27 / 36
第二章 ユニコーン
怯えるフェレスベルグの子供
しおりを挟む
朝食のあとは、フェリクス様と庭を散策している。フェレスベルグの子供も一緒だ。
「ぴゅぅっ!!」
フェレスベルグの子供が落ち着きなく騒いでいる。
「落ち着かんな……昨夜から、妙な気配がするし……」
「私もです……」
ディティーリア国の城に着いてから、ずっと誰かに呼ばれている気がする。それは、私の心の声と通じているフェリクス様も感じていた。それが気になるようで、フェリクス様は城や庭を散策と言って私とあちこち歩いている。
「あの建物はなんだ?」
騒いでいるフェレスベルグの子供の視線の先には、庭から見える大きな建物に向っている。その建物をフェリクス様が不思議がって聞いてきた。
「あれは奉殿です」
「何か祀っているのか?」
「よくわかりません。年に一度か二度ほど連れていかれているだけでして……中には植物がたくさんあるんですよ」
奉殿の中の様子を話すと、何のために? とフェリクス様が不思議がるけど、肝心なところはわからない。でも、私が軟禁されていた小さな屋敷もあの奉殿の側だった。
「フェリクス様。そろそろ会談の時間ですので……」
「もうそんな時間か?」
フェレスベルグの子供を手のひらに乗せていると、ヴァルト様が声をかけに来る。
フェリクス様は、名残惜しそうに私の額に口付けをする。
「ここでも、仲の良いフリですか?」
「リーネを守るのに役に立つぞ? 俺の庇護下にいればディティーリア国は手を出せないだろう」
そういうものかなぁと思いながら、手を振る彼を見送った。
「ぴゅぴゅぅっ!」
「どうしたの?」
フェリクス様がいなくなると、フェレスベルグの子供が怯えたように私の肩に乗り身を寄せてくる。
絶対におかしい。こんなに怯える理由がわからなくて、フェレスベルグの子供を抱いて部屋に戻るけど、それでも怯えたまま羽が震えている。それは午後になっても変わらなかった。
「アリエッタ。フェレスベルグの子供はどうしたのでしょうか?」
「なにか怖いものでもありますかね?」
抱いたまま震える身体を撫でると、その瞬間に外から雷鳴がとどろいた。
「今のは何……?」
「フィリ―ネ様。おかしいですよ。こんな晴れた天気なのに雷が落ちるなんて……」
アリエッタは、いつものメイド服と違い騎士服で腰の剣に手を添えた。部屋の外を軽快しながら扉を開けると、護衛たちも緊張感で周りを軽快している。
「何か異常は?」
「今のところは何も」
アリエッタがこの部屋を警護している騎士たちに聞いている。
窓から外を見ると、奉殿のほうに雷雲が立ち込めている。そして、もう一度雷が落ちた。
「どうして……あんなところに避雷針なんかなかったわ。午前中は庭を散策していたのに、こんなに天気が変わるなんてありえない……」
困惑している間にも、アリエッタは「フィリ―ネ様には、誰も近づけないように!」と指示を出している。
「フィリ―ネ様! 窓から離れてください! 城中が騒ぎ出しました。フェリクス様がお帰りになるまで……どうなさったのです!?」
奉殿から目を離さない私にアリエッタが聞いてくる。
「アリエッタ……あそこに誰かいるのよ。ずっと呼んでいた人かも……」
「何も声など聞こえませんが……」
「でも、私を呼んでいるのよ。すごく怒っているわ」
わかる。言葉ははっきりと聞こえないけど、怒りのまま私を呼んでいる。
「行かないと……」
奉殿は、私がお父様に年に一、二度連れていかれたところだ。植物がたくさんの植えられた部屋の中央には御簾があり、その前で一人で祈れと言われていた。
でも、何も変化はなく、その度にお父様はお前じゃなかった。生むんじゃなかったと憎らしく言われていた。それが子供心に傷ついたことを憶えている。
だから、あの奉殿にいくことが嫌いだった。でも、私がお父様に会えるのはそんなときだけ。
いつしか奉殿は、私からすれば恐怖の場所になっていた。
「フィリ―ネ様!? どこに行かれるのです!?」
アリエッタの止める声にハッとした。気がつけば窓の先に進もうとしていたのだ。
「アリエッタ……怖い。あそこは嫌なの」
身体を張って止めてくれたアリエッタにしがみついた。でも、心細い。
「フェリクス様は……?」
「すぐにお戻りになりますよ。それまで気をしっかりと持ってくださいね」
「はい。頑張ります」
アリエッタにしがみついた手が震えている。その時に廊下がさらに騒がしくなっていた。
