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王子様との出会い
27.家族は増える
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わたくしのお誕生日のお茶会のときには、ソフィアとアンドレアスはふくふくと大きくなって、首が据わって縦抱っこが大好きになっていた。縦抱っこをすると目をきょろきょろさせて周囲を見回したり、声を出して笑ったりするのでとてもかわいい。
わたくしのお誕生日のお茶会で、ソフィアとアンドレアスは紹介されることになった。
ソフィアとアンドレアスにはそれぞれに乳母がついていて二人ともしっかりと面倒を見てくれている。お姉様がお乳をあげることもあるが、二人分で足りないことが多いので、ソフィアとアンドレアスは哺乳瓶でミルクを飲ませて育てられていた。
わたくしのお誕生日のお茶会の席の近くにベビーベッドが置かれて、乳母も控えて、ソフィアとアンドレアスのお披露目をする。
わたくしは自分の誕生日よりもソフィアとアンドレアスのお披露目の方が楽しみだった。
その日は国王陛下と王妃殿下も来てくださって、歓迎するお義父様とお義母様に、ソフィアとアンドレアスを紹介してもらっていた。
「金髪の女の子がソフィア、薄茶色の髪の男の子がアンドレアスです」
「サラは二人も一度に頑張って産んでくれたのです」
「ソフィアとアンドレアスか。コンラッドにもサラにも似ている気がする」
「とてもかわいいですね。お姉様も孫が生まれておめでとうございます」
国王陛下と王妃殿下がソフィアとアンドレアスを見て笑み崩れていた。
わたくしも嬉しくて自然と笑顔になってしまう。
「フィーネ嬢、お誕生日おめでとうございます」
王子様はソフィアとアンドレアスではなく真っすぐにわたくしのところにやってきて、薄いオレンジとピンクの混ざったきれいな薔薇の花束を差し出してくれた。わたくしが驚いていると、「誕生日お祝いになにがいいのか分からなかったので花にしました」と囁いてくれる。
これまで誕生日にお祝いをもらったことはなかったのでわたくしはその花に見とれながら手を差し出した。
両手で抱えなければいけないほどの花束がわたくしの手に渡る。
「王子様だわ……」
こういうことができるのは絵本の中の王子様くらいしかいないと思っていたが、王子様は王子様なのでやはりできるのだ。感動して花束を抱き締めていると、侍女が声をかけてくれる。
「せっかくなのでテーブルに飾りましょうか?」
「お願いするわ」
王子様のプレゼントしてくれた花を見ながらお茶ができるのは純粋に嬉しいので、わたくしは侍女に頼んで花束を花瓶に飾ってもらった。
真っ白な大きな花瓶がテーブルの真ん中にどんと置かれて、そこにたくさんの薔薇の花が活けてあるのに、わたくしは「これは王子様がわたくしにプレゼントしてくれたのよ!」と会場の全員に言って回りたいくらい嬉しかった。
わたくしに挨拶をした後で、王子様はソフィアとアンドレアスの様子を見に行って、席についた。
これでわたくしも十歳。
年齢が二桁になったというのは、わたくしの中でも大きな変化だった。
しばらく前から気付いていたが、王子様はとても背が高くなっている。国王陛下も背が高いので、王子様はその血を継いでいるのだろう。
成人女性を超すくらいの身長になっている王子様に対して、わたくしは若干小柄だったが、それは仕方がない。
王子様が大きいのと、わたくしが小柄なのはあまり関係ない。
お姉様もあまり背は高くないが、長身のコンラッドお義兄様と結婚しているし、わたくしもあまり背は高くならないかもしれないが、王子様が長身になっても問題なく結婚できるだろう。
王子様との婚約が発表されるのは王子様が十二歳になる日と決められている。それまでは黙っていなければいけないのがわたくしは大変だった。
わたくしの王太子妃教育も問題なく進んでいた。
