20 / 44
⑳穏やかな朝(クロード)
しおりを挟む目が覚めると、目に映る景色がいつものベッドの天蓋ではない。
ここは・・・レイラ嬢の部屋のベッド?・・・
少し考えてから身体を動かそうとしたら、左手が重い。
横を見ると、レイラ嬢が俺の左手を握りしめたまま眠っていた。
椅子に腰掛けた状態で、ベッドに身体を突っ伏した状態だ。
こんな体勢で寝て苦しくないんだろうか?
俺はレイラ嬢を起こさないように体勢を変えてレイラ嬢の方へ身体を向ける。
本当はレイラ嬢をベッドまで抱き上げたいが、今の体制を動かそうとすると、さすがに起こしてしまうだろう。
ここで俺がこうしているって事は、俺は昨日レイラ嬢を抱きしめた後、気を失ったのか?
やってしまったか・・・
またレイラ嬢に心配を掛けてしまったな・・・
俺の手を握ったまま眠るレイラ嬢の頬を指でそっと撫でる。
辺りが明るくなっているから、もう夜は開けているのだろう。久しぶりにぐっすり寝たので頭はハッキリしているが、身体はまだだるさが残っている。
もうしばらくこうしてレイラ嬢を眺めているのも悪くない。
そう思ったのも束の間、ドアをノックする音がして、外から声がする。
「レイラお嬢様、起きていらっしゃいますか?」
その声に、レイラ嬢が反応して目を覚ます。
きっと、気を張っていたので眠りが浅かったのだろう。
「あ、ミカ、起きてたの?」
横になったままレイラ嬢を眺める俺を見て、眠そうに目を擦りながら言った後、握ったままの手を見て顔を赤らめる。
寝起きの可愛いレイラ嬢は久しぶりに見るな。
「大丈夫なの?」
「ぐっすり眠れたから大丈夫だよ。」
俺は笑顔で言ったけど、レイラ嬢はまだ心配そうな顔のままだ。
「意識を失ったのよ?お医師様に見てもらった方がいいわ。」
「俺が意識を失った時、シドが居たんだろ?」
「ええ、居たわ。シド様がミカの様子を見てここまで運んでくれたの。」
「なら、医師に見てもらう必要は無いよ。」
俺の言葉に、レイラ嬢は首をひねる。
「どうして?」
「シドは医師でもあるからね。騒ぎにしたくないからシドがいてくれて良かった。」
俺の答えに、レイラ嬢は目を丸くして驚きを現す。
「え?そうでしたの?」
「うん、俺が居なくなってから、母の看病で自宅に戻っていた間、母を見る為もあって、医師の勉強をしたらしい。」
「知りませんでしたわ。なら安心だわね、でも、後でもう一度シド様に見てもらってね。」
ほっとした様子のレイラ嬢に俺は頷く。
「で、ミーナがドアの外にいるようだけど?」
俺の言葉に、すっかり忘れていたという表情をして慌ててミーナを呼ぶ。
レイラ嬢は見ていて飽きない。可愛いな・・・
「ミーナ、どうしたの?」
声を掛けられて入って来たミーナにレイラ嬢が問いかける。
「それが、アルファスト侯爵様がおいでなのです。陛下はこちらか?と聞かれまして、おいでだと答えましたら、すぐに連れてきて欲しいと言われまして・・・」
ミーナは昨日俺が倒れたのを知っているので、俺の体調を気遣うように言う。
「分かった。すぐに支度をするから少し待てと伝えてくれ。ライルは居るのか?」
「はい、部屋の外で待機していらっしゃいます。」
「呼んでくれ、それと、シドも。」
「畏まりました。」
ミーナはそう言って部屋を出て行った。
入れ替わりで、ライルとシドが入ってくる。
俺はベッドの上に座ったまま、念の為、シドに診てもらうと、ライルに着替えを手伝ってもらう。
別に、執事時代全てやっていたので、俺一人で大抵のことは出来る。
着替えも手伝ってもらう必要は無いが、今は体調が万全でないのと、アルファスト侯爵が来た理由を手っ取り早く聞くためだ。
その間に、レイラ嬢も別室でミーナに支度をしてもらっている。
ライルがアルファスト侯爵から聞いた事を伝えてくれる。
「・・・・・・」
俺は絶句した。
・・・何故そうなる。本当に頭が痛い。
「さすが陛下。」等とシドがからかってくる。シドは分かっていて言っているのだろうが、とりあえずゲンコツを入れておく。
これは、また隠すと、ろくなことは無い。
レイラ嬢に話しておこう。
俺はレイラ嬢の支度が終わるのを待った。
「ミカ、ごめんなさい。支度に手間取ってしまって。」
待っていた俺を見ると、慌てて俺の元へやってくる。
「寝起きのレイラ嬢も可愛いけど、薄化粧をしたレイラ嬢も可愛いね。」
俺は思った事を伝えると、レイラ嬢の手を取る。
「ミ、ミカ、どうしたの?」
俺の行動に不信感を抱くレイラ嬢。
「少し伝えておくことがあって・・・」
「なんでしょう?」
「昨日夜更けにレイラ嬢の迷惑も考えず来てしまったのは訳があって・・・」
俺はレイラ嬢が俺の言葉を聞いてどう思うのか、信じてくれるのか心配で、レイラ嬢を縋るように見る。
「そうだったの?訳・・・って?」
「実は、昨夜部屋に戻ると、部屋の中に裸の女性が居て・・・それを見て俺は自分の部屋から逃げてきたんだ。」
「まぁ、そうでしたの?勇気のある方ですわね。」
「勇気あるって・・・レイラ嬢、俺の貞操の危機だったんだけど?」
そう言うと、レイラ嬢が顔を真っ赤にする。
からかいがいあるな。
「それで、その女性を部屋から追い出すように支持してからレイラ嬢の所へ来てしまったんだ。」
「そうだったんですね。」
レイラ嬢は夜更けの突然の訪問の理由を納得してくれたようだ。
この後のことをどう受け止めてくれるかはレイラ嬢次第だ。レイラ嬢にもアルファスト侯爵が来た理由を聞いてもらう。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました
Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。
そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。
お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。
挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに…
意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。
よろしくお願いしますm(__)m
靴屋の娘と三人のお兄様
こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!?
※小説家になろうにも投稿しています。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる