんね? 俺手が離せないから」
「物理的に……? デート中だから嫌なんですけど……」
「そうか。ところでお前がガキの頃砂月屋に忍び込んで、」
「行かせていただきまーす!! ごめん武藤様一瞬待ってて!!」
「テメーらは話が早すぎんだよ。行ってこい」
黒歴史出してくるのはずるいだろ!!
まぁ、水瀬も別に俺にめちゃくちゃ不都合なことはしないだろう。そういうやつだ。多少は嫌がらせくらいはするかもしれないが、武藤様に対して露骨に嫌味を言うとか嫌がらせとかはしないと思う。
さて、ふれあい犬のエリアはけっこう近くだ。教室内でやっているのを見たので、そこで同行者とやらを探すことにする。ガヤガヤと騒がしい雑踏を掻き分け、ふれあい犬をやっているエリアに行って…………
「んん????」
とてもここにいるとは思えない人が、犬を撫でている光景が遠くに見えた。
「……副会長?」
水瀬、あの人が同行者……とか言わないよな?
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