早いうちから始めたので、わたくしも早くから学べることがたくさんで、それも少しずつ身についてきている。
ただ、王子様を前にすると、わたくしは敬語で喋ることをすっかりと忘れてしまうので、公の場ではそれだけは気を付けなければいけなかった。
「フィーネ、お誕生日おめでとう」
「あの小さなフィーネが十歳になったのですね。本当におめでたい」
「フィーネはまた背が伸びたんじゃないかな?」
エルネスト子爵家のお父様とお母様とお兄様もお祝いしてくれてわたくしは頬を染めてお礼を言う。
「ありがとうございます、お父様、お母様、お兄様」
「ソフィアとアンドレアスを見て来たよ。とてもかわいかった」
「アデルやサラやフィーネが生まれたときのことを思い出しましたよ」
「わたしもフィーネが生まれてすぐのころを思い出した」
アンドレアスは薄茶色の髪なのでわたくしが赤ちゃんのころに似ているのかもしれない。
そう思うと、ソフィアとアンドレアスがますますかわいく感じてくる。
お父様とお母様とお兄様はお姉様のところにも挨拶に行ったようだった。
わたくしのお誕生日のお茶会が終わって数日後、わたくしはお兄様の結婚式に出席した。
お兄様は同じ子爵家の令嬢と結婚することが決まっていた。
エルネスト子爵家の領地に戻って五年ぶりに見た我が家は、広く改装されていた。
それでもお客様が入らなくて、ガーデンパーティー形式になったが、お兄様も結婚する子爵家令嬢も白い衣装を着てとても幸せそうだった。
「フィーネ、わたしの妻になるジュリエッタだよ」
「初めまして、フィーネ嬢、ジュリエッタです」
「ジュリエッタお義姉様なのですね」
「お義姉様と呼んでもらえると嬉しいです」
お兄様の結婚相手の名前は、ジュリエッタお義姉様だった。
結婚するとお姉様もお兄様も離れていくようで寂しい気持ちはあったのだが、そうではなくて、お姉様が結婚してコンラッドお義兄様がお義兄様になったように、お兄様も結婚してジュリエッタお義姉様がお義姉様になった。家族は離れていくのではなく、増えていくだけなのだと思うとわたくしも安心する。
「これから兄をよろしくお願いします、ジュリエッタお義姉様」
「こちらこそよろしくお願いします、フィーネ嬢」
「フィーネでいいです。もう家族なのですから!」
「はい、フィーネ」
ジュリエッタお義姉様はとても優しそうなひとで、お兄様が素晴らしい方と結婚できてわたくしは感動で胸がいっぱいだった。
「ジュリエッタ夫人、これからよろしくお願いします」
「コンラッド様、こちらこそよろしくお願いします」
「娘と息子のことも仲良くしてください」
「はい、サラ様」
王子様は王宮を離れられなかったけれど、コンラッドお義兄様は護衛騎士の仕事を休んで、結婚式に出席してくれていた。お姉様がソフィアを抱っこして、コンラッドお義兄様がアンドレアスを抱っこして結婚式に出席している。ソフィアとアンドレアスは珍しい光景にきょろきょろと周囲を見回していた。
お兄様も結婚して、わたくしは幸せに包まれていた。
エルネスト子爵家の領地から王都に戻ると、わたくしにはたくさんの課題が待っていた。
わたくしと王子様の婚約発表までもうあまり時間がない。
それまでにわたくしは行儀作法を完璧に身につけておかなければいけないのだ。
「カーテシーの練習をしましょう」
「はい」
正式な場で女性が挨拶をするときに行われるカーテシーというお辞儀は、体勢がとても難しい。わたくしが苦労していると、先生が教えてくれる。
「フィーネ様は肉体強化の魔法が使えるのですから、筋肉をうまく使って形にしてみせてください」
「魔法を使ってもいいのですか?」
「フィーネ様にとっては肉体強化の魔法は息を吸うように自然に行えるのでしょう?」
「はい、できます」
肉体強化の魔法を使って筋肉を意識して行えば、カーテシーも上手にできることが分かった。こういう方法があるのだとは知らなかった。
「フィーネ様はまだ小さくて体も未成熟です。それでも相応しい場では相応の態度をとらなければいけません。使えるものはなんでも使って、形にしていくといいでしょう」
「はい!」
わたくしの肉体強化の魔法がこんなことに使えるとは思っていなかったが、行儀作法の先生はそこまで考えてくれていた。
わたくしは来るべき日に備えて、少しずつ行儀作法を完璧にしていった。
わたくしのお誕生日のお茶会で、ソフィアとアンドレアスは紹介されることになった。
ソフィアとアンドレアスにはそれぞれに乳母がついていて二人ともしっかりと面倒を見てくれている。お姉様がお乳をあげることもあるが、二人分で足りないことが多いので、ソフィアとアンドレアスは哺乳瓶でミルクを飲ませて育てられていた。
わたくしのお誕生日のお茶会の席の近くにベビーベッドが置かれて、乳母も控えて、ソフィアとアンドレアスのお披露目をする。
わたくしは自分の誕生日よりもソフィアとアンドレアスのお披露目の方が楽しみだった。
その日は国王陛下と王妃殿下も来てくださって、歓迎するお義父様とお義母様に、ソフィアとアンドレアスを紹介してもらっていた。
「金髪の女の子がソフィア、薄茶色の髪の男の子がアンドレアスです」
「サラは二人も一度に頑張って産んでくれたのです」
「ソフィアとアンドレアスか。コンラッドにもサラにも似ている気がする」
「とてもかわいいですね。お姉様も孫が生まれておめでとうございます」
国王陛下と王妃殿下がソフィアとアンドレアスを見て笑み崩れていた。
わたくしも嬉しくて自然と笑顔になってしまう。
「フィーネ嬢、お誕生日おめでとうございます」
王子様はソフィアとアンドレアスではなく真っすぐにわたくしのところにやってきて、薄いオレンジとピンクの混ざったきれいな薔薇の花束を差し出してくれた。わたくしが驚いていると、「誕生日お祝いになにがいいのか分からなかったので花にしました」と囁いてくれる。
これまで誕生日にお祝いをもらったことはなかったのでわたくしはその花に見とれながら手を差し出した。
両手で抱えなければいけないほどの花束がわたくしの手に渡る。
「王子様だわ……」
こういうことができるのは絵本の中の王子様くらいしかいないと思っていたが、王子様は王子様なのでやはりできるのだ。感動して花束を抱き締めていると、侍女が声をかけてくれる。
「せっかくなのでテーブルに飾りましょうか?」
「お願いするわ」
王子様のプレゼントしてくれた花を見ながらお茶ができるのは純粋に嬉しいので、わたくしは侍女に頼んで花束を花瓶に飾ってもらった。
真っ白な大きな花瓶がテーブルの真ん中にどんと置かれて、そこにたくさんの薔薇の花が活けてあるのに、わたくしは「これは王子様がわたくしにプレゼントしてくれたのよ!」と会場の全員に言って回りたいくらい嬉しかった。
わたくしに挨拶をした後で、王子様はソフィアとアンドレアスの様子を見に行って、席についた。
これでわたくしも十歳。
年齢が二桁になったというのは、わたくしの中でも大きな変化だった。
しばらく前から気付いていたが、王子様はとても背が高くなっている。国王陛下も背が高いので、王子様はその血を継いでいるのだろう。
成人女性を超すくらいの身長になっている王子様に対して、わたくしは若干小柄だったが、それは仕方がない。
王子様が大きいのと、わたくしが小柄なのはあまり関係ない。
お姉様もあまり背は高くないが、長身のコンラッドお義兄様と結婚しているし、わたくしもあまり背は高くならないかもしれないが、王子様が長身になっても問題なく結婚できるだろう。
王子様との婚約が発表されるのは王子様が十二歳になる日と決められている。それまでは黙っていなければいけないのがわたくしは大変だった。
わたくしの王太子妃教育も問題なく進んでいた。
早いうちから始めたので、わたくしも早くから学べることがたくさんで、それも少しずつ身についてきている。
ただ、王子様を前にすると、わたくしは敬語で喋ることをすっかりと忘れてしまうので、公の場ではそれだけは気を付けなければいけなかった。
「フィーネ、お誕生日おめでとう」
「あの小さなフィーネが十歳になったのですね。本当におめでたい」
