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第二章
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「それはそうと、玲央とは最近どう?」
唐突に玲央の話が出たものだから、私は口に残っていたアルコールを思わず吹き出しそうになった。それを何とか抑え、グラスをテーブルの上に置くと、バッグの中からハンカチを取り出して口の回りを拭いた。
瑠璃の質問の意図がわからず、小首をかしげる私に、瑠璃はニヤニヤしながら言葉を続ける。
「どう、って……聞かれても。最近は、女好きの鳴りを潜めているよ。やっぱり親の会社だからか、人の目が気になるのかな。昔みたいに節操なく女の子を引っ掛けたりしていないね」
私は、社会人になってからの玲央について分析する。
そう、玲央に彼女がいたのは、私が知っている限りでは大学生の頃までだ。しかもまた、付き合う彼女は私が親しくなった友人と来たものだ。この頃になれば、さすがに私もしんどくなって、女子たちと親しくすることをやめた。
どうしたって玲央には選ばれないのだ。これ見よがしに、私の親しい友達と付き合っていく姿を、もう見たくない。
瑠璃は私の玲央に対する気持ちに気付いていないと思うけれど、時々こうやって、不意に玲央の話題を振ってくる。
「ふーん……、相変わらず辛口だね。……玲央も、節操なく女の子を引っ掛けているわけではないと思うんだけどね」
瑠璃は苦笑いしながら口を開く。
「いや、節操ないでしょう? あいつの歴代の彼女、多分私全員知ってるし」
ちょうどこのタイミングで注文していた冷奴が運ばれてきた。取り皿も用意してもらっていたので、瑠璃と半分シェアして私は薬味を豆腐の上に乗せ、醤油をかけて口に運ぶ。
すると冷奴を食べながら、瑠璃が意味のわからない言葉を発した。
「まあ、敢えて真冬の友達を選ぶって辺りは、あいつの涙ぐましい努力よね……」
「ん? 何それ?」
「ううん、こっちのこと。久しぶりの冷奴、沁みるわあ……」
瑠璃はそう言って言葉を誤魔化したけれど、その後小声で「あいつ何やってんだよ」と独りごちていた声には敢えて反応しなかった。
その後、続々と頼んでいた品が運ばれて、私たちは食事とお酒も進んだ。瑠璃も珍しくお酒をたくさん飲んだし、私もたくさん飲んだ。
瑠璃の呂律が少しだけ回らなくなっている。私も大概飲んだので、そろそろここでお開きにしよう。
「瑠璃、そろそろお店出ようか」
私は瑠璃に問いかける。すると瑠璃は珍しく駄々を捏ねた。
「やだあ、もう少し真冬と一緒にいるー」
いつもなら、お店で会計を済ませたらあっさり解散するのに珍しいこともあるものだ。
「じゃあ、うちくる?」
どうせ帰っても一人だ。友達が泊まりにきても問題はない。私の問いに、瑠璃は喜んで答えた。
「やったー! 行く行く!」
話が決まれば後は早い。私たちは酔っ払って足取りが怪しくなっているけれど、そんなことはお構いなしで自宅までの道をゆっくりと歩きながら進んだ。
途中のコンビニで、おつまみになる軽いお菓子と明日の朝食用の菓子パン、お酒を数本購入し、私の部屋へと到着した。
瑠璃はリビングの床に座り込むと、テーブルの上に突っ伏してそのまま目を閉じた。
「ちょっと、瑠璃? そのまま寝たら、明日の朝大変だよ?」
私の声は子守唄にしか聞こえていないだろう。すぐに寝息が聞こえてきた。
私は溜め息を吐くと、洗面所から拭き取りのメイク落としを持ってきて、瑠璃の化粧を拭き取った。
寝ている相手だから、時々無意識に嫌がられて手が私に当たることもある。けれどやらないよりマシだ。翌朝私に感謝してもらわなければ。
とりあえず簡単にメイク落としを済ませると、私はクローゼットの中から使っていない毛布を取り出し、瑠璃の背中に掛けた。
私は買ってきたお酒やおつまみ、これらを見ながらこれどうするのと独り言を呟いた。考えても仕方ないので、今のうちにシャワーを浴びることにした。
唐突に玲央の話が出たものだから、私は口に残っていたアルコールを思わず吹き出しそうになった。それを何とか抑え、グラスをテーブルの上に置くと、バッグの中からハンカチを取り出して口の回りを拭いた。
瑠璃の質問の意図がわからず、小首をかしげる私に、瑠璃はニヤニヤしながら言葉を続ける。
「どう、って……聞かれても。最近は、女好きの鳴りを潜めているよ。やっぱり親の会社だからか、人の目が気になるのかな。昔みたいに節操なく女の子を引っ掛けたりしていないね」
私は、社会人になってからの玲央について分析する。
そう、玲央に彼女がいたのは、私が知っている限りでは大学生の頃までだ。しかもまた、付き合う彼女は私が親しくなった友人と来たものだ。この頃になれば、さすがに私もしんどくなって、女子たちと親しくすることをやめた。
どうしたって玲央には選ばれないのだ。これ見よがしに、私の親しい友達と付き合っていく姿を、もう見たくない。
瑠璃は私の玲央に対する気持ちに気付いていないと思うけれど、時々こうやって、不意に玲央の話題を振ってくる。
「ふーん……、相変わらず辛口だね。……玲央も、節操なく女の子を引っ掛けているわけではないと思うんだけどね」
瑠璃は苦笑いしながら口を開く。
「いや、節操ないでしょう? あいつの歴代の彼女、多分私全員知ってるし」
ちょうどこのタイミングで注文していた冷奴が運ばれてきた。取り皿も用意してもらっていたので、瑠璃と半分シェアして私は薬味を豆腐の上に乗せ、醤油をかけて口に運ぶ。
すると冷奴を食べながら、瑠璃が意味のわからない言葉を発した。
「まあ、敢えて真冬の友達を選ぶって辺りは、あいつの涙ぐましい努力よね……」
「ん? 何それ?」
「ううん、こっちのこと。久しぶりの冷奴、沁みるわあ……」
瑠璃はそう言って言葉を誤魔化したけれど、その後小声で「あいつ何やってんだよ」と独りごちていた声には敢えて反応しなかった。
その後、続々と頼んでいた品が運ばれて、私たちは食事とお酒も進んだ。瑠璃も珍しくお酒をたくさん飲んだし、私もたくさん飲んだ。
瑠璃の呂律が少しだけ回らなくなっている。私も大概飲んだので、そろそろここでお開きにしよう。
「瑠璃、そろそろお店出ようか」
私は瑠璃に問いかける。すると瑠璃は珍しく駄々を捏ねた。
「やだあ、もう少し真冬と一緒にいるー」
いつもなら、お店で会計を済ませたらあっさり解散するのに珍しいこともあるものだ。
「じゃあ、うちくる?」
どうせ帰っても一人だ。友達が泊まりにきても問題はない。私の問いに、瑠璃は喜んで答えた。
「やったー! 行く行く!」
話が決まれば後は早い。私たちは酔っ払って足取りが怪しくなっているけれど、そんなことはお構いなしで自宅までの道をゆっくりと歩きながら進んだ。
途中のコンビニで、おつまみになる軽いお菓子と明日の朝食用の菓子パン、お酒を数本購入し、私の部屋へと到着した。
瑠璃はリビングの床に座り込むと、テーブルの上に突っ伏してそのまま目を閉じた。
「ちょっと、瑠璃? そのまま寝たら、明日の朝大変だよ?」
私の声は子守唄にしか聞こえていないだろう。すぐに寝息が聞こえてきた。
私は溜め息を吐くと、洗面所から拭き取りのメイク落としを持ってきて、瑠璃の化粧を拭き取った。
寝ている相手だから、時々無意識に嫌がられて手が私に当たることもある。けれどやらないよりマシだ。翌朝私に感謝してもらわなければ。
とりあえず簡単にメイク落としを済ませると、私はクローゼットの中から使っていない毛布を取り出し、瑠璃の背中に掛けた。
私は買ってきたお酒やおつまみ、これらを見ながらこれどうするのと独り言を呟いた。考えても仕方ないので、今のうちにシャワーを浴びることにした。
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