ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主』

雪奈 水無月

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一章 領主成長編

第9話 『魔物大群襲来──砦防衛戦、開幕!』

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 北の森から吹きつける風が、いつもより冷たかった。
その風に混じって──低く、地鳴りのような咆哮が響く。

「ロイド! 魔物の大群が森を抜けたわ!」

エルナが駆け込んでくる。
その表情は、普段の冷静さを失っていた。

「数は……?」

「ざっと見ただけでも百を超える。
 しかも、ブラッドウルフだけじゃない。
 大型の《アースベア》まで混じってる!」

ロイドは息を呑んだ。

(……公爵の仕業だ。
 魔物の巣を刺激して、こっちに誘導したんだ)

レベッカが地図を広げ、冷静に状況を分析する。

「ロイド様。
 大群は北の森から一直線に“グレイヴ村”へ向かっています。
 ここが最初の戦場になります」

「バルドの砦は……?」

「基礎は完成済み。
 簡易防壁と監視塔も稼働しています。
 十分に戦えます」

ロイドは深く頷いた。

「全員、グレイヴ村へ向かうぞ!」

◆ ◆ ◆

[グレイヴ村──砦前線]

砦の上では、バルドが怒号を飛ばしていた。

「おい! 防壁の補強を急げ!
 魔物の突撃に耐えられるようにしろ!」

ラウルが木材を運び、兵士たちが槍を構える。
エルナは塔の上で弓を引き絞り、ミーナは領民の避難誘導を行っていた。

ロイドが到着すると、皆が振り返る。

「ロイド様!」

「遅れてすまない! 状況は?」

バルドが顎で森を指す。

「見ろよ、あれを」

森の奥から、赤い目が無数に光っていた。
木々を揺らしながら、魔物の群れがこちらへ迫ってくる。

「……来るぞ!」

エルナが叫ぶ。

◆ ◆ ◆

[砦防衛戦、開始!]

「全員、構えろ!」

ロイドの声が砦に響く。

最初に飛び出してきたのは、ブラッドウルフの群れ。
鋭い牙を剥き、狂ったように突進してくる。

「撃てぇぇぇッ!!」

エルナの矢が次々と放たれ、先頭の魔物が倒れる。
兵士たちが槍で迎撃し、バルドの作った防壁が突撃を受け止める。

「防壁が持ってる! バルド、すごい!」

「当たり前だ! 俺の作品だぞ!」

だが──

「ロイド! 大型が来る!」

森の奥から、巨体の《アースベア》が姿を現した。
地面を揺らしながら、砦へ向かって突進してくる。

「くっ……あれは防壁が持たない!」

レベッカが冷静に指示を出す。

「ロイド様!
 アースベアは突進力が高いですが、方向転換が苦手です。
 “誘導”して、側面から攻撃を集中させましょう!」

ロイドは頷いた。

「エルナ! アースベアの右側に誘導射撃!」

「任せて!」

エルナの矢がアースベアの右肩に刺さる。
怒り狂った魔物は方向を変え、砦の側面へ向かう。

「今だ! 全員、側面に回れ!」

兵士たちが一斉に移動し、槍を構える。

「突撃ぃぃぃ!!」

ロイドが先頭に立ち、剣を振り下ろす。
兵士たちが一斉に槍を突き立て、アースベアが苦しげに咆哮を上げた。

「もう一押しだ! 行けぇぇぇ!!」

最後の一撃が決まり、アースベアが地面に倒れ込む。

砦に歓声が響いた。

「勝った……!」

「ロイド様がやったぞ!」

ロイドは息を切らしながら、剣を握りしめた。

(……みんながいたから勝てたんだ)

◆ ◆ ◆

 しかし──戦いは終わらない

レベッカが険しい表情で森を見つめる。

「ロイド様……まだ終わりではありません」

「え……?」

エルナが塔の上から叫ぶ。

「ロイド! 森の奥に……もっと大きな影がある!」

ロイドは息を呑んだ。

(……まさか、公爵が刺激したのは……
 ただの魔物の群れじゃない?)

リディアが静かに言う。

「ロイド様。
 “異常個体”の可能性があります」

ロイドは剣を握り直した。

「……来るなら来い。
 俺たちは絶対に負けない」

砦の向こうで、巨大な影がゆっくりと姿を現し始めていた。
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