「フィーネはまた背が伸びたんじゃないかな?」
エルネスト子爵家のお父様とお母様とお兄様もお祝いしてくれてわたくしは頬を染めてお礼を言う。
「ありがとうございます、お父様、お母様、お兄様」
「ソフィアとアンドレアスを見て来たよ。とてもかわいかった」
「アデルやサラやフィーネが生まれたときのことを思い出しましたよ」
「わたしもフィーネが生まれてすぐのころを思い出した」
アンドレアスは薄茶色の髪なのでわたくしが赤ちゃんのころに似ているのかもしれない。
そう思うと、ソフィアとアンドレアスがますますかわいく感じてくる。
お父様とお母様とお兄様はお姉様のところにも挨拶に行ったようだった。
わたくしのお誕生日のお茶会が終わって数日後、わたくしはお兄様の結婚式に出席した。
お兄様は同じ子爵家の令嬢と結婚することが決まっていた。
エルネスト子爵家の領地に戻って五年ぶりに見た我が家は、広く改装されていた。
それでもお客様が入らなくて、ガーデンパーティー形式になったが、お兄様も結婚する子爵家令嬢も白い衣装を着てとても幸せそうだった。
「フィーネ、わたしの妻になるジュリエッタだよ」
「初めまして、フィーネ嬢、ジュリエッタです」
「ジュリエッタお義姉様なのですね」
「お義姉様と呼んでもらえると嬉しいです」
お兄様の結婚相手の名前は、ジュリエッタお義姉様だった。
結婚するとお姉様もお兄様も離れていくようで寂しい気持ちはあったのだが、そうではなくて、お姉様が結婚してコンラッドお義兄様がお義兄様になったように、お兄様も結婚してジュリエッタお義姉様がお義姉様になった。家族は離れていくのではなく、増えていくだけなのだと思うとわたくしも安心する。
「これから兄をよろしくお願いします、ジュリエッタお義姉様」
「こちらこそよろしくお願いします、フィーネ嬢」
「フィーネでいいです。もう家族なのですから!」
「はい、フィーネ」
ジュリエッタお義姉様はとても優しそうなひとで、お兄様が素晴らしい方と結婚できてわたくしは感動で胸がいっぱいだった。
「ジュリエッタ夫人、これからよろしくお願いします」
「コンラッド様、こちらこそよろしくお願いします」
「娘と息子のことも仲良くしてください」
「はい、サラ様」
王子様は王宮を離れられなかったけれど、コンラッドお義兄様は護衛騎士の仕事を休んで、結婚式に出席してくれていた。お姉様がソフィアを抱っこして、コンラッドお義兄様がアンドレアスを抱っこして結婚式に出席している。ソフィアとアンドレアスは珍しい光景にきょろきょろと周囲を見回していた。
お兄様も結婚して、わたくしは幸せに包まれていた。
エルネスト子爵家の領地から王都に戻ると、わたくしにはたくさんの課題が待っていた。
わたくしと王子様の婚約発表までもうあまり時間がない。
それまでにわたくしは行儀作法を完璧に身につけておかなければいけないのだ。
「カーテシーの練習をしましょう」
「はい」
正式な場で女性が挨拶をするときに行われるカーテシーというお辞儀は、体勢がとても難しい。わたくしが苦労していると、先生が教えてくれる。
「フィーネ様は肉体強化の魔法が使えるのですから、筋肉をうまく使って形にしてみせてください」
「魔法を使ってもいいのですか?」
「フィーネ様にとっては肉体強化の魔法は息を吸うように自然に行えるのでしょう?」
「はい、できます」
肉体強化の魔法を使って筋肉を意識して行えば、カーテシーも上手にできることが分かった。こういう方法があるのだとは知らなかった。
「フィーネ様はまだ小さくて体も未成熟です。それでも相応しい場では相応の態度をとらなければいけません。使えるものはなんでも使って、形にしていくといいでしょう」
「はい!」
わたくしの肉体強化の魔法がこんなことに使えるとは思っていなかったが、行儀作法の先生はそこまで考えてくれていた。
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