勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【220.5話】 リリアの使い魔 ※少し前の話し※

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リリアは机に向かってウトウトしている。
ここはギルド・ルーダの風のリリアの部屋。もうすでに夜中を過ぎているだろうか?解放された窓から秋の風が流れ込み心地よい。
路上でも一階のバーでもまだ人の声がしている。

“…!”
リリアは何かの気配に気がついて目を覚ました。
「…むぅ…」ちょっと寝ぼける

が、次の瞬間ランプに火を灯すと準備した物をすばやく構えた。
「来たわね!姿を見せなさい!この時を待っていたのよ!今日という今日は覚悟よ!」リリアは力強く呟く。


シルキーがドラキュラ伯爵の家に行って数日経ったある日、リリアが気づくと部屋の机に手紙が置いてあった。
“My Dearest Lilia”と書かれていて差出人に”S”と書かれてある。
手紙を開けて読むとシルキーからであった。コトロ達に聞いても配達された覚えはないという。
どうやら直接届けられた手紙の様だった。
「たぶん使い魔が運んできたのね」リリアは呟く。
リリアは返信の手紙をしたためると宛名を書いて自分の机の上に置いた。
「よし、これで文通できるわね」リリアは満足げに頷く。
それから極力窓を開けて過ごしていたが仕事で出かけるのでリリアは自分の手紙を窓に挟んでおいた。

仕事から戻って来るとシルキーからの手紙が窓に挟んであった。
が、リリアの手紙はそのまま窓に挟まっていた。

「使い魔に手紙を渡す?また急に何ですか?使い魔によりますが、精神エネルギーが無い者は命令に従うのみですから命令で何かを配達しても何かを持って帰ってくれたりはしません。その場合は予め術者が持ち帰る物を指定するか、新たに依頼する側がモデレーター指定をされているか、魔力による命令を書き換える力が無ければなりませんよ」コトロに聞いたら説明が返ってきた。
「なるほどねぇ… やっぱりねぇ… シルキーから手紙が来たけど、返信できなかったから聞いてみたのよ」リリアが言う。
「シルキーから手紙ですか?よかったです、元気ならなによりです。切手代なんて大した値段でもないですし、住所なら役所で調べがつきますよ。ドラキュラ伯爵の館なら住所なくてもつきそうです」コトロが言う。
「コトロはロマンが無いわね。使い魔で文通するのが乙女心をくすぐるのよ。せっかく使い魔がリリアのところに手紙を運んでくれるのにリリアからは郵送だなんて夢がないじゃない」リリアが言う。
「… はぁ、まぁ、それなら好きにしてください」コトロは少しムッとしているようだ。
吟遊詩人としてロマンチストを否定されプライドが傷ついたようだ。


それから十日程して、リリアが朝起きたらシルキーからの手紙が机に置いてありリリアの手紙は放置プレーにされていた。

「また手紙が放置だったのですか?それはもう下位の使い魔かクリーチャーですね。単純に命令に従うだけです。単純作業なら下手に高等な使い魔より単純に命に従う使い魔の方が安全だったりするのですよ。手紙を届けたら消滅してしまうクリーチャーもありますし、せめて最初の一回は手紙の往復を希望して郵送したらいいですよ」コトロがリリアに言う。
「コトロはロマンが無いわね。ノコノコと郵便を出しにいくより窓越しに手紙を託したいの、飛び去る妖精を窓から見送りたいの。でもスクロールをいちいち買ったらド高いじゃない、安く手間いらずで心を通わせたいの、ロマンよロ・マ・ン」リリアが言う。
「… はぁ、まぁ… 意味がさっぱりわかりませんが、がんばってください。それからアドバイスを聞かないならアドバイスを求めないでください…」コトロはグラスを磨きながら言う。


リリアは虫取り網を用意して毎晩張り込むようにした。
前回の手紙から十日程経っただろうか?そろそろ次の手紙が来ても良い頃…
「読書の秋、食欲の秋、爆睡の秋ね」
リリアが机で夜食を食べ、読書をしながら… ちゃんと眠気に襲われ有言実行になった頃、その瞬間はやってきた。
それが今夜。

リリアが気配に気がつくと同時に何かが窓から飛び込んで来た。
ランプに照らされて… コウモリのようだ、手紙を携えている。
「来たわね!待ってたのよ!ここで会ったが百年目!おかげでリリアはここ数日、いや百年分寝不足よ!待ちなさい!神妙に縛につきなさい!」
リリアはサッと窓をしめるとコウモリに向かって虫取り網を振り回す。
「ちょっ… この… 大人しく…しなさいって…」
ドッテンバッタン大騒ぎ。

で、何とか捕まえた。
で、ドア越しにコトロに怒られる。
「リリア、ちょっと男を連れ込んでいるのですか?バーに地響きがしていますよ。するなとは言いません、ちょっとわきまえてしてください」
「失礼ね!男なんていませんよぉ!リリア一人だよ!… え?一人でこの騒ぎ?…欲求不満にも程がある?… 違うって!今、コウモリを捕まえてたの!」
コトロはどうあってもリリアが騒いでいる原因は大人の事情にしたいようだ。どっちが欲求不満だ!
「うるさいよ!放っておいてよ!コトロの方こそ欲求不満だよ!たまには遊んできなよ」リリアも言い返す。

とにかくリリアがコウモリをそっと網から出して手紙を受け取る。
で、手紙を渡すのだが…
全然受け取ってくれない。命令が絶対のようだ。融通が利かない。しきりに帰りたがっている。
「なんだよ… この…この… 手紙持ってきたのに持って帰らないのかよ…」
どうやってもリリアの手紙を掴んでくれない。魔力ゼロの自分が恨めしい。


「これでなんとか届きそうだね」
リリアは夜の闇に向かって窓からコウモリを空に放った。
どうにもならないので手紙はコウモリの胴体に糊でベタ付けしてある。
コウモリは迷惑そうに飛びながら夜空に溶け込んでいった…


それから数日経ったある朝、シルキーから手紙が届いていた。
要点だけ書きだす
“手紙ありがとう、リリア。今後はリリアから手紙がある時は持ち帰るように使い魔に命令しておくわ。それからリリアを所有者としてアイテムを渡しておきます。魔法石を消費するけど私に使い魔を伝令させる事ができるアイテム”
手紙に書かれてあった。

リリアが封筒を反すと琥珀色の指輪が掌に落ちて来た。
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