「ぴゅぅっ!!」
フェレスベルグの子供が落ち着きなく騒いでいる。
「落ち着かんな……昨夜から、妙な気配がするし……」
「私もです……」
ディティーリア国の城に着いてから、ずっと誰かに呼ばれている気がする。それは、私の心の声と通じているフェリクス様も感じていた。それが気になるようで、フェリクス様は城や庭を散策と言って私とあちこち歩いている。
「あの建物はなんだ?」
騒いでいるフェレスベルグの子供の視線の先には、庭から見える大きな建物に向っている。その建物をフェリクス様が不思議がって聞いてきた。
「あれは奉殿です」
「何か祀っているのか?」
「よくわかりません。年に一度か二度ほど連れていかれているだけでして……中には植物がたくさんあるんですよ」
奉殿の中の様子を話すと、何のために? とフェリクス様が不思議がるけど、肝心なところはわからない。でも、私が軟禁されていた小さな屋敷もあの奉殿の側だった。
「フェリクス様。そろそろ会談の時間ですので……」
「もうそんな時間か?」
フェレスベルグの子供を手のひらに乗せていると、ヴァルト様が声をかけに来る。
フェリクス様は、名残惜しそうに私の額に口付けをする。
「ここでも、仲の良いフリですか?」
「リーネを守るのに役に立つぞ? 俺の庇護下にいればディティーリア国は手を出せないだろう」
そういうものかなぁと思いながら、手を振る彼を見送った。
「ぴゅぴゅぅっ!」
「どうしたの?」
フェリクス様がいなくなると、フェレスベルグの子供が怯えたように私の肩に乗り身を寄せてくる。
絶対におかしい。こんなに怯える理由がわからなくて、フェレスベルグの子供を抱いて部屋に戻るけど、それでも怯えたまま羽が震えている。それは午後になっても変わらなかった。
「アリエッタ。フェレスベルグの子供はどうしたのでしょうか?」
「なにか怖いものでもありますかね?」
抱いたまま震える身体を撫でると、その瞬間に外から雷鳴がとどろいた。
「今のは何……?」
「フィリ―ネ様。おかしいですよ。こんな晴れた天気なのに雷が落ちるなんて……」
アリエッタは、いつものメイド服と違い騎士服で腰の剣に手を添えた。部屋の外を軽快しながら扉を開けると、護衛たちも緊張感で周りを軽快している。
「何か異常は?」
「今のところは何も」
アリエッタがこの部屋を警護している騎士たちに聞いている。
窓から外を見ると、奉殿のほうに雷雲が立ち込めている。そして、もう一度雷が落ちた。
「どうして……あんなところに避雷針なんかなかったわ。午前中は庭を散策していたのに、こんなに天気が変わるなんてありえない……」
困惑している間にも、アリエッタは「フィリ―ネ様には、誰も近づけないように!」と指示を出している。
「フィリ―ネ様! 窓から離れてください! 城中が騒ぎ出しました。フェリクス様がお帰りになるまで……どうなさったのです!?」
奉殿から目を離さない私にアリエッタが聞いてくる。
「アリエッタ……あそこに誰かいるのよ。ずっと呼んでいた人かも……」
「何も声など聞こえませんが……」
「でも、私を呼んでいるのよ。すごく怒っているわ」
わかる。言葉ははっきりと聞こえないけど、怒りのまま私を呼んでいる。
「行かないと……」
奉殿は、私がお父様に年に一、二度連れていかれたところだ。植物がたくさんの植えられた部屋の中央には御簾があり、その前で一人で祈れと言われていた。
でも、何も変化はなく、その度にお父様はお前じゃなかった。生むんじゃなかったと憎らしく言われていた。それが子供心に傷ついたことを憶えている。
だから、あの奉殿にいくことが嫌いだった。でも、私がお父様に会えるのはそんなときだけ。
いつしか奉殿は、私からすれば恐怖の場所になっていた。
「フィリ―ネ様!? どこに行かれるのです!?」
アリエッタの止める声にハッとした。気がつけば窓の先に進もうとしていたのだ。
「アリエッタ……怖い。あそこは嫌なの」
身体を張って止めてくれたアリエッタにしがみついた。でも、心細い。
「フェリクス様は……?」
「すぐにお戻りになりますよ。それまで気をしっかりと持ってくださいね」
「はい。頑張ります」
アリエッタにしがみついた手が震えている。その時に廊下がさらに騒がしくなっていた。
26
あなたにおすすめの小説
神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!
カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。
前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。
全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!
夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~
狭山ひびき
恋愛
もう耐えられない!
隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。
わたし、もう王妃やめる!
政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。
離婚できないなら人間をやめるわ!
王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。
これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ!
フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。
よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。
「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」
やめてえ!そんなところ撫でないで~!
夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――
記憶喪失の私はギルマス(強面)に拾われました【バレンタインSS投下】
かのこkanoko
恋愛
記憶喪失の私が強面のギルドマスターに拾われました。
名前も年齢も住んでた町も覚えてません。
ただ、ギルマスは何だか私のストライクゾーンな気がするんですが。
プロット無しで始める異世界ゆるゆるラブコメになる予定の話です。
小説家になろう様にも公開してます。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
前世では地味なOLだった私が、異世界転生したので今度こそ恋愛して結婚して見せます
ヤオサカ
恋愛
この物語は完結しました。
異世界の伯爵令嬢として生まれたフィオーレ・アメリア。美しい容姿と温かな家族に恵まれ、何不自由なく過ごしていた。しかし、十歳のある日——彼女は突然、前世の記憶を取り戻す。
「私……交通事故で亡くなったはず……。」
前世では地味な容姿と控えめな性格のため、人付き合いを苦手とし、恋愛を経験することなく人生を終えた。しかし、今世では違う。ここでは幸せな人生を歩むために、彼女は決意する。
幼い頃から勉学に励み、運動にも力を入れるフィオーレ。社交界デビューを目指し、誰からも称賛される女性へと成長していく。そして迎えた初めての舞踏会——。
煌めく広間の中、彼女は一人の男に視線を奪われる。
漆黒の短髪、深いネイビーの瞳。凛とした立ち姿と鋭い眼差し——騎士団長、レオナード・ヴェルシウス。
その瞬間、世界が静止したように思えた。
彼の瞳もまた、フィオーレを捉えて離さない。
まるで、お互いが何かに気付いたかのように——。
これは運命なのか、それとも偶然か。
孤独な前世とは違い、今度こそ本当の愛を掴むことができるのか。
騎士団長との恋、社交界での人間関係、そして自ら切り開く未来——フィオーレの物語が、今始まる。
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
【完結】愛猫ともふもふ異世界で愛玩される
綾雅(りょうが)今年は7冊!
ファンタジー
状況不明のまま、見知らぬ草原へ放り出された私。幸いにして可愛い三匹の愛猫は無事だった。動物病院へ向かったはずなのに? そんな疑問を抱えながら、見つけた人影は二本足の熊で……。
食われる?! 固まった私に、熊は流暢な日本語で話しかけてきた。
「あなた……毛皮をどうしたの?」
「そういうあなたこそ、熊なのに立ってるじゃない」
思わず切り返した私は、彼女に気に入られたらしい。熊に保護され、狼と知り合い、豹に惚れられる。異世界転生は理解したけど、私以外が全部動物の世界だなんて……!?
もふもふしまくりの異世界で、非力な私は愛玩動物のように愛されて幸せになります。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/09/21……完結
2023/07/17……タイトル変更
2023/07/16……小説家になろう 転生/転移 ファンタジー日間 43位
2023/07/15……アルファポリス HOT女性向け 59位
2023/07/15……エブリスタ トレンド1位
2023/07/14……連載開始
【完結】微笑みを絶やさない王太子殿下の意外な心の声
miniko
恋愛
王太子の婚約者であるアンジェリクは、ある日、彼の乳兄弟から怪しげな魔道具のペンダントを渡される。
若干の疑念を持ちつつも「婚約者との絆が深まる道具だ」と言われて興味が湧いてしまう。
それを持ったまま夜会に出席すると、いつも穏やかに微笑む王太子の意外な心の声が、頭の中に直接聞こえてきて・・・。
※本作は『氷の仮面を付けた婚約者と王太子の話』の続編となります。
本作のみでもお楽しみ頂ける仕様となっておりますが、どちらも短いお話ですので、本編の方もお読み頂けると嬉しいです。
※4話でサクッと完結します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる