王子様とずっと一緒にいる方法

秋月真鳥

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王子様との出会い

26.双子の誕生と王子様の誕生日のお茶会

 お姉様のお腹は日に日にふくらんでいった。
 しばらくお姉様は気分が悪くて食事があまり食べられない日もあったが、それが過ぎると取り戻すようにしっかり食べるようになって、お腹の赤ちゃんも元気に育っているようだった。
 コンラッドお義兄様はお姉様のために、気分が悪いときには少しでも食べられるものを必死に探して、食べられるようになってからはお姉様が満足できるだけ食べられるように、小分けにして料理を出すように厨房に頼んでいた。
 夏のお姉様のお誕生日のころにはお姉様は気分が悪くて苦しんでいたので、お誕生日のお茶会も開かなかったが、コンラッドお義兄様は国王陛下と王妃殿下の甥にあたるので、お姉様のお腹に赤ちゃんができたことは、国王陛下も王妃殿下もとても喜んでいたという。

 お姉様のお腹が大きくなってから、わたくしはお姉様のお腹に服越しに触れさせてもらうことが多くなった。
 お姉様のお腹の赤ちゃんはとても元気で、ぽこぽことお姉様のお腹を蹴るのだ。

「お姉様、動いたわ!」
「今日もご機嫌がいいようですね。少しは大人しくしていてくれるといいのですけれど」
「赤ちゃんが動くと大変?」
「夜に寝ているときに動き出すと、起こされることもあります」

 お腹で赤ちゃんを育てるということは大変なのだとわたくしも九歳なりに理解する。それでもお腹を撫でているお姉様はとても幸せそうだった。

 冬になって、王子様のお誕生日が近くなって、お姉様のお腹はすごく大きくなっていた。
 魔法医の話では、双子らしいということで、わたくしは双子は初めてだったのでものすごくドキドキしていた。
 双子は出産が大変で、小さく生まれてくるということだから、心配していたが、お姉様は王子様のお誕生日の近くに、金髪の女の子と、薄茶色の髪の男の子を産んだ。
 無事に生まれて、わたくしはものすごく安心して泣いてしまった。

 コンラッドお義兄様も泣いていたように思う。

 生まれてきた女の子はソフィア、男の子はアンドレアスと名付けられた。

 ベビーベッドで眠るソフィアとアンドレアスはとても小さい。あまりに小さくてわたくしは触っていいのかおっかなびっくりだったけれど、お姉様は優しくわたくしにソフィアとアンドレアスを順番に抱っこさせてくれた。

「首が据わっていないので、首のところを肘の上に乗せて支えてくださいね」
「はい……小さい、かわいい」

 抱っこしてあまりにも小さくて頭の毛もぽやぽやとしか生えていないソフィアとアンドレアスに、わたくしは夢中になった。

「ソフィア、わたくし、あなたの叔母様よ」
「フィーネの年齢だと叔母様より、お姉様の方がいいかもしれませんね」
「お姉様でもいいの?」
「小さな子が呼ぶのには問題ないですよ」

 お姉様になれる。
 わたくし、末っ子だったのでずっと「お姉様」と呼ばれるのに憧れていた。
 お姉様になれた喜びで、わたくしは胸がいっぱいだった。

 王子様のお誕生日のお茶会に、コンラッドお義兄様は出席したが、お姉様は出産後すぐだったので欠席した。
 それでも、王子様はコンラッドお義兄様にお祝いを述べていた。

「コンラッド兄様、かわいい双子が生まれたと聞きました。本当におめでとうございます」
「ありがとうございます、レオ殿下。サラは産後も体調がよく、子どもたちも元気です」

 元々美形のコンラッドお義兄様が、蕩けるような笑顔でお姉様と子どもたちのことを語るのを、わたくしも王子様も微笑ましく聞いていた。

 王子様はお茶会に来てくださっているお客様の対応で忙しそうだったが、わたくしは席に座ってお茶菓子を食べて、ミルクティーを飲んでいた。
 ミシェル様の姿は見かけた。わたくしに話しかけたそうにしていた気がするが、わたくしがお茶菓子とミルクティーに夢中になっている間に、いつの間にかどこかに行っていた。
 誰にも邪魔されることなく、お茶菓子とミルクティーを楽しめて、わたくしは満足だった。

