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㉗懐かしのミカ
しおりを挟むミカが合流してから三日目、わたくし達はわたくしの実家に到着した。
ここを拠点にアイリス様をヘンリー王子と合わせる事になっているので、懐かしの我が家に暫くいることが出来る。
「クロード皇帝陛下、アイリス殿下、ようこそお越しくださいました。狭い我が家ですが、どうぞおくつろぎください。」
お父様とお母様が出迎えて挨拶をする。
「レイラ、お帰り。元気にしていたかい?」
久しぶりに見るお父様とお母様に思わず涙が溺れる。
「お父様、お母様お久しぶりです。この通り、元気にしていますわ。」
「侯爵、俺の部屋はもう無いよな。」
ミカが問いかけると、お父様はそのままにしてありますと答えた。
返事を聞いたミカは嬉しそうに自室へと歩いていく。
「俺は客間は要らないから、ライルが使ってくれ。」
そう言われたライル様が戸惑っている。
ライル様もご身分は伯爵なので1人用の客間を用意してある。だからミカの部屋は使えないのにね。
ミカったら、皇帝になってもやっぱりあの部屋がいいのね。ミカの嬉しそうな顔、可愛らしいわ。
わたくしがクスクスと笑っていると、ミカが何かを思いついたのか、にっと笑って部屋へ消えて行った。
「さあさあ、旅でお疲れでしょうから、お部屋にお湯を用意してあります。ごゆっくりなさってください。」
お母様の言葉に、皆は各自用意された部屋へと入って行った。
わたくしもまだそのままにしてあった自室へ戻った。
久しぶりの我が家はほっとする。旅の疲れを落とすため、用意されたお湯に入ると、一気に疲れが落ちていく。
今日はささやかな晩餐を用意していると言っていた。晩餐までまだ時間があるので、ベッドに少し横になったらあっという間に眠りに落ちていた。
辺りが暗くなり始めた頃、ふと目を覚ますと、ミカがわたくしをベッドに腰掛けて見下ろしていた。
「お目覚めですか?お疲れでしたからよくお眠りでしたね。」
「ええ、少し寝たからスッキリしたわ。」
そう言って身体を起こしながら違和感を感じてもう一度ミカを見る。
「ミカ!髪!服!え??」
わたくしは驚いて何を言っているのか分からなくなった。
その様子にミカがくくっと笑う。
ミカは黒髪をグレーの髪にして執事の服を着ている。まるで、わたくしの執事をしていた頃のようだわ。寝起きで、この格好で敬語で話されると、違和感なく受け入れてしまっていた自分が怖い。
わたくしの頭の中にはまだ執事のミカが居るってこと?
「久しぶりに袖を通してみたけど、なんか落ち着くんだ。俺って根っからの執事体質なのかな?」
ミカが真剣な顔で悩む風に話す。
「ミカ、何故その格好を?」
「ん?ちょっとイタズラと、変装。」
ミカが楽しそうにウインクをする。
さっきミカがなんか楽しそうに消えていったのはこれを思いついたからね。
「俺今はお忍びで来てるからこの格好の方が動きやすいし、皆からすんなり受け入れられるかなって。」
そうね、ミカはこの家で皆から皇帝と見られるのが居心地悪いのね。
「一番にレイラ嬢に見てもらおうと思って。」
「じゃあ、まだ誰もその姿は見ていないの?」
「ああ、おかしいか?」
おかしいか?と言いながら立ち上がって自身を眺めるミカはやっぱりイケメンです。
執事の衣装がこんなに似合うなんて。長身で細身なので何でも似合うので皇帝の衣装も素敵だけど、久しぶりに見るこっちもちょっと萌えね。
キャーッッ!胸がキュンキュンするのは何かしら。
ドキドキしながらミカを見ていると、わたくしに気が付いてわたくしの横に腰を下ろす。
「ん?惚れ直した?」
ミカが嬉しそうにわたくしを見る。
「うん、ミカは何を着ていても似合うわね。」
わたくしは素直に褒める。
「ありがとう。レイラ嬢にそう言って貰えると嬉しいよ。」
そう言ってチュッとキスをした。
不意打ちのキスに思わず顔が火照る。
「そろそろ晩餐の時間ですよ。レイラお嬢様、ご準備なさいますか?」
ミカがおどけて敬語で話す。
わたくしは、それが何だかおかしくて、クスクスと笑いながら準備をしてミカと部屋を出た。
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