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やっとここから始まる (玲side)
しおりを挟むあの和解の日から1週間。
生まれてから15年の確執(?)が無かったかのように打ち解けた俺とマオに 戸惑いを隠せない家族達。
それを尻目に、俺とマオは改めて付き合う事になった。
今夜も俺の帰宅時間に合わせて駅まで迎えに来てくれてるマオ。寒さでほっぺが赤くなってるのが可愛い。
改札から出て来た俺を見つけて萌え袖気味になって手を振ってくるのが更に可愛い。
そんないじらしい姿を見ちゃうと、ついついだらしない笑顔になってしまうな。
とはいえ…だ。
マオは未だ15。俺は30の会社員。
もし、前世で日常的にやってた事そのままを再現してしまえば、この世界では未成年者と成人だ。淫行になってしまう…。
それは不味い。大人として俺がブレーキを掛けないと。
「おかえりなさい」
「ただいま」
一緒に並んで歩き出す俺達。
母屋の俺の部屋に一緒に来るつもりらしいマオは、コンビニで飲み物と雑誌を買うらしい。
あったかいカフェラテを買うのか。
よしよし、叔父さんに任せなさい。
「俺がもうちょい早く生まれて来たら良かったよね…」
コンビニで買い物をして外に出て歩き出したマオがそんな事を言い出した。
「何言ってんの。生まれる決断してくれただけで御の字だよ。これだけ待ったんだ。あと数年くらい平気だ」
…うん、平気だ…。強がりなんかじゃないし。
マオと触れ合えるこの瞬間だけでも、今は満足。本当に嬉しいんだ、目の前で優しく笑いかけてくれる君がいてくれる事が。
それだけで俺はもう。
それに、
「大人になっていくマオの成長を見守りながら待つのも、結構楽しいんだよ」
実際、今回マオが生まれて15年、そうだった。
愛する人を自分で産み直したいとか育て直したいとかって考えたりした事がある人もいるかと思うけど、それに近い状況だったと思う。
俺も、実はそんな願望があったのかな。懐かれない寂しさより、成長をリアルタイムで見守れる喜びの方が大きかった。
年を重ねる毎に、1日毎に、小さかったマオは少年らしくなり、大人に近づいていく。
その一瞬一瞬のどの場面も目に焼き付けておきたい貴重で美しい瞬間だった。
胸を震わせずにいられない、そんなの。
そんなものを目の当たりに出来た俺は、幸せだ。
「楽しみは後にとっといてさ、ゆっくりいこうよ。
前に出来なかった事、たくさんしよう」
俺はそう言ってマオを見た。
「出来なかった事?」
マオが首を傾げる。何それ今生初めて見たな。可愛い。
「前は今より人目を気にしなきゃいけなかっただろ?
でも今は、少しは生き易い世の中になっていきそうだからさ、デートとかたくさんしよう」
「デート…そういや、した事なかったね」
あんな閉鎖的な、小さな村の中ではそんな事出来なかった。
でも今なら。
同性カップルなんて実は結構いるし、少し目立ちはするかもしれないけど、騒ぐ程 珍しいものでもない。
俺とマオは叔父と甥で血縁関係で同性だ。倫理に反するって人も少なくないだろう。
だけど、それがなんだ。
またマオを失うくらいなら、そんな些細な事はいくらでも越えてみせる。
マオの笑顔の為なら、どれだけの批難だって撥ね付けてみせる。
「一緒にイルミネーション見に行ってみたいな。
恋人とのデートって感じの事、憧れてたんだぁ…」
各地のクリスマスイベントの特集記事が載った雑誌を捲りながらマオが言った。
「クリスマスマーケット、行ってみたい。
お菓子たくさん買ってよ」
「経済力なら任せなさい」
「…レイ、やらしい大人になっちゃったんだね…」
「そうだよ。マオの為にガンガン働くし」
俺の言葉にマオが笑う。
冗談みたいに言ってるけど、ホントの事だよ。
俺はマオの為に生きてるんだ。
マオの夢は全部俺が叶えるから、早く大人になって俺のそばに並んで。
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