陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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⑳穏やかな朝(クロード)

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目が覚めると、目に映る景色がいつものベッドの天蓋ではない。
ここは・・・レイラ嬢の部屋のベッド?・・・
少し考えてから身体を動かそうとしたら、左手が重い。
横を見ると、レイラ嬢が俺の左手を握りしめたまま眠っていた。

椅子に腰掛けた状態で、ベッドに身体を突っ伏した状態だ。
こんな体勢で寝て苦しくないんだろうか?
俺はレイラ嬢を起こさないように体勢を変えてレイラ嬢の方へ身体を向ける。
本当はレイラ嬢をベッドまで抱き上げたいが、今の体制を動かそうとすると、さすがに起こしてしまうだろう。

ここで俺がこうしているって事は、俺は昨日レイラ嬢を抱きしめた後、気を失ったのか?
やってしまったか・・・
またレイラ嬢に心配を掛けてしまったな・・・
俺の手を握ったまま眠るレイラ嬢の頬を指でそっと撫でる。

辺りが明るくなっているから、もう夜は開けているのだろう。久しぶりにぐっすり寝たので頭はハッキリしているが、身体はまだだるさが残っている。
もうしばらくこうしてレイラ嬢を眺めているのも悪くない。


そう思ったのも束の間、ドアをノックする音がして、外から声がする。

「レイラお嬢様、起きていらっしゃいますか?」

その声に、レイラ嬢が反応して目を覚ます。
きっと、気を張っていたので眠りが浅かったのだろう。

「あ、ミカ、起きてたの?」

横になったままレイラ嬢を眺める俺を見て、眠そうに目を擦りながら言った後、握ったままの手を見て顔を赤らめる。
寝起きの可愛いレイラ嬢は久しぶりに見るな。

「大丈夫なの?」

「ぐっすり眠れたから大丈夫だよ。」

俺は笑顔で言ったけど、レイラ嬢はまだ心配そうな顔のままだ。

「意識を失ったのよ?お医師様に見てもらった方がいいわ。」

「俺が意識を失った時、シドが居たんだろ?」

「ええ、居たわ。シド様がミカの様子を見てここまで運んでくれたの。」

「なら、医師に見てもらう必要は無いよ。」

俺の言葉に、レイラ嬢は首をひねる。

「どうして?」

「シドは医師でもあるからね。騒ぎにしたくないからシドがいてくれて良かった。」

俺の答えに、レイラ嬢は目を丸くして驚きを現す。

「え?そうでしたの?」

「うん、俺が居なくなってから、母の看病で自宅に戻っていた間、母を見る為もあって、医師の勉強をしたらしい。」

「知りませんでしたわ。なら安心だわね、でも、後でもう一度シド様に見てもらってね。」

ほっとした様子のレイラ嬢に俺は頷く。

「で、ミーナがドアの外にいるようだけど?」

俺の言葉に、すっかり忘れていたという表情をして慌ててミーナを呼ぶ。
レイラ嬢は見ていて飽きない。可愛いな・・・


「ミーナ、どうしたの?」

声を掛けられて入って来たミーナにレイラ嬢が問いかける。

「それが、アルファスト侯爵様がおいでなのです。陛下はこちらか?と聞かれまして、おいでだと答えましたら、すぐに連れてきて欲しいと言われまして・・・」

ミーナは昨日俺が倒れたのを知っているので、俺の体調を気遣うように言う。

「分かった。すぐに支度をするから少し待てと伝えてくれ。ライルは居るのか?」

「はい、部屋の外で待機していらっしゃいます。」

「呼んでくれ、それと、シドも。」

「畏まりました。」

ミーナはそう言って部屋を出て行った。
入れ替わりで、ライルとシドが入ってくる。
俺はベッドの上に座ったまま、念の為、シドに診てもらうと、ライルに着替えを手伝ってもらう。
別に、執事時代全てやっていたので、俺一人で大抵のことは出来る。
着替えも手伝ってもらう必要は無いが、今は体調が万全でないのと、アルファスト侯爵が来た理由を手っ取り早く聞くためだ。
その間に、レイラ嬢も別室でミーナに支度をしてもらっている。

ライルがアルファスト侯爵から聞いた事を伝えてくれる。

「・・・・・・」

俺は絶句した。
・・・何故そうなる。本当に頭が痛い。
「さすが陛下。」等とシドがからかってくる。シドは分かっていて言っているのだろうが、とりあえずゲンコツを入れておく。

これは、また隠すと、ろくなことは無い。
レイラ嬢に話しておこう。
俺はレイラ嬢の支度が終わるのを待った。

「ミカ、ごめんなさい。支度に手間取ってしまって。」

待っていた俺を見ると、慌てて俺の元へやってくる。

「寝起きのレイラ嬢も可愛いけど、薄化粧をしたレイラ嬢も可愛いね。」

俺は思った事を伝えると、レイラ嬢の手を取る。

「ミ、ミカ、どうしたの?」

俺の行動に不信感を抱くレイラ嬢。

「少し伝えておくことがあって・・・」

「なんでしょう?」

「昨日夜更けにレイラ嬢の迷惑も考えず来てしまったのは訳があって・・・」

俺はレイラ嬢が俺の言葉を聞いてどう思うのか、信じてくれるのか心配で、レイラ嬢を縋るように見る。

「そうだったの?訳・・・って?」

「実は、昨夜部屋に戻ると、部屋の中に裸の女性が居て・・・それを見て俺は自分の部屋から逃げてきたんだ。」

「まぁ、そうでしたの?勇気のある方ですわね。」

「勇気あるって・・・レイラ嬢、俺の貞操の危機だったんだけど?」

そう言うと、レイラ嬢が顔を真っ赤にする。
からかいがいあるな。

「それで、その女性を部屋から追い出すように支持してからレイラ嬢の所へ来てしまったんだ。」

「そうだったんですね。」

レイラ嬢は夜更けの突然の訪問の理由を納得してくれたようだ。

この後のことをどう受け止めてくれるかはレイラ嬢次第だ。レイラ嬢にもアルファスト侯爵が来た理由を聞いてもらう。





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