 王子様はその日、十一歳になった。
 わたくしとの婚約が発表されるまで、残り一年になったのだ。

 わたくしの王太子妃教育は徐々に難しさを増していたが、わたくしはそんなに苦しみは感じていなかった。
 先生たちはみんなとても親切だったし、分からないところを何度聞いても、丁寧に説明してくれていた。

 わたくしは簡単な外国語が少しと、難しい算術と、歴史と政治が少し分かるようになっていた。

 王子様の誕生日のお茶会に、隣国の王女様が出席していても、わたくしはそんなに気にしていなかった。隣国の王女様は艶々とした豊かな黒い髪を複雑に結っていて、ドレスもこの国のものとは形が違っていて、神秘的で素敵だったけれど、わたくしには王子様と婚約するのだという国王陛下と王妃殿下との約束があった。

 それでも、王子様と同じ年だという隣国の王女様が王子様に話しかけているのを見ると、ちょっとだけ胸がもやもやとした。

 王子様は隣国の王女様にダンスに誘われていた。

「わたくし、この国のダンスを習ったのです。練習として一緒に踊ってくれませんか?」

 こんな風に言われたら王子様も断るわけにはいかないだろう。
 王子様と隣国の王女様が踊るのを見たくなくて、テラスに出ると、コンラッドお義兄様がわたくしを追いかけてきてくれた。

「フィーネ、以前にテラスから落とされたレオ殿下を助けてくれたことがありましたね」
「わたくし、王子様がテラスから落とされて死んでしまうのではないかと必死だったの」
「あのとき、わたしはレオ殿下の護衛騎士として、役目を果たせませんでした。フィーネはわたしのことも救ってくれていたのですよ」
「コンラッドお義兄様のことも?」
「そうです。あのときレオ殿下に何かあれば、わたしは後悔してもしきれなかったでしょう」

 わたくしを慰めるためなのか、王弟殿下が裁かれたときの事件の話をして、わたくしを褒めてくれるコンラッドお義兄様に感謝していると、王子様がテラスにやってくるのが見えた。
 わたくしは思わず王子様の元に駆け寄る。

「王子様、隣国の王女殿下と踊っていたのではないのですか?」
「フィーネ嬢、わたしはフィーネ嬢の王子ですよ。他の相手に浮気したりしません」
「でも……断ってよかったのですか?」
「わたしが踊りたいのはフィーネ嬢だけです」

 手を差し伸べてくれる王子様の手に手を重ねると、会場に連れ戻されて、ダンスの輪に入って行く。
 王子様と踊っている間、わたくしはとても幸せだった。
 隣国の王女様は、それを見て寂し気に笑って、その後は王子様に近付かなかった。

 王子様のお誕生日のお茶会の数日後、王子様はお忍びでベルトラン公爵家にやってきた。ベルトラン公爵は王子様の伯母様なので、王子様がベルトラン公爵家を訪ねること自体は何の問題もない。

 子ども部屋のベビーベッドに寝かされたソフィアとアンドレアスを見て、王子様は緑色の目を輝かせていた。

「コンラッド兄様に似ていますね。サラ夫人にも似ている気がします」
「一度に二人も子どもを授かれて、とても幸せです」
「本当におめでとうございます、サラ夫人」
「ありがとうございます、殿下」

 王子様もお姉様に習って、ソフィアとアンドレアスを順番に抱っこさせてもらっていた。
 首が据わっていないので、首を支えながらそっと抱っこする王子様はとても嬉しそうだった。

「王子様、わたくし、ソフィアとアンドレアスに『お姉様』って呼んでもらうことにしたの」
「それでは、わたしは『お兄様』と呼んでもらえますかね?」
「きっと呼んでくれると思うわ」

 王子様がお兄様で、わたくしがお姉様。
 まだソフィアとアンドレアスが呼べるようになるまでは時間がかかるが、想像するだけで幸せな気分になる。

「小さくてとてもかわいいです」
「わたくしも、なんてかわいいのかしらって、毎日思っているの」
「分かります。わたしも一緒に暮らしていたら、毎日かわいがりたくてたまらないでしょう」

 末っ子のわたくしと、一人っ子の王子様。
 ソフィアとアンドレアスのおかげで、わたくしはお姉様に、王子様はお兄様になれるだと思うと、双子の成長が楽しみでならなかった。
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