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二章 ご寵愛されてます
17.人形とぬいぐるみの新事業
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ルドミラ様のお茶会では、アレクサンテリ陛下とわたくしに遠く離れた席の貴族たちも挨拶に来ていた。
ルドミラ様もカイエタン宰相閣下も主催なので、挨拶のために席を立たなければいけない場面があった。そのときに近寄ってくる貴族たちにわたくしは警戒していたが、最初に挨拶してきたのはルドミラ様とカイエタン宰相閣下の子どもたちだった。
「皇帝陛下、妃殿下、婚約式以来ですね。妃殿下、皇帝陛下の従兄弟のエメリックです。もしかして、皇帝陛下と妃殿下の身に着けている造花はお揃いですか?」
「エメリック、久しぶりだな。これはレイシーが作ってくれたのだ」
「妃殿下はお裁縫や造花作りをなさるって本当だったのですね。とても素敵なお花です。わたくしもほしいですわ。失礼しました、わたくしは、皇帝陛下の従姉妹のテレーザです」
「エメリック様、テレーザ様、よろしくお願いします。わたくしは、レイシー・ディアンです。造花はわたくしが作らせていただきました」
「兄上、姉上、妃殿下にご挨拶したのですね。わたしはアウグスタ」
アレクサンテリ陛下より少し年下の二十歳くらいのエメリック様と、十代半ばに見えるテレーザ様、お二人に続いて、十歳前くらいアウグスタ様も挨拶してくださる。全員金髪だが、アレクサンテリ陛下と同じく真紅の瞳をしていた。
「造花はディアン子爵家の領地で事業を立ち上げています。そちらの方に注文してください」
「ディアン子爵家は造花の事業を立ち上げているのですか?」
「縫物や造花の事業を立ち上げています。工場が建って、寮ができ、女性たちが働きに来ているはずです」
わたくしがテレーザ様に説明すると、エメリック様とアウグスタ様が目を丸くしている。
「女性たちに仕事を与えているのですね」
「庶民の女性は働くことが難しく、自立するのが大変だと聞いています」
「そうなのです。わたくしも裕福な子爵家ではなかったので、平民の方々と変わらない暮らしをしていました。平民の方々、特に女性は今、自立して働くことが難しい社会になっています。けれど、結婚することだけが女性の生き方ではないと思うのです。自分の暮らしを自分で立てていく。それは、誰もが願うことではないでしょうか」
「それで寮を作られたのですか?」
「そうです。寮があれば女性も安全に働くことができます。男性よりも女性の一人暮らしの方が危険ですからね」
エメリック様とアウグスタ様に話していると、二人とも興味深く聞いてくれていた。
テレーザ様がわたくしの前に出る。
「工場で技術を学んだら、女性が店を構える社会になるかもしれませんね」
「わたくしが目指しているのはそれです。女性も男性と同じく社会進出ができる国。それがディアン子爵家の領地から始まればいいと思っています」
つい熱弁してしまったが、テレーザ様もエメリック様もアウグスタ様も真剣に聞いてくれていた。
この国はまだ女性の社会進出が厳しいのである。女性は一人で暮らしていると犯罪に巻き込まれやすいし、危険だとセシルの両親も反対していた。工場に寮があってそこで暮らしていれば、女性たちの安全は守られる。女性たちが安心して暮らせる場所を提供できるのだ。
そこでしっかりと稼いだ女性たちが店を持って、社会進出していけば、女性の働きやすい国ができるのではないだろうか。女性に雇われるのならば娘を預けてもいいという親が出てくるかもしれない。
セシルはお針子になりたかったがその夢は叶えられなかった。夢の中のできごとで、現実とは少し違うかもしれないが、アレクサンテリ陛下は実際にセシルと暮らしているし、セシルがこの国で生きていたのは確かなのだ。わたくしは自分がセシルの生まれ変わりなのかは分からないが、セシルの果たせなかった夢を果たしたいと思っていた。
「妃殿下は庶民のことも考えているのですね」
