氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!

屋月 トム伽

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第一章 フェンリル

逃げるためなら

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お茶会の準備しながら、フェリクス様を待っていると、彼は来なくてヴァルト様がやって来た。彼は、まだ席が外せないらしい。そして、ヴァルト様の話に呆然となる。

「ディティーリア国へ……?」
「はい。近日中に訪問いたします。フィリ―ネ様もそのように……フィリ―ネ様?」

……帰りたくない。
呆然と氷で花を作っていた手が止まる。その氷がゴトンと音を立ててテーブルに落ちた。

「大丈夫ですか? お怪我は!?」

アリエッタが、慌てて私の手を確認した。

「大丈夫です。なんでもありません。フェリクス様には、わかりましたとお伝えください」

氷を落としてしまったのに、なんでもなかったように拾い上げた。その様子をヴァルト様とアリエッタは顔を見合わせて困惑していた。

(逃げよう……ここにいたら、ディティーリア国に連れ戻される)

今日のお茶会には、フェリクス様は来なかった。ヴァルト様は、彼が忙しいと言っていた。
雪国用の温かいブーツを履き、もこもこの外套を羽織る。フェレスベルグの子供は、なにか感じ取っているのか、私の周りをバタバタと羽ばたかせている。

「一緒に行く?」

手を伸ばすと、指先に止まる。どうやら一緒に行きたいらしい。
必要なものだけを私でも持っていけるトランクに詰めた。そして、フェリクス様からいただいた杖とトランクを持って部屋から飛び出した。

フェリクス様の宮を出ようと、廊下を走り、階段を駆け下りる。もう夜だから、誰もいない。
静かな階段を降りて、一階の玄関ホールにたどり着くと話声が聞こえた。

「ぴゅ、ぴゅっ」
「ダメよ。静かにしててね」

フェレスベルグの子供の嘴に指を立ててお願いをすると、微かに声が聞こえる。柱の陰から覗くと、フェリクス様がまた女性といる。

(……今のうちに早く逃げよう……会う必要はないわ)

そのまま、踵を返して静かに外に出た。いつの間にか雪が降っている。
自分から外に出たのは、生まれて初めてだった。冷たい雪降る中で立ち止まり、天を仰ぐように自由を感じる。

「街はどこかしら?」
「ぴゅ、ぴゅうん」
「あっち?」

フェレスベルグの子供が向けた視線の先に街があると信じて歩き始めた。それなのに、フェレスベルグの子供が慌てて外套のフードをついばむ。

「違うの?」
「ぴゅうん!!」
「全然わからないわ。でも、真っ直ぐに歩けばどこかにつくでしょう」

落ち着きのないフェレスベルグの子供を連れて進んでいると、急に心がざわついた。

(……リーネ!!)

「……今のは……あなたじゃないわよね?」
「ぴゅうっ!!」
「ということは……」

フェリクス様だ。彼が近くに来ている。フェレスベルグの子供も、フェリクス様に気付いているんだ。止めようとしたのは、フェリクス様が追ってきているから……
彼を想うと胸が痛い。でも……

「急いで逃げるわよ!! 向こうからフェリクス様は来ているのね!? なら、こっちは大丈夫なのね!!」

私の行き先を止めようとしていた方角に逃げれば、フェリクス様が追って来ている方角とは反対のはず!

「ぴゅ、ぴゅうううう!!」
「偉いわ! こっちならフェリクス様がいないのね!!」

フェレスベルグの子供が、必死で首を左右に振る。この子がフェリクス様探知機のようになっている。そして、騒ぐ。青ざめて止めているようにも見えるが、私からすれば、その方角にフェリクス様がいるのだから逃げる道に迷わず行ける。

雪道を足を取られながらも走っていた。フェレスベルグの子供は、必死でフードをつまんで止めるが、走る私にそのまま連れていかれている。

「リーネ!!」

やって来た! 追いつかれてしまう! フェリクス様があっという間に距離を詰めてきている。

「……フェリクス様、ごめんなさい!!」

走りながら謝り、少しだけ後ろを振り向き、杖を突き出した。彼を足止めすることだけを考えて勢いのままに魔法を放つと炎が一直線に飛び出していった。

「ぴゅうううう!?」
「今のうちよ!!」

目を丸くして驚くフェレスベルグの子供にそう叫ぶと、炎がパキパキと音を立てて凍っていく。そして、私の進行方向に氷の壁がそそり立ち、「キャッ」と微かな悲鳴がでる。

「う、うそ……炎が一瞬で凍るなんて……」
「リーネ!!」
「フェ、フェリクス様……」

物凄く怒っている顔だった。恐ろしい。でも……

「ま、負けません!」

杖を構えて、魔力を込める。すると、杖の魔水晶が淡く光る。

「何をしているんだ! 逃げるとはどういうことだ!!」
「じゃ、邪魔しないでください!」
「なんだと!」

うぅ、怖い。本当に怖い。杖を持っている手が微かに震える。

「リーネ!」

大きな声で私の名前を呼ばれて、びくりと身体が強張る。次の発言が怖くて、目をギュッと瞑ってしまっていた。その杖を握っている腕が掴まれた。







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