勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【235話】 リリアは国家反逆者

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ルーダリア地方も新年を迎え、歴703年となった。
歴で換算すればリリアは勇者三年目ということになる。

リリアは年末、ミニミミックのお仕事を最後に年末から年明けにかけノンビリ過ごした。
今回の年末はコトロもバーを数日閉めて里帰り、ネーコとラビもゆっくりできたようだ。
リリアは年始からいつもの馬車護衛を中心に周遊しながらお仕事を開始していた。


「ねぇ、コトロ、リリアはどうしもやってみたいの、挑戦者リリア。馬車を買って活動したいの」リリアはバーの買い物帰り、コトロ達に相談する。
「リリたん、馬車を所有する事まだ諦めてないニャン?」
「するなら勇者は引退して冒険者として荷物運んだら良いピョン」
ネーコとラビが言う。
「正直… リリアが思っている程甘くないですが… しかし、確かに一年、二年赤字経営しても余裕があるくらい貯金はありますね」コトロが呟く。
自分の馬車を所有することを諦めないリリアはコトロをリアルゴールドの換金所に連れていって自分の貯金額を見せたのだ。
ランカシム砦の報奨金があり、リアルゴールドとの専属契約もあり、リリア自身もしっかり仕事をこなし、ちゃっかりしたところもある。勇者活動で自腹を切る事もあるが、王国から依頼される仕事は経費が落とされている。
それにリリアは女神からもらった金の弓と銀の弓、金のホウキと銀のホウキのセットを換金している。これがデカい!
「正直驚きました…リリアの貯金額がこんなになっているとは… 金のホウキとか銀の弓とか、悪いキノコでも拾い食いして幻覚を見ただけだと思っていましたが…」コトロが数字を見て驚く。
「リリたん、飛んでもないこと言い出す事が多いから、それかと思ったニャン」
「ラビはリリたんの事、少しは信じる努力をしていたピョン。そんなには驚いていないピョン」
皆口々に言いたいことを言っている。
リリアの信用も低いが、それほど大きな数字でもある。

「正直、馬車があれば仕事を貰えるわけではないので甘く考えられませんが、本当に一年、二年、赤字で耐えられるなら、その間に信用を取り付けてなんとかやっていけるのかも知れません」コトロが言う。
「余計な事しないで引退してバーガールにゃん」
「とりあえず危ない勇者仕事は引退ピョン」
「引退なんて、いやよ。仕事で稼ぎながらもっとあっちこっち行きたいの。今年もリアルゴールドは契約してくれるみたいだよ。リリアモデルはそろそろ下火だから、何か次の商品出すって。まぁ、生活は何とかなるよ」リリア。
「本気に考えても良さそうですが… 公私混同していそうなところが気になりますね。そもそも勇者は副業を許されているのでしょうか?」コトロが心配する。
「大丈夫だよ、コトロに言われてリリアなりにビジネスプランも立てたの。まだ書き出してないけど説明してあげる。一年目、リアルゴールド系列から仕事もらって赤字に耐えるの。一年目は我慢の年ね。二年目、リリアちゃんががんばってブレークイーブンまでもっていくの、結果が芽を出す時期ね。三年目、二年間の苦労の甲斐があって大ブレーク!リアルゴールドを下剋上するの!ど?良いプランでしょ?」リリアがドヤ顔している。まるでもう大儲けしたみたいな顔。
「… やっぱり、馬車の所有はやめておきましょう、どれだけ資金があってもリリアには無理な気がしてきました」コトロが肩をすくめる。
「なぁ…やらせてやれよ… とにかく勇者だけでも引退させようぜ」ダカットがヒソヒソとコトロに耳打ちする。


リリア達四人で買い物から“ルーダの風“に戻って来たら、表に馬車が停まっている。
「あれは、王国の馬車ではないですか?」コトロが真っ先に見つけた。
「ウチのバーの前って駐禁なのにお役人ってやりたい放題やるよねぇ。でも、リリアのお迎えなら感心ね、最初は馬車で迎えに来たくせにそれ以降は自分で王宮まで行ってからね、酷いよね、勇者を軽んじてるよねって思ってたけど、ちょっと見直したわね。まぁ、勇者になって三年目、認められてきたってことだよね、これなら今年からお給料でそうだね」リリアはニコニコしている。
「そうニャン?あんまり良い感じしないニャン」
「何かそんな雰囲気じゃなく見えるピョン」
ネーコとラビが停まっている馬車と立っている兵士を見て訝しがる。
「何言ってるのよ、ドラキュラ伯爵とかデュラハンとか大仕事したから今年からは秘書付きの一等勇者に上がったんだよ!リリアちゃんがばったものねぇ」リリアはあっけらかんとしている。
「ネーコ達は独特な感がありますから… まぁ、仕事で呼ばれるにせよ何にせよ… 正直関わりたくないです、リリアの気が知れないです」コトロが小さく呟く。

リリア達が馬車まできた。リリアが兵士に声をかける。
「兵隊さん、お待たせ。勇者リリアをお探し?勇者リリアはあたしですよ。もうすぐ評議会だし、去年は数々のミッションインポッシブルなクエストを見事やり遂げたし、お城に呼ばれて勲章授与式でもありますか?うっふっふ」リリアが気軽に手をふった。
「貴様が勇者リリアか、スパイ容疑と国家転覆罪の容疑で国王から令状が出ている。手荒なことはしたくない、さぁ、馬車に乗られよ」マントを着け、角の付いた兜の兵士が何やら紙を見せている。
「酸っぱいヨーグルトー? え?王様でしょ?馬車でしょ?クエストでしょ? え?えぇ? あれぇ?」
リリアは問答無用で馬車に押し込まれ、発車していってしまった。
コトロ達は呆然と見送る…

「何あれ、何か難しい事言ってたけど、やばそうだニャン」ネーコ。
「こっぱてんてきざいって何ピョン?リリたん犯罪者ピョン?」ラビ。
「… スパイ容疑、国家転覆罪… どちらも王国の存続を揺るがす大罪です… 公開処刑か子豚に変えられて闘技場で魔物の餌です…」コトロも唖然としている。
「リリたん、やばいニャン、それやばいやつニャン」
ネーコとラビがコトロの呟きに反応して青ざめる。
「… いや、何かの間違いですよ… リリアは何の能力も持っていない、弓が上手いだけの村娘ですよ… 大して勇者らしいことは一切できませんが、国家転覆罪なんて… そんな大罪を犯す能力もありませんよ…」


三人は呆然としばらく立っていた
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