勇者の血を継ぐ者

エコマスク

文字の大きさ
206 / 519

【103.5話】 突入のリリア ※ちょっと前の話し※

しおりを挟む
リリアは立て籠もり犯相手に突入を試みようとしていた。


リリアモデルの鎧を着て散歩中だったリリア。
商店兼家の立ち並ぶ街の一画にちょっとした人だかりが出来ている。
「コーヒーの試飲かチーズの試食かな?」リリアは人だかりに突入した。
ところが、人々の話しだと試食どころか金融商のドローガの事務所に、立て籠もり犯が親子を人質に家に立て籠もっているというのだ。
「また、ドローガさんところが… リリア何とかしてやってくれよ」
野次馬の中からリリアを見つけた商人のブラキャットが頼んできた。
「また?… 前にもこんな事件あったの?初耳ねぇ… 理不尽な事でもしたんじゃないの?」リリアが答える。
「のん気な!… 結構大変なんだよ、何とかしてやってくれよ」ブラキャットはオロオロしている。
「何とかったって… 個人宅なら冒険者じゃなくて衛兵の仕事になるじゃない。あたしが入ったら住居侵入になっちゃうはずよ」
「衛兵?… いや、リリアは勇者だろ。入れるよ。物語の勇者もよく勝手に民家に入って色んな物持ち去っても咎められないだろう」
「…… 確かに… いや、あれは物語でしょ?… いいのかなぁ? 国民の命と財産を守る仕事だからいいのか… 立て籠もりは一人でしょ?要求は?」リリアはその気になってきた。ヘボ勇者の血が騒ぐ。
「一人だよ、要求なんか知らないよ。とにかく助けてやってくれ」ブラキャットが言う。
「なるほど… わかったわ、リリアはこう見えてもこの前軍の学校で突撃術をマスターしてきたのよ、やってみるわ!」

ローゼンさんに頼まれて形だけ卒業した下士官学校だ。形だけということで座学は居眠り、夜は寮でお菓子と大貧民三昧だったが体動かすの大好きリリアは実技を真面目に受けたのよ。スナイピング学で潜入と部隊学で突入制圧を学んだわ、今こそ税金を払った国民にお返しする時よ!
まぁ、制圧はオーク達に役立たずと笑われていたけど、それは内緒。一般人よりは出来るはず。

「皆、下がって!危ないから下がって!」
群衆に呼びかけて野次馬を下がらせるリリア。
“街中で群衆整理、ちょっとかっこいいかも!勇者っぽいかも!”
「なんだおめぇ!」「女!何様だ!」「偉そうに、引っ込んでろ!」野次が飛んで来る。
“何だなんだ、おまえらのために言ってやってんだ!”
「勇者リリアよ!全員下がりなさい!あたし、ルーダリア国王から公認された勇者だけど国から給料出てないのよ。だけど税金を払っているあなた達の安全を確保する義務があるの。無料奉仕で危険な立て籠もり犯と対峙するの!さぁ、皆下がって下がって!」
「なんだおめぇ!」「女!何様だ!」「偉そうに、引っ込んでろ!」野次は変わらない…
犯人制圧はどうか知らんが、野次馬は制圧失敗…

“無料奉仕させられるこっちの気も知らないで、勝手にしやがれ!ケガして泣いても知らないぞ!”

騒ぎを聞きつけて数名の巡回兵がやってきた。
「話は聞きました、ここの主人と知り合いですか?」巡回兵がリリアに聞く。
「知り合いっていうか… 顔見知りよ… あたしに任せて、何とかするから」リリアは目に力を込めていう。野次馬共めリリアをバカにしやがって、ここで巡回兵に追い払われたら面目丸潰れだ。絶対自分でやってやるぞ!
「失礼ですがあなたは?」質問されるリリア。誰もリリアが何者か知らない。
「あたし、勇者リリア… 失礼ねぇ、自称じゃないわよ。国王から公認された国の勇者よ! 冒険者のギルド証?… ほら、見たら?でもそこには国の勇者かどうかはかかれてないわよ… もう!!冒険者番号控えて後で調べたらいいでしょ!! あたしもう突入するから!… 確認がとれるまではダメ?… 何よ、国は勇者を無給で働かせて邪魔ばっかりじゃない!」

