氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽

文字の大きさ
5 / 36
序章

氷狼陛下のご希望

しおりを挟む



「あの……」
「フィリ―ネはここにいてくれ。君がいないと、俺まで休めなくなる」
「休め……?」

何の話かわからなくて、言葉に詰まるとフェリクス様は「人払いをさせているな」とヴァルト様に釘を刺すように確認した。

「問題はありません。侍女も今は自分の部屋に帰らせましたけど……」

怪訝な顔でヴァルト様が言う。

「口を出すなよ。フィリ―ネなら大丈夫だ。ここ数日観察してきたが、彼女はうるさい女とは違う」
「あの……フェリクス様?」
「フィリ―ネは、ここにいてくれないか? 婚約者といれば堂々と休めるんだ」
「……もしかして、毎日お茶の時間を取ってくださっていたのは……」
「フェリクス様が、忙しい中で休憩を堂々とするためです」

フェリクス様が言う前にヴァルト様がきっぱりと言い放った。

「お休みが欲しかったのですか?」
「……まぁ、そうだな。フィリ―ネは正式な婚約者だから、二人でいる時は誰も近づいて来られないからな。誰が見ても婚約者を大事にしている陛下に見えなかったか?」

……謎が解けた瞬間のようだ。恋人のように触れてくる時があってもフェリクス様が私に好意があるかどうかわからずに、そのうえ彼は素っ気ない時もあったのだ。

「もしかして、人前で……その……」
「俺がフィリ―ネを大事にしているとアピールしていれば、フィリ―ネに会いに来られる口実ができるからな。休みやすいんだ。それに、そうしていれば他の女は近づかなくなる」
「女……?」
「幾人もの貴族に、娘を妃にと勧められて困っていた。寄ってくる女にも興味がない」

手を引かれて、また同じソファーに座らせられると、ヴァルト様がお茶のおかわりを淹れながら話した。

「みな、フェリクス様の妃になりたがっていたのですよ。このご容姿ですし、令嬢たちからの視線も熱いと言いますか……」
「熱いどころではない。寝所にまで送り込まれてはたまらん」
「あれは、第一殿下だったアイザック様のご厚意らしいですから……」
「なにがご厚意だ。白々しい」

不機嫌な様子で、ソファーにもたれるフェリクス様。どうやら、私はフェリクス様の女よけらしい。
人前で私を可愛がっていたのは、フェリクス様の女よけのためで彼のお気に入りが私だとアピールするためだった。
呆然と聞いていると、私がショックを受けたと勘違いしたのかフェリクス様がしまったという表情をみせている。

「別に誰でもよかったというわけではないぞ。フィリ―ネだから話したし、お前のことは気に入っている」
「そうですか」

淡々と返事をすると、フェリクス様は軽くため息を吐いた。

「……フィリ―ネは何かないか? 願いはないか? 何でも聞いてやるぞ。困ったことがあれば言ってくれればいい。必ず助けよう」
「特には……」

考えていても私には、なにも願いなどない。

「……あの侍女はどうだ?」

昔からいるジルは、確かに困った侍女だけど……
人とあまり話すことのなかった私には、ジルのことをどう話していいのかわからなかった。
悩む私にフェリクス様は何かを察したのか、頭をポンポンと撫でた。

「話したくなったら話せばいい。フィリ―ネの話は聞こう。二人でいる時間はあるから、いつでも大丈夫だ」
「はい……」

フェリクス様は優しかった。うまく話せない私を責めることも見下すわけもなく否定もしない。それだけで、私には彼との時間は無駄ではないのかもしれない。

そして私は、フェリクス様の休憩及び女よけのために毎日お茶をすることになった。









しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される

綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。 食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。 「あなた……毛皮をどうしたの?」 「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」 思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!? もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/09/21……完結 2023/07/17……タイトル変更 2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位 2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位 2023/07/15……エブリスタ トレンド1位 2023/07/14……連載開始

婚約破棄されたので隣国で働きます ~追放侯爵令嬢、才覚だけで王妃候補に成り上がる~

鷹 綾
恋愛
内容紹介 王宮改革は、英雄の一声では成し遂げられない。 王太子に招かれ、王宮顧問として改革に携わることになった ルビー・エルヴェール。 彼女が選んだ道は、力で押し切る改革でも、敵を断罪する粛清でもなかった。 評価制度の刷新、情報公開、説明責任、緊急時の判断、責任の分配―― 一つひとつの制度は正しくても、人の恐れや保身が、改革を歪めていく。 噂に揺れ、信頼が試され、 「正しさ」と「速さ」、 「個人の覚悟」と「組織の持続性」が、幾度も衝突する。 それでもルビーは、問い続ける。 ――制度は、誰のためにあるのか。 ――信頼とは、守るものか、耐えるものか。 ――改革者は、いつ去るべきなのか。 やがて彼女は、自らが築いた制度が 自分なしでも動き始めたことを確かめ、静かに王宮を去る。 残されたのは、名前の残らない改革。 英雄のいない成功。 だが確かに「生き続ける仕組み」。 これは、 誰かが称えられるための物語ではない。 考えることを許し、責任を分かち合う―― その文化を残すための、40話の改革譚。 静かで、重く、そして誠実な “大人のための王宮改革ファンタジー”。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】

かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。 名前も年齢も住んでた町も覚えてません。 ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。 プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。 小説家になろう様にも公開してます。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

竜帝と番ではない妃

ひとみん
恋愛
水野江里は異世界の二柱の神様に魂を創られた、神の愛し子だった。 別の世界に産まれ、死ぬはずだった江里は本来生まれる世界へ転移される。 そこで出会う獣人や竜人達との縁を結びながらも、スローライフを満喫する予定が・・・ ほのぼの日常系なお話です。設定ゆるゆるですので、許せる方のみどうぞ!

愛人令嬢のはずが、堅物宰相閣下の偽恋人になりまして

依廼 あんこ
恋愛
昔から『愛人顔』であることを理由に不名誉な噂を流され、陰口を言われてきた伯爵令嬢・イリス。実際は恋愛経験なんて皆無のイリスなのに、根も葉もない愛人の噂は大きくなって社交界に広まるばかり。 ついには女嫌いで堅物と噂の若き宰相・ブルーノから呼び出しを受け、風紀の乱れを指摘されてしまう。幸いイリスの愛人の噂と真相が異なることをすぐに見抜くブルーノだったが、なぜか『期間限定の恋人役』を提案されることに。 ブルーノの提案を受けたことで意外にも穏やかな日々を送れるようになったイリスだったが、ある日突然『イリスが王太子殿下を誘った』とのスキャンダルが立ってしまい――!? * カクヨム・小説家になろうにも投稿しています。 * 第一部完結。今後、第二部以降も執筆予定です。

【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声

miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。 若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。 それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。 ※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。 本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。 ※4話でサクッと完結します。

処理中です...