陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㉘イルザンド城へ

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晩餐会の会場に着くと、皆がミカを見て目を点にしていた。

「陛下、さすがやる事が面白い。」

シド様が笑いながら言う。

「陛下、そのような格好でいらっしゃるなど、どういう事ですか?」

お父様が咎めるように言う。

「お兄様!素敵です!」

アイリス様が目をハートにして見ていた。

「・・・・・・」

ライル様が、また陛下は・・・って感じの顔で見ている。

「ここにいる間はこの姿でいようと思う。皇帝が居るより自然だろ?」

ミカが嬉しそうに話したけど、お父様に、ダメです!と言われていた。

その後、お父様とミカの攻防戦が続いて、結局お父様が折れていた。

「陛下は相変わらずですね・・・」

お父様は観念したように溜息をつきながらこぼす。
きっとお父様はミカがここにいる間こうして振り回されていたのだと思うと、お父様が少し可哀想になった。

「一度お兄様の執事姿見てみたかったの!素敵だわ。」

アイリス様は興奮して目をキラキラと輝かせている。
ええ、アイリス様、わかるわ。わたくしも久しぶりに見るミカの執事姿にドキドキしたもの。


「狼が?」

食事をしながら旅の報告をしていると、狼の話になって、お父様が驚く。

「ああ、何匹かは逃げて行ったからまだ残っている。あの辺りを縄張りにしていたのなら街道の近くなので危険だ。」

「わかりました。すぐに狩りをするよう指示致します。」

お父様はミカの言葉を聞いて、後ろに控えている執事に何かを指示すると、笑顔でアイリス様を見る。

「アイリス殿下、明日は城に上がりますので、そこでヘンリー王子と対面して頂きます。」

「うん、楽しみだわ。明日はお兄様とレイラお姉様も一緒よね?」

そう聞くアイリス様にわたくしは戸惑う。
わたくしは結局ヘンリー王子からの求婚を断った立場なのに、今更会えないわ。

「明日は俺もレイラ嬢も一緒だ。」

「え?」

ミカの言葉にわたくしが驚く。

「どうして?わたくしはお城へ上がれる立場ではないわ。」

「ヘンリー王子がぜひレイラ嬢もご一緒にって言ってたぞ。」

「そうなの?」

やっぱりヘンリー王子はお優しくて寛大なお心を持っていらっしゃるわ。
アイリス様を気に入って頂けるといいのだけど・・・




そして翌日、わたくしはアイリス様と一緒にお城へ上がることになった。
執事のミカを連れて・・・

「やぁ、久しぶりだね、レイラ嬢。相変わらず可愛いままだね。」

お城へ行くと、ヘンリー王子が出迎えてくれた。
後ろにはジェフリー公爵も居る。

「ヘンリー王子様、ジェフリー様、お久しぶりでこざいます。今日はわたくしまでお招き頂きましてありがとうございます。」

わたくしは淑女の礼をして挨拶をする。

「皇帝陛下は?一緒に来ると聞いていたけどご一緒では無いの?あれ?」

ヘンリー王子が疑問を口にしたあと、わたくしを馬車から降ろすのに手を貸してくれた執事を見る。

「陛下??何でその格好?!」

ヘンリー王子もパニクっている。

「ヘンリー王子、お久しぶりです。今回はお忍びで付いてきている身ですので、私の事はお気になさらず。」

ミカ、貴方はどれだけ自分が目立つか分かっていないのね?気にしないでくれと言われても、皇帝がそんな格好をしていたら気になるわよ。

ミカは気にすることなく、アイリス様の手を取って馬車から降ろす。

「ヘンリー王子、ジェフリー公爵、クロード皇帝陛下の妹君のアイリス殿下でございます。」

ミカ、のりのりね。

「アイリス・セフィアス・ルシリアです。よろしくお願い致します。」

アイリス様がちょっと緊張気味に淑女の礼で挨拶をした。

「ヘンリー・ディ・イルザンドです。よろしく。アイリス嬢はクロード皇帝陛下に似て綺麗な黒髪ですね。」

アイリス様が褒められて頬を赤くして嬉しそうにする。

それから部屋へ移動してみんなでお話したのだけど、お二人とも印象が良かったのか、お話が弾みました。
ヘンリー王子とミカも意気投合しているところもあったので、いいお友達になるのかも。
国を背負う者同士、仲良くなるのはいい事よね。
あ、但し、今のミカは執事の姿をしているので、周りの方からは「なんだコイツは?偉そうに王子と話して」と思われていたんじゃないかしら・・・



「ヘンリー様はとても話しやすい気さくな方ね。明日もお話するのが楽しみだわ!」

帰りの馬車の中でアイリス様が嬉しそうに話す。
どうやらヘンリー王子の事を気に入ったようです。


滞在期間の十日間はお城に行ったり、ヘンリー王子が来てくれたりで、アイリス様とは仲良くなれたみたい。

ミカは途中で帰ってしまったので少し寂しかったけど、イルザンド王国は久しぶりだったので楽しい日々はあっという間に過ぎてしまった。



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