陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㉑疑惑(クロード)

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俺はレイラ嬢と共に応接室で待たせていたアルファスト侯爵の元へと向かった。

「陛下、おはようございます。」

アルファスト侯爵が俺を見ると挨拶をする。

「おはよう。こんな所までなんだ?仕事か?」

俺はライルから予め聞いていたので分かっているが、敢えて知らないフリをする。

「それが・・・陛下、少し陛下とお二人でお話したいのですが・・・」

アルファスト侯爵は俺の横にいるレイラ嬢をチラリと見て気にしながら言う。

「俺はレイラ嬢に隠し事はしない。ここで言え。」

俺の言葉に、アルファスト侯爵は言いにくそうにレイラ嬢を見る。

「わたくし、席を外した方がいいかしら。」

レイラ嬢がそれに気付いて気を使う。

「いいんだよ。レイラ嬢はここに居てくれ。アルファスト侯爵、レイラ嬢には言いにくい事なのか?」

「はい・・・そうなのです。」

アルファスト侯爵、ちょっと可哀想かな。
レイラ嬢に気を使ってくれるのはいい事だ。

「いいから、言ってくれて構わない。」

「はい・・・実は・・・陛下に貞操を奪われたと言っている者がおりまして・・・」

俺の横でレイラ嬢が一瞬固まったのが目に映る。

「は?何を言ってるんだ?」

「陛下、昨晩はこちらに?」

アルファスト侯爵が確認するように問いかけてくる。

「ずっとここに居たが?何処で誰がそんなことを言ってるんだ?」

俺は怒りを露わにしてアルファスト侯爵を見る。
恐らく昨日部屋に居た赤髪の女だろう。

「はい、マティア嬢が陛下の寝室に居まして・・・騒いでいるのです。」

やはりあの女か、昨夜あの後すぐに追い出さなかったのか?
俺も任せて後を見ていない。何があった?

そんな嘘をついても当事者である俺が心当たりないのだから、すぐにバレるだろうに・・・皇帝相手にそんな嘘が通ると思っているのか?皇帝を貶めようとはいい度胸だな。

「とりあえず、来ていただけますか?」

アルファスト侯爵が俺に促すが、あの女にもう一度会うのは吐き気がする。正直行きたくない。

「わたくしもご一緒してもよろしいかしら?」

俺が躊躇していると、レイラ嬢が横から俺を見上げる。

「わたくしは陛下を信じていますわ。」

レイラ嬢はそう言うと、にっこり笑って俺の手をとった。
ついさっきまで繋いでいた手だ。
レイラ嬢の手の温もりに安心する。

「分かった。行こう。」

そうして俺たちはぞろぞろと俺の部屋まで移動することになった。




部屋の前まで来ると、俺が昨日指示を出した衛兵達と、侍女が二人立っていた。
俺が来たのを見て皆が一斉に頭を下げる。

「何があった?昨日あの女を連れ出したんじゃないのか?」

「申し訳ございません。侍女を連れて戻ってきて、部屋へ入ろうとしたのですが、中から鍵を掛けられてしまいまして・・・静かだったのでひょっとしてもう出たのかと思っていたのですが、朝になって騒ぎ出したのです。」

昨夜侍女を呼ぶように言って、走って行った衛兵が答える。

「マティア嬢、聞こえますか?扉を開けてください。」

アルファスト侯爵が扉の前で大きな声で話す。
すると、中から声が帰って来た。

「私を国へ帰さないと約束してくれますか?」

マティア嬢の狙いはそれか?
無理矢理にでも俺の妻になろうというのか?
だが、当事者である俺に心当たりが無いのにそれで通用すると思っているのか?

「その要求は飲めない。陛下にはマティア嬢が仰っているようなお心当たりはありません。」

アルファスト侯爵が強く扉に向かって話す。

「いいえ、陛下は昨夜、私をお抱きになりました。私を陛下のお傍に置いてください。」

「昨夜と言いますと・・・何時頃でしょう?」

レイラ嬢がぼそりと話す。

「陛下が昨夜この部屋に入られた時間は五分も無かったかと・・・」

後ろでライルが呟く。

「陛下、早わざ!」

ライルの言葉にシドが反応するのでとりあえずゲンコツをお見舞いしとく。
シドは頭を押さえて「冗談ですよ!」と反論していた。

「マティア嬢、それはいつ頃でしたか?」

アルファスト侯爵がまた声を上げて尋ねる。

「昨夜十一時前だったと思います。それから陛下は朝方に部屋を出ていかれました。」

俺一人の証言など、どうにでもなると思っているのだろうか?押し通せば俺が折れるとでも?
まあ、証言者が居なければ、俺は令嬢とやるだけやって惚けてる男気の無い皇帝と捉えられかねないので、受け入れざるを得なくなるのを狙ったんだろうが・・・
俺初め、レイラ嬢の所にいた者が白けた表情で扉を見る。

「何言ってんでしょうね。」

シドが呆れたように扉を指さしながら言う。

「マティア様、レイラです。マティア様は何か勘違いをされておいででは無いですか?」

突然レイラ嬢が声を張り上げて中に聞こえるように話す。
俺はギョッとしてレイラ嬢の顔を見る。
まさかレイラ嬢が話しかけると思っていなかったのだ。


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