陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㉒無自覚のレイラ嬢(クロード)

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「マティア様、少しお話できませんか?」

レイラ嬢が話しかけるも反応が無い。

「・・・何故レイラ様が?」 

しばらくしてから声が帰ってくる。

「扉を開けて頂けないかしら?」

レイラ嬢がさらに続ける。

「私が嘘をついていると言いたいの?本当に陛下はここに居たのよ。」

マティア嬢がイライラしたように扉を開けて出て来た。

「皇帝陛下!」

俺がいるのを見て慌てるマティア嬢。居ると思っていなかったのか・・・

「マティア嬢、俺にも心当たりはないんだが?」

「陛下、わたくしを抱いてくださったのは嘘だと仰るの?」

そう言って涙を浮かべるマティア嬢。
何を言ってるんだ、コイツは・・・

俺が言い返そうとした時、レイラ嬢が口を開く。

「マティア様は何か勘違いをされていると思いますわ。」

「なんでそんなことが言えるのよ!」

「だって、昨夜陛下はずっとわたくしと一緒に居ましたもの。」

「え?」

レイラ嬢の言葉に、マティア嬢が絶句する。
俺がここを出た後、レイラ嬢のところに行ったと思わなかったようだな。

「昨夜は朝までずっとわたくしと一緒でしたもの。何かの思い違いではないかしら?」

レイラ嬢・・・君はきっとありのままを話してるつもりなのだろうけど、周りが聞いたらそれは俺と朝まで愛しあっていたと捉えられるぞ・・・
現に、侍女二人が顔を赤らめて俺を見ている。
うん、これは面白いから乗っておこう。

「レイラの可愛い姿を眺めていたのに、俺をこんな茶番に呼び出して、どういう事だ?」

俺もレイラ嬢の言葉に乗ってレイラ嬢を抱き寄せる。

「そんな・・・」

「俺がそんな事で言いくるめられるとでも思ったのか?」

「そちらが嘘をつかれているのでは?私を追い返したいから!」

この期に及んでまだ言い張るか。

「失礼ながら、俺もレイラ嬢と陛下が同じ部屋で朝まで過ごされたのを知っています。」

シドが証言する。

「私も陛下の側仕えとして、昨夜はレイラ様のいらっしゃる離宮で一夜を過しました。朝お支度に呼ばれた時もお二人はご一緒でした。」

続いてライルも話す。

「マティア様、陛下は疲れておいでですので、早く休ませて差し上げたいのですけど、ご自分の行動をよく思い出してくださらないかしら。」

レイラ嬢、その言葉・・・誤解されると思うけど、気がついていないな・・・俺も面白いから乗っておこう。

「レイラもほとんど眠れていないだろう?無茶をさせてしまったから君の身体が心配だ。」

俺はさらに身体を寄せて抱きしめ、レイラ嬢の頬を優しく包むように手を添えて見つめる。

「そうなのですけど・・・わたくしよりも陛下が心配ですわ。」

顔を赤らめて俺の心配をするレイラ嬢。可愛いな。完全に周りが顔を赤らめて見ているのに気がついていない。

「何よそれ!私の前でいちゃつかないで!そうよ、嘘よ!こう言えば、帰されないと思ったのに。」

マティア嬢が俺達のラブラブぶりに置いてきぼりにされて怒り出す。白状したな。

「マティア様、何か理由があったのでしょう?教えてくださらないかしら。」

レイラ嬢が優しく問掛ける。
レイラ嬢は誰に対しても分け隔てなく優しい。

「陛下、レイラ様と仲睦ましいのは分かりました。ですが、私もここに置いてくださいませんか?」

マティア嬢、まだ諦めないのか?

「俺はレイラ嬢以外を娶るつもりは無い。」

俺ははっきりと言う。

「陛下達のお邪魔にはなりません!」

なぜそこまでこだわる?

「ここにいないといけない理由でもありますの?」

レイラ嬢が気を使って聞くがそれには答えない。

「父に・・・」

しばらく待っているとぼそりと話しだす。

「父に、私がいる理由は陛下の元へ嫁ぐためだけだと、もし帰ってきたならもうお前は娘ではないと言われて国を出てきました。ここを追い出されると帰る所はありません。」

「ひどい!」

その言葉にレイラ嬢が反応する。

「私は陛下の元へ嫁ぐこと以外使い道のない娘なんです。」

まあ、国を統べる者の子女に生まれたからには政略結婚は付き物だ。
だが、やり方が気に入らんな。

「さっきも言ったが俺はレイラ嬢以外を妻にするつもりは無い。国へ帰れないのなら違う行き先を紹介しなくも無いが、一度国へ帰ってもう一度話をして来い。それでも居場所がないと言うなら、居場所はいくらでも作ってやれる。但し、仕事場と言う居場所だ。俺の傍に侍ることは許さん。」

俺はそれだけ言うと、レイラ嬢を伴ってその場を離れた。
俺を落とししれようとしたヤツに対して破格の対応だ。俺一人なら追い返すだけで後はどうなろうが知ったことではないが、レイラ嬢の前で邪険にするとレイラ嬢が怒りそうだったのでしょうがない。

正直二度と見たくない顔だ。

それに、これは使えると思ったので恩を売っておくのも悪くないだろう。




「レイラ嬢!やるね!」

離宮へ戻ると、一番に口を開いたのはシドだ。

「え?何がですか?」

レイラ嬢が聞き返す。
うん、レイラ嬢は完全にさっきのやり取りを分かってないな。

「みんなの前で陛下と朝までイチャイチャ宣言したでしょ、俺びっくりしちゃいましたよ!」

「え?」

レイラ嬢はまだ気がついていない。
可愛すぎて見ていて飽きないな。
レイラ嬢の表情をしばらく眺めていると、みるみる顔が赤くなっていく。

やっと気が付いたか。

「ええ??わたくし、そんなつもりじゃ・・・」

レイラ嬢が真っ赤な顔で俺を見る。

「昨夜は眠る陛下の傍に付いていただけよ?」

シドたちの方を見て慌てて言い訳をしている。

「うん、かっこ良かったです。」

シドがレイラ嬢に向かってにっこり笑う。

「レイラ嬢、ありがとう。レイラ嬢のおかげで助かったよ。」

俺はレイラ嬢を抱きしめた。





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