建物内でも事件だろうが、建物外でも事件になりかけている…

「まぁ、知り合いなら問題無いんじゃないか?」巡回兵の一人が言い出した。
「… それもそうか… なら君に任せるよ」
「勇者リリアがやるわよ、勇者だもの、個人宅に入っても大丈夫な勇者だもの。群衆整理をお願いね」リリアは強気。絶対に街中で功績をあげてみせるぞ!
兵士達が整理しだすと群衆は下がり出した。リリアの時と全然態度が違う…
野次馬の中に突入して一人ひとり制圧してやりたいリリアだが我慢…
今に見てろよ!こっちは軍隊仕込みの突入だ!


事務所の前に立つ。商店ではないので扉と窓がついているのみ。1階が事務所、2階が住居のようだ。
中の様子を窺うがカーテンがかかり全然中が見えない。耳を澄ますとわずかに怒鳴り声、子供の泣き声か聞こえる。早期解決をしないと。
ドアの前で武器を構えて一呼吸、ドアを蹴破って突入開始だ。
深呼吸をするとニスの匂いがした。
「せいや!」“ドン”と勢いよく扉を蹴るリリア。
「ぎみゃ!」ドアに押し返され、拍子で玄関ステップから転げ落ちて頭と腰を強打!
すげぇ痛いぞ!すげぇ恥ずかしいぞ!

“痛い!頭と腰を打って足首も捻った… どれも痛いが一番は群衆の目が痛過ぎる”
慌てず騒がず冷静に立ち上がる。
“いたぁぃ!足首がズキズキする”仕方がないので努めて自然にポーションを一口すする。こんな時に限って無駄に高級なポーションしか持っていない。

「さすが金融店のドアね!硬いわ!でもこれでだいぶ壊れているはずよ!」
大きく説明調の独り言リリア。
「えい!えい!この!やろ!」何度蹴っ飛ばしても体当たりしても全然壊れそうにない。
“まさか開いてる?”
さりげなくノブに手をかけて押し引きしてみたがやはりカギはかかっているらしい。
「リリア、ドローガさんは大抵ちゃんと鍵してるよ」ブラキャットが余計なことを言う。っというか何をしたかバレバレ。

「…… ドアの建付けは完璧ね!なるべく手荒な事はしたくなかったけど窓からいくしかないわね」
大きな独り言。
「どこの建設ギルドが立てたのかしら!いい仕事しているわね!」
自分のせいではないのだ相手を褒めて持ち上げる。

ガラスなら確実。破って颯爽と飛び込んでやるわ。敏捷性には自信あるのよ。
「せぃの… っは!」
助走とともに窓に飛び込む。“バッシャーン!”ガラスが砕けた!
「きゅ!!」
リリアはまたもや変な声をだして路上にひっくり返った。
ガラスは破れたが、格子と枠に阻まれた。
「ぃぃぃ… ぎぃぃ…」
ガラスを破って受け身を取ることだけイメージしていたリリアは大ダメージ!
突き指、肩も捻った、ガラスで出血している。格子にぶち当たり額が割れて流血してくる。
野次馬が痛い目みて泣く前にリリアが泣きだしそうな思い。
「あの、大丈夫ですか?変わりましょうか?」心配して声をかける巡回兵。
群衆は完全にしらけ切っている。
リリアは立ち上がると血をしたたせながら、声に力を込めて言う。
「大丈夫!あたしやるの!こんなの想定内よ!」
ポーションを飲もうとしたら、群衆の誰かが気を利かせたのか治癒魔法がかかった。
ありがたいが、今のリリアには傷口に塩を塗られる思い。


リリアは改めて窓に近づくと窓のカギを外してオズオズと窓をよじ登る。
脳震盪気味リリア。


1話使ってようやく突入のリリア…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...