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第一章
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「……何だ、だれもいないじゃん。玲央、俺らを驚かせるなよ」
廊下から、教室にいた複数の男子たちの声が聞こえる。
「遅くなったし、もう帰ろうぜ」
「じゃあな、また明日」
男子生徒たちはゾロゾロと教室を後にする。
足音が聞こえなくなり、私は立ち上がった。
隣のクラスから一歩、外に出るとそこには、みんなと下校したと思っていた玲央がいた。
私は咄嗟に俯いて視線を逸らせたけれど、玲央の視線が私に向いていることくらい、痛いほどわかる。
「何で隠れたんだ?」
すれ違う瞬間、玲央が私に問いかける。
「……別に、関係ない」
本当なら、この時に「庇ってくれてありがとう」のひと言でも言えば、私たちの関係は変わったのかもしれない。でもそれも、後の祭りだ。
「ふーん……そう」
私は玲央に、失礼な態度を取ってしまったことを後悔した。
その翌日から玲央は、これ見よがしに私の親友である瑠璃に接近し、二人は付き合うことになったのだった。
私はそんな二人の姿を見るのが辛くて、表面上では瑠璃が玲央とデートするのを邪魔するわけにはいかないと、少しずつ距離を置いていった。
元々ひとりぼっちには慣れている。
恋愛での揉めごとに巻き込まれたくはない。
最初のころは瑠璃も気を利かせ、三人で一緒に行動することもあったけれど、どう見ても私がお邪魔虫なのは明白だった。
学年が上がり、瑠璃とクラスが変わると、付き合う友達もガラリと変わる。
二年の時に仲良くなった子は、私と同じく勉強の良くできるおとなしいタイプの子だった。
そんな彼女も、気がつけばいつの間にか玲央と付き合うようになっていた。
瑠璃はというと、いつの間にか玲央と別れて新しい彼氏ができている。
そしてまた学年が上がり、三年になった。
玲央と付き合っていた彼女とクラスが別れ、再び瑠璃と同じクラスになった。受験を控えた年だからか、玲央も鳴りを潜めているようだ。
瑠璃と玲央は、元カレ元カノの間柄とはいえ、いい別れ方をしたのかわだかまりがないのか、普通の友達として接している。
大学は、それまでの地道な努力が身を結び、地元の国立大学に推薦入学が決まった。
瑠璃は地元の短大に進学し、玲央は一般入試で学部こそ違うけれど私と同じ大学に合格した。
そうしてまた、玲央は私の近くで、玲央の選んだ彼女とのやり取りを見せつけたのだ。
就活が始まるころ、私は地元を離れるつもりで株式上場している大手企業を何社かエントリーし、内定を決めていたけれど、それを覆されることになったのはやはり玲央が原因だ。
「なあ、うちの親の会社でバイトやらないか? 試験運用で、バイトから正社員登用するみたいなんだ。優秀な人材を学生のうちから確保する目的らしい。お前は俺が知る中でも一番優秀な人材だと思うんだ。もちろん就活で内定している会社に就職しても文句は言わない。だから期間限定で、バイトしてみないか?」
大学に入学してから、私は資格をたくさん取った。
自宅から通える大学だったから、空いた時間にバイトにも勤しんだ。
玲央が提示するバイトの内容は、それまでの学生バイトの時給に比べはるかに条件が良く、魅力的だった。
結果、内定が決まっていた会社をお断りすることになり、今日に至る。
定時を一時間回ったところでようやく今日の仕事が片付いた。私は急いで瑠璃に連絡を取ろうとスマホを取り出すと、案の定、瑠璃からメッセージが届いている。
『お疲れさま! 時間潰しで駅前の本屋にいるから、仕事終わったら連絡してね』
私は既読マークを付けると、キーボード画面に指を滑らせる。
『お疲れさま! 今仕事終わったよ。私も欲しい本があるから、そっちに合流するね』
メッセージを送信すると、スマホをポケットの中にしまう。
「すみません、お先に失礼します」
部署に残っている先輩たちに挨拶すると、タイムカードを打刻して離席する。部屋の隅に置いてあるロッカーから荷物を取ると、私は職場を後にした。
廊下から、教室にいた複数の男子たちの声が聞こえる。
「遅くなったし、もう帰ろうぜ」
「じゃあな、また明日」
男子生徒たちはゾロゾロと教室を後にする。
足音が聞こえなくなり、私は立ち上がった。
隣のクラスから一歩、外に出るとそこには、みんなと下校したと思っていた玲央がいた。
私は咄嗟に俯いて視線を逸らせたけれど、玲央の視線が私に向いていることくらい、痛いほどわかる。
「何で隠れたんだ?」
すれ違う瞬間、玲央が私に問いかける。
「……別に、関係ない」
本当なら、この時に「庇ってくれてありがとう」のひと言でも言えば、私たちの関係は変わったのかもしれない。でもそれも、後の祭りだ。
「ふーん……そう」
私は玲央に、失礼な態度を取ってしまったことを後悔した。
その翌日から玲央は、これ見よがしに私の親友である瑠璃に接近し、二人は付き合うことになったのだった。
私はそんな二人の姿を見るのが辛くて、表面上では瑠璃が玲央とデートするのを邪魔するわけにはいかないと、少しずつ距離を置いていった。
元々ひとりぼっちには慣れている。
恋愛での揉めごとに巻き込まれたくはない。
最初のころは瑠璃も気を利かせ、三人で一緒に行動することもあったけれど、どう見ても私がお邪魔虫なのは明白だった。
学年が上がり、瑠璃とクラスが変わると、付き合う友達もガラリと変わる。
二年の時に仲良くなった子は、私と同じく勉強の良くできるおとなしいタイプの子だった。
そんな彼女も、気がつけばいつの間にか玲央と付き合うようになっていた。
瑠璃はというと、いつの間にか玲央と別れて新しい彼氏ができている。
そしてまた学年が上がり、三年になった。
玲央と付き合っていた彼女とクラスが別れ、再び瑠璃と同じクラスになった。受験を控えた年だからか、玲央も鳴りを潜めているようだ。
瑠璃と玲央は、元カレ元カノの間柄とはいえ、いい別れ方をしたのかわだかまりがないのか、普通の友達として接している。
大学は、それまでの地道な努力が身を結び、地元の国立大学に推薦入学が決まった。
瑠璃は地元の短大に進学し、玲央は一般入試で学部こそ違うけれど私と同じ大学に合格した。
そうしてまた、玲央は私の近くで、玲央の選んだ彼女とのやり取りを見せつけたのだ。
就活が始まるころ、私は地元を離れるつもりで株式上場している大手企業を何社かエントリーし、内定を決めていたけれど、それを覆されることになったのはやはり玲央が原因だ。
「なあ、うちの親の会社でバイトやらないか? 試験運用で、バイトから正社員登用するみたいなんだ。優秀な人材を学生のうちから確保する目的らしい。お前は俺が知る中でも一番優秀な人材だと思うんだ。もちろん就活で内定している会社に就職しても文句は言わない。だから期間限定で、バイトしてみないか?」
大学に入学してから、私は資格をたくさん取った。
自宅から通える大学だったから、空いた時間にバイトにも勤しんだ。
玲央が提示するバイトの内容は、それまでの学生バイトの時給に比べはるかに条件が良く、魅力的だった。
結果、内定が決まっていた会社をお断りすることになり、今日に至る。
定時を一時間回ったところでようやく今日の仕事が片付いた。私は急いで瑠璃に連絡を取ろうとスマホを取り出すと、案の定、瑠璃からメッセージが届いている。
『お疲れさま! 時間潰しで駅前の本屋にいるから、仕事終わったら連絡してね』
私は既読マークを付けると、キーボード画面に指を滑らせる。
『お疲れさま! 今仕事終わったよ。私も欲しい本があるから、そっちに合流するね』
メッセージを送信すると、スマホをポケットの中にしまう。
「すみません、お先に失礼します」
部署に残っている先輩たちに挨拶すると、タイムカードを打刻して離席する。部屋の隅に置いてあるロッカーから荷物を取ると、私は職場を後にした。
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