陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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⑲後悔

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わたくしはミカの所へ行くと、こんな夜更けにどうしたのか尋ねた。
するとミカは頼りなく微笑む。
いつもの自信に溢れたミカじゃない。何かあったんだわ。

何かあったのか私が聞くと、ミカは疲れてるだけだと答える。
確かに、わたくしに笑顔を向けてくれるけど、その笑顔も疲れているように見える。
ミカは無理しすぎなんじゃないかしら。
前にシド様が、ミカには信頼出来る部下がまだ少ないって言っていたわね・・・

わたくしはお父様が来てくれれば少しでもミカが楽になるのではないかと思って言ってみた。

でも、イルザンド王国国王様との約束もあるから、まだお父様を呼ぶことは出来ない。
どうにかして呼ぶことは出来ないのかしら・・・
わたくしが早く結婚出来れば・・・
そこまで考えて、また余計な思考が頭を支配する。
結婚相手はわたくしだけじゃないの?そうよ、ミカは皇帝なんだから、妻が一人ってことないわ。一人の方がおかしいわよね・・・

「レイラ嬢、どうした?」

わたくしが昨日の出来事についていろいろと考えていると、ミカが心配そうにわたくしに問いかけてきた。

ミカに聞いて、正直に言って欲しいけど、聞くのが怖い。もし、わたくしだけだと言ってくれたとしても、そのせいでミカに無理をさせてると思うと、わたくしは他の方も受け入れるべきなのかしら・・・

でもミカの言葉でちゃんと聞きたい。
そう思ってわたくしは、ミカに昨日の出来事を話した。

ミカは驚いていたけれど、わたくしを抱き寄せて、

「俺が結婚したいのは、愛しているのはレイラ嬢ただ一人だ。」

と答えてくれた。
そして、「不安な思いをさせてすまない。」と言って、ぎゅっと強く抱きしめてくれる。

その言葉に、わたくしも安心してミカを抱きしめた。しばらくぎゅっとしてくれていたミカの手の力が緩んだと思った次の瞬間、ミカの体が重くのしかかってきて、ミカはそのまま横に倒れてしまった。

「え?・・・っ、ミカ!ミカ!」

慌ててミカを呼んだけれど反応がない。
シド様がすぐに来てミカの手を取って脈をとりながら様子を見る。

「レイラ嬢、ベッドまで運びます。」

シド様はそう言うと、ミカを抱き上げた。シド様、女の子の様な体で意外と力持ちだわ。

ミーナがすぐに扉を開けて通りやすくしてくれる。そして、シド様はわたくしのベッドにミカを運んで寝かせてくれた。

「恐らく、過労でしょう。」

シド様が言うと、ミカの側仕えの方も頷く。

「最近ほとんどお休みになられていませんでしたので、疲労が溜まっていたのだと思います。」

「ミカは大丈夫なの?お医師様をお呼びした方がいいんじゃない?」

わたくしの焦りに、シド様がにっこり微笑む。

「睡眠を十分に取ることが出来ればおそらく回復されると思います。しばらくは安静にした方がいいですね。」

そう言われてミカを見ると、ミカは寝息を立てながら眠っている。

ミカ、ごめんなさい。疲れていたのは来た時から分かっていたのに、早く休ませてあげればよかった。
わたくしは自分の事ばかりで、ミカに気を使ってあげられなかったことを後悔した。
倒れるくらい働いていたなんて・・・

「ごめんなさい・・・」

「レイラ嬢、隣の部屋で休まれますか?」

シド様の言葉に、わたくしは首をふるふると横に振る。

「わたくしはミカに付いているわ。あなた達はもう下がって休んでちょうだい。」

「分かりました。何かあれば呼んでください。」

「ありがとう。」

わたくしが微笑むと、シド様とミーナと、ミカの側仕えのライル様は部屋を出て行った。

わたくしはベッドの横に用意してもらった椅子に座ると、ミカの寝顔を眺める。

ミカの寝顔を見るのは、わたくしがイルザンドで盗賊に襲われた時以来ね。
あの時はミカがわたくしの我儘に付き合って一緒に居てくれたのよね・・・
思えば、わたくしはミカに頼ってばかりで何もしていない。
ミカに沢山負担をかけているんじゃないかしら・・・

「ゴメンね。」

わたくしは眠るミカの手をそっと握りしめた。





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