陛下の溺愛するお嫁様

さらさ

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㉙再会(クロード)

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今日はレイラ嬢が帰ってくる日だ。
レイラ嬢にはもう十七日も会っていないのでレイラ不足が続いている。
早くレイラ嬢の顔が見たい。

「陛下、先日ご依頼されました件、纏まりましたのでご報告を。」

俺の元に来たのは最近政務を任せているルーファスだ。
ルーファスはあのサバス国王の息子で、マティアの兄だ。
こいつは真面目で仕事も早い。父と妹の件があるからか、俺に忠実に従ってくれる。あの父からこんな真面目で出来る奴が育つなんて意外だが、いい拾い物だ。

俺はルーファスからの報告書にざっと目を通す。

「どう思う?」

俺はルーファスに意見を求める。

「近々何か仕掛けてくるかと・・・」

「やはりそう思うか?」

「はい、警戒された方がいいかと思われます。」

「そうだな。」

ルーファスはやはり頭が回る。ほんの少しの違和感から的確な意見を言ってくれる。

「引き続き頼む。」

「畏まりました。」

そう言ってルーファスは出ていった。

レイラ嬢が戻って来たら今度はエレオルト王国へ向けて旅立たねばならない。レイラ嬢には旅続きで無理をさせることになる。
今度の旅は七日で着くけど、馬車での移動は大変だろう。少しでも一緒に居てやりたい。
だから今のうちに片付けられることはやっておかないと・・・

「陛下、アイリス殿下とレイラ様がお戻りになられたようです。」

アルファスト侯爵が伝えに来てくれた。

「ありがとう。今何処に?」

「先ほど門を入られたようですので、もう暫くしたら内宮の入口に到着されるかと。」

「わかった。ありがとう。」


俺はそう言うとレイラ嬢を迎える為入口まで向かった。

入口まであと少しの所で、レイラ嬢達が前から歩いてくるのが見えた。
もう着いていたのか。

久しぶりに見るレイラ嬢の姿にほっとして、俺は立ち止まってレイラ嬢が歩いてくるのを眺めていた。

ん?
レイラ嬢が向かって来る廊下の柱の影にいる下女、殺気を放っている。

女が見ている先はレイラ嬢だ。

俺は立ち止まっていた足を早足で進める。
女は短剣を取り出すとレイラ嬢に向かって走り出した。
レイラ嬢も突然現れた女に驚いている。
俺は女が走り出すと同時に全速力で走り出したので、歩幅の差であっという間に女に追いつき、女が剣を持つ手を取って捻りあげた。
すると女は後ろから現れた俺に驚きながら小さく悲鳴を上げて持っていた剣を落とした。
それを見て両腕を拘束する。

「ミカ!」

「レイラ嬢、お帰り。」

俺は女の腕を拘束したままにっこり笑ってレイラ嬢を見て、その後シドを見る。

「おい、シド、お前わかってて動かなかっただろう。」

「あ、バレてました?その女、殺気ダダ漏れだったから分かっていましたよ。素人だってことも。」

平然と話すシド。

「なら、何故捕えなかった。」

「陛下が居るの見えてたので、大丈夫だと思ってました。」

悪びれもせずにっこり笑うシド。

「お前は俺に賊の処理をさせるのか?」

「久しぶりに会う陛下に助けてもらった方がレイラ嬢が嬉しいかと思ったんです。」

ニッと笑ってレイラ嬢を見るシド。
レイラ嬢を見ると、確かに頬を赤らめて俺を見ている。

「・・・・・・」

まぁ、良しとするか・・・
シドも剣をすぐに抜ける位置に手を置いていたのは見えていたから、俺が動かなくても対処出来たんだろう。

で、この女はなんだ?
そう思って拘束した女を見ると・・・見覚えがある・・・

「リサ様?」

レイラ嬢も気がついたようで、ぽつりと呟く。

「リサ様!何故こんな所に?」

「あんたを殺すためよ!」

リサにそう言われて驚くレイラ嬢。

「え?」

「私から何もかも奪っておいてあんただけ幸せになるなんて許せない!」

リサがレイラ嬢に向かって叫ぶ。

「何であんたが皇帝に見初められるのよ!」

いわれの無い言葉を投げかけられて、レイラ嬢はどう答えていいのかわからず戸惑っている。

「俺のレイラにひどいことを言ってくれるな。」

俺の言葉に、リサが自分を捕まえている人物を振り返って見る。
そうして、見た瞬間、顔を蒼白にして驚きを表す。

「皇帝陛下・・・」

自分を捕まえたのは俺だと気が付いてなかったのか?

「リサ、レイラを貶めようとしたのはお前であって、レイラは何もしていない。」

この女は以前自分がヘンリー王子の妻になる為、婚約者だったレイラ嬢を貶めたり傷付けたりしていた女だ。

「え?何で私の名前を?何でそんなことを皇帝陛下が知ってるの?まさかレイラが陛下に取り入るために話したんじゃ!」

そう言ってレイラ嬢を睨みつける。
自分勝手な解釈にも程がある。

「レイラに無理やりぶつかって怪我をさせた事、階段から引っ張り落とそうとした事、そして自分が落ちた事を俺のせいにしようとした事、忘れないぞ。」

俺の言葉にリサは蒼白になる。

「私は皇帝陛下に罪をなすり付けた事なんてないわ。」

そう言って俺を見る。

「ミカ、手を離してあげて。」

レイラ嬢が言うが、離すわけには行かない。

「ミカ・・・?」

レイラ嬢の言葉にリサが首を傾げる。
そして、俺の顔を見ていたリサが目を大きく見開いて青ざめる。

「ミカって、レイラの側仕えの?え?皇帝?え?どういう事?」

「やっと気がついたか、お前は以前の俺には一切興味なかったから、俺を見ても気が付かなくて当然か。」

「うそ!何で皇帝がレイラなんかに仕えていたの??」

慌てふためいて疑問を口にするリサ。
まあ、謎だろうな。

「こんな所でレイラを傷つけたらお前もただじゃ済まないことも分からなかったのか?」

「私はレイラを殺せたら死んでもいいのよ!今の生活を一生続けるなんてごめんだわ!死んだ方がマシよ!」

リサのその言葉にレイラ嬢がびくっと肩を震わせる。

「分かった・・・衛兵、こいつを連れて行け。」

俺はそれ以上リサの言葉を聞いても無駄だと判断して駆け付けていた衛兵にリサを渡した。




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