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いざゆけ魔法学校
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体も魔力も落ち着いたので先生からもお墨付きをもらい、俺は授業をそのまま続行することになった。完全に研究者の目をした先生から経過観察用レポートをもらったが健康管理のためだよな?? 知的好奇心ではない??
「……大きくなったら体を食い破るのでは?」
「無意味に宿主を殺す生き物なんていないわよやあねえ~」
意味があった場合俺は死ぬんですが。
先生は優しくて胸も大きくて露出も多い若い女性で、とても人気があるが時々マッドな部分を覗かせる。
人間のことあんまり何とも思ってない。多分魔物の方が好きだ。たぶん、人間嫌いというわけでもないけど。
生徒からはその辺はそこそこ引かれているが、本人からしたらあまり関係はないことなのだろう。
先生を呆れながら見ていたら、教室の真ん中の方でざわっ、と俄に生徒達が騒がしくなった。
誰かがまた魔物を召喚したようだ。本来魔物ってあんなに速攻来ない。
「殿下、一角獣召喚してる!?」
「うわ本当だ、初めて見た……!」
お、一角獣。
魔法陣から美しく白い仔馬が光と共に現れた。その頭には未成熟な角が生えており、未だ生まれたばかりのその馬は、震える足で地面にしっかり降り立っている。
多くの人が白馬を取り囲み観察する絵面はなかなかだが、一角獣はこの世界でなお最高レアな生き物。遭遇せずに一生を終えるような人間も多いだろう。
まあ、遭遇したところで発見する前に一生を終えられるかどうかは一考の余地があるが……
「へぇー、これが一角獣? なかなかいい見た目してんじゃん、よろし──あいっっで!!!!!!!」
「あらあらだめよヴィンセントちゃん、一角獣は男の子が大嫌いなのよお?」
「あらあらじゃなくて止めた方がいい」「先生って人間好きじゃないから……」「男子校で男嫌いの馬……?」
これである。
思い切り手のひらに噛みつかれたヴィンセントがもんどり打つのを、先生は和やかに見守っている。回復魔法が使える相手だからだろう──と思いたいがこの先生はなかなかにクレイジーなので手を出した方が悪いとして回復してくれない可能性がある。
「っで、くそ、この!!!! お前らも見てないで手伝えよぉ!!」
「咬まれたくないし……」「がんばれ!」「俺まだ召喚できてないんで、ね!」
ギャアギャア騒ぐヴィンセントに距離を取る周囲。なるほど、こいつの召喚した時ってこんな感じだったんだ。本編だとルースに懐いてルースの処女バレっていう舞台装置になってたしな……まあ処女でも男だと全然噛み付くんだが、ルースは聖母みたいに可愛いので……。
こういう時に率先してどうにかしてくれる騎士団長の子は獅子寮じゃないんだよな。俺と同じく傾聴の力がある。
さて、その率先してどうにかするタイプが俺だから厄介なのだが……。
「学級長!? ちょっやめとけって、魔力なしにどうにかなるやつじゃ」
「黙ってろ」
先生の視線もいい加減痛かったので人混みを掻き分けヴィンセントを襲っている馬をどかそうと手を伸ばす。
当然そんなことをすれば手を噛まれるわけだが。
手のひらにとんでもない痛みが走る。仔馬とはいえさすが魔物の殺傷力だ、骨がミシミシと音を立ててへし折れていく。
「こら」
馬に噛まれた時の躾は知っているだろうか。
つぶらな馬の瞳と目を合わせ、低いトーンで声をかける。
被捕食者である馬は、目をまっすぐ見られるとストレスや居心地の悪さを感じる。基本的に悪いことしてない馬にしちゃいけないぞ。
こういう時ヴィンセントのように思わず慌てたり、手や鞭で叩いたりしてはいけない。馬は賢いので相手が慌てればすぐに分かるし見下してくる。
あくまで何のダメージも負っていない上位のもの、という格付けに成功する必要があるのだ。
「噛むな。お前、言葉わかるだろう」
さらに、無理やり後退させる。この時食わせた手しかなかったのでそうしたが、本来は綱とか使ってくれや。
相手に見据えられながら一歩下がらなければならない、という状況は馬にとって恐怖を抱くものだ。
「……えっと、学級長?」
「何、普通に食われてない?」
「何であんな真顔なの」
ちょっとモブうるさいな! 俺も食われたくないよわざわざ!
メキョメキョになった手のひらを開放し、静止して馬の目を見つめる。こういう時に次の行動を起こすとそちらに気を取られるので、怒られた理由を考えさせる必要があるのだ。
とはいえ一角獣は学習能力が高い。
言葉も理解している節があるので、何故怒られるかは理解できるだろう。
まあ野生の一角獣は手がつけられないほど獰猛なので大人はこの限りではないが……仔馬でよかった……。
「っ、何してんの学級長、危なっ……」
暫くしたら軽く頭を抑え、無事な方の手を口元に差し出す──よし。
「よーーしよしよしよし良い子だなぁ~~♡ 良くできました! よーしゃよしゃよしゃ! ん? 嬉しいかーそっかそっかー!! 良い子だねぇ!」
「何ぃ!?」
位置を移動して目を逸らし褒めまくっていれば、ヴィンセントから邪魔が入る。いや、何って。
「躾けた」
「躾けた!?!?!?!?!?」
ヴィンセントのデカ声が響き渡る。お前この距離の声量じゃないだろ。
「えっ……うわ、ほんとだ噛んでない!!」「学級長手プラップラなんだけど」「折れてる????」「折れてるよね」「どういう度胸?」「異常者……」
ざわつかれ方がおかしいだろもっと俺なんかやっちゃいましたかみたいなざわつき方しろよ!
「……大きくなったら体を食い破るのでは?」
「無意味に宿主を殺す生き物なんていないわよやあねえ~」
意味があった場合俺は死ぬんですが。
先生は優しくて胸も大きくて露出も多い若い女性で、とても人気があるが時々マッドな部分を覗かせる。
人間のことあんまり何とも思ってない。多分魔物の方が好きだ。たぶん、人間嫌いというわけでもないけど。
生徒からはその辺はそこそこ引かれているが、本人からしたらあまり関係はないことなのだろう。
先生を呆れながら見ていたら、教室の真ん中の方でざわっ、と俄に生徒達が騒がしくなった。
誰かがまた魔物を召喚したようだ。本来魔物ってあんなに速攻来ない。
「殿下、一角獣召喚してる!?」
「うわ本当だ、初めて見た……!」
お、一角獣。
魔法陣から美しく白い仔馬が光と共に現れた。その頭には未成熟な角が生えており、未だ生まれたばかりのその馬は、震える足で地面にしっかり降り立っている。
多くの人が白馬を取り囲み観察する絵面はなかなかだが、一角獣はこの世界でなお最高レアな生き物。遭遇せずに一生を終えるような人間も多いだろう。
まあ、遭遇したところで発見する前に一生を終えられるかどうかは一考の余地があるが……
「へぇー、これが一角獣? なかなかいい見た目してんじゃん、よろし──あいっっで!!!!!!!」
「あらあらだめよヴィンセントちゃん、一角獣は男の子が大嫌いなのよお?」
「あらあらじゃなくて止めた方がいい」「先生って人間好きじゃないから……」「男子校で男嫌いの馬……?」
これである。
思い切り手のひらに噛みつかれたヴィンセントがもんどり打つのを、先生は和やかに見守っている。回復魔法が使える相手だからだろう──と思いたいがこの先生はなかなかにクレイジーなので手を出した方が悪いとして回復してくれない可能性がある。
「っで、くそ、この!!!! お前らも見てないで手伝えよぉ!!」
「咬まれたくないし……」「がんばれ!」「俺まだ召喚できてないんで、ね!」
ギャアギャア騒ぐヴィンセントに距離を取る周囲。なるほど、こいつの召喚した時ってこんな感じだったんだ。本編だとルースに懐いてルースの処女バレっていう舞台装置になってたしな……まあ処女でも男だと全然噛み付くんだが、ルースは聖母みたいに可愛いので……。
こういう時に率先してどうにかしてくれる騎士団長の子は獅子寮じゃないんだよな。俺と同じく傾聴の力がある。
さて、その率先してどうにかするタイプが俺だから厄介なのだが……。
「学級長!? ちょっやめとけって、魔力なしにどうにかなるやつじゃ」
「黙ってろ」
先生の視線もいい加減痛かったので人混みを掻き分けヴィンセントを襲っている馬をどかそうと手を伸ばす。
当然そんなことをすれば手を噛まれるわけだが。
手のひらにとんでもない痛みが走る。仔馬とはいえさすが魔物の殺傷力だ、骨がミシミシと音を立ててへし折れていく。
「こら」
馬に噛まれた時の躾は知っているだろうか。
つぶらな馬の瞳と目を合わせ、低いトーンで声をかける。
被捕食者である馬は、目をまっすぐ見られるとストレスや居心地の悪さを感じる。基本的に悪いことしてない馬にしちゃいけないぞ。
こういう時ヴィンセントのように思わず慌てたり、手や鞭で叩いたりしてはいけない。馬は賢いので相手が慌てればすぐに分かるし見下してくる。
あくまで何のダメージも負っていない上位のもの、という格付けに成功する必要があるのだ。
「噛むな。お前、言葉わかるだろう」
さらに、無理やり後退させる。この時食わせた手しかなかったのでそうしたが、本来は綱とか使ってくれや。
相手に見据えられながら一歩下がらなければならない、という状況は馬にとって恐怖を抱くものだ。
「……えっと、学級長?」
「何、普通に食われてない?」
「何であんな真顔なの」
ちょっとモブうるさいな! 俺も食われたくないよわざわざ!
メキョメキョになった手のひらを開放し、静止して馬の目を見つめる。こういう時に次の行動を起こすとそちらに気を取られるので、怒られた理由を考えさせる必要があるのだ。
とはいえ一角獣は学習能力が高い。
言葉も理解している節があるので、何故怒られるかは理解できるだろう。
まあ野生の一角獣は手がつけられないほど獰猛なので大人はこの限りではないが……仔馬でよかった……。
「っ、何してんの学級長、危なっ……」
暫くしたら軽く頭を抑え、無事な方の手を口元に差し出す──よし。
「よーーしよしよしよし良い子だなぁ~~♡ 良くできました! よーしゃよしゃよしゃ! ん? 嬉しいかーそっかそっかー!! 良い子だねぇ!」
「何ぃ!?」
位置を移動して目を逸らし褒めまくっていれば、ヴィンセントから邪魔が入る。いや、何って。
「躾けた」
「躾けた!?!?!?!?!?」
ヴィンセントのデカ声が響き渡る。お前この距離の声量じゃないだろ。
「えっ……うわ、ほんとだ噛んでない!!」「学級長手プラップラなんだけど」「折れてる????」「折れてるよね」「どういう度胸?」「異常者……」
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