悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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いざゆけ魔法学校

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蛇のまとったネバネバの液体が口を汚す。心なしかピリピリするような気がして、いやこれ口にして良いやつ!? 今絶賛蛇丸呑みしてるけど!!

「ぁ、ゔぐっおえ……がッ」
「アーノルドちゃん!」

ぽすん、と豊満な胸に受け止められる。優しげな匂いがして、ふわふわのロング髪が俺の頬を擦った。先生が駆けつけたのだろう、先生は召喚獣を扱う達人だ、どうにかして──

蛇竜サーペントドラゴンよね!?!? しかも幼体!! すーっごく珍しいのよほら頑張って飲み込んじゃいなさい!」
「もががが!?!?」
「センセェ!?!? 明らかに食っちゃいけないもの食ってますけど!?!?」

近くにいたヴィンセントが慌てて俺を指し示す。本当にそう。
──と言いたいが、この蛇、蛇竜か…………。

「んもごごごう!!!!」
「うわぁーーーッッッ食ってる怖!!!!」
「頑張ってぇ~、蛇竜の幼体は宿主の魔力と周囲の環境で進化先が違うから、放置してると炎竜レッドドラゴンとかになって全部燃えちゃうかも」

怖!!
だが事情が変わった。できる限り喉を開き蛇が通るのを受け止める。鼻から黒い液体が出てきている感覚と涙がこぼれ落ちるが、この生き物を逃すわけにはいかないのだ。
蛇竜とは、厳密に言うと細かい種族名ではない。

例えば鯨なんかは鯨類に属しているが、そんなことを言えばイルカだってシャチだって鯨類である。蛇竜と言う呼称もそれにあたり、おおむね“蛇の形をした竜”という理由だけで呼ばれている。
ちなみに“ドラゴン”って呼ぶだけならギリワイバーンも入るから、認識としては“海洋生物”くらいの大雑把さだぞ!

「ちょっとヴィンセント何してんの逃げるよ、学級長大丈夫ぅ!?」
「え、白目剥いてません!? 嚥下だけは続けてる……」
「ぜったいあの大きさ入らないって、痛覚ない??」
「わかる学級長って本当に痛覚とかないし傷の扱いは雑な不良患者だから」
「うわ急に喋るなヴィンセント」

それではそのイルカだか鯨だかに──イルカや鯨にも大きく違いがあるが──値するのが、先ほども言った炎竜とかの呼称である。
ではこの幼体はなんなのかというと、が正解。

「それにしても初めて見たわぁ~幼体なんて! 卵から孵ったらすぐに進化し始めてしまうものね! 卵の中から召喚されたのかしら?」
「えっ先生はしゃいでる?」
「怖…………」

そういうことだ。
蛇竜の幼体は産まれた瞬間から周囲に適応して進化する。環境や与えられる魔力によってその進化先は違い、発見されただけでも数百種類。
そんな不定形な生き物なのに種として認められているのは、ひとえに餌や環境できちんと同じ進化をするから。
例えば炎竜と水竜ブルードラゴンはバチクソ仲悪いけど、大雑把に言えば同じ生き物なのだ。

この黒い液体は卵液といったところだろう、殻がないから不安定で何かの中に入りたかったのか。

「ん、ぐ、んっ!」
「ウワ……飲んだ……」

ごくん、と嚥下する。めちゃくちゃ吐き気がやばかったし魔力酔いが……魔力酔い?

(なんか……ちょっと落ち着いたような……?)

気のせいだろうか。
魔神の魔力は強大で、少しでもバランスを崩したら危ない。そのはずなのに。心なしか金の指輪が震えているような気がする。あとで魔神に聞いておこう。

「偉かったわねぇ~アーノルドちゃん! これで契約完了よ~!」
「え、なんか契約書とかは」
「ないない! でもきちんと契約はされたはず。時々あるのよ不安定な赤子を召喚しちゃって体内で飼うって事例が」

あるんかい。魔法使い思ったよりなんでもやってんな。
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