「女性の社会進出など、わたしは考えたことがありませんでした」
「ご立派です」
エメリック様とアウグスタ様とテレーザ様に認められて、わたくしは安堵していた。
わたくしが三人のアレクサンテリ陛下の従兄弟たちと話していると、他の貴族たちも話しかけてくる。
「妃殿下のご実家のディアン子爵家の領地では、人形も作られると聞きました」
「人形の服も作ると聞きました」
「人形の花冠や髪飾りも注文可能ですか?」
アレクサンテリ陛下の別荘でも貴族たちは人形の生産や人形の服に興味があったが、子どもを持つ親たちは人形に関心があるようだ。
そういえば、この国では人形はあまりかわいくないものしか生産されていないし、服も規格がバラバラなので揃えるのが難しかった。
これは商売になるのではないだろうか。
ディアン子爵家の商売人の血が騒ぐ。
「もし、人形やぬいぐるみに着せ替えの衣装や花冠をつけて製造したら、買われますか?」
「もちろん、注文したいです」
「ぬいぐるみもですか? わたしの娘は、ウサギのぬいぐるみが好きなのです」
「かわいい人形が手に入りますか?」
貴族たちの問いかけに、わたくしはこれは絶対商売になると確信していた。
「ディアン子爵家に伝えてみます」
人形やぬいぐるみの規格を全部同じにして、同じサイズの服を製造すればたくさんの種類の服が手に入るようになる。
小さいころわたくしはぬいぐるみを買ってもらったが、それに服を作って遊ぶのが好きだった。それはセシルが記憶の中で自分の人形を自分で作り、服を作っていたので、それを真似したのだ。
この国で現在売っている人形があまりかわいくないものばかりならば、わたくしがかわいい人形を作って売りだせばいいのではないだろうか。
人間の服を仕立てる仕立て職人さんたちはいても、人形やぬいぐるみやその服を作る工場はこの国にはまだなかったと思う。
新しい事業の気配にわたくしがわくわくしていると、アレクサンテリ陛下がわたくしの肩を抱く。
「ディアン子爵家での人形とぬいぐるみ作り、及び、その服の作成のための工場にわたしが出資しよう」
「アレクサンテリ陛下、いいのですか?」
「前回の別荘でも注文が入っていた。ディアン子爵家に工場が建てば、この国の子どもたちはかわいい人形やぬいぐるみで遊べるようになるだろう。それを女性の自立に繋げるのも素晴らしい。さすがレイシーだと思っているよ」
アレクサンテリ陛下が出資してくださると聞いて、わたくしはディアン子爵家に手紙を書かなければいけないと思っていた。
これは大きな事業になるだろう。
たくさんの雇用者が生まれて、ディアン子爵家の領地は豊かになる。
アレクサンテリ陛下に「ありがとうございます」とお礼を言えば、アレクサンテリ陛下は「この国のためにしているだけだ。レイシーの考えは素晴らしい」とお褒めの言葉をいただいた。
ルドミラ様のお茶会が終わると、わたくしは皇帝宮に帰ってディアン子爵家に手紙を書いた。
かわいい人形やぬいぐるみを同じ規格で作って、その衣装や花冠やコサージュを作って売ること。それが大きな商売になりそうなこと。
手紙を書き終えると、アレクサンテリ陛下がそれに自分の手紙を添えてくれた。
そこにはアレクサンテリ陛下がその事業に出資すると書かれているはずである。
「皇帝陛下がディアン子爵家に贔屓をしていると思われないでしょうか?」
「この事業が成功したら出資金は返してもらうつもりだよ。大丈夫、事業は成功する。それに、ディアン子爵家だけでなく、この国の子どもたちと、働く女性のために出資したと思っている。レイシーはこの国の子どもたちと働く女性のためのことを考えていて、本当に皇后に相応しいと思うよ」
アレクサンテリ陛下があまりにも褒めるので、わたくしは手紙に書いた内容をアレクサンテリ陛下に告げてみた。
「子どもだけでなく、成人した女性や男性もターゲットにしようと思っているのです。愛する人と同じ目の色や髪の色の人形を作ったり、愛する人と同じ目の色のぬいぐるみを作ったりすれば、成人した女性や男性も恋人に贈りやすくなると思いませんか? 注文を受ければ、衣装も似せることができます」
わたくしの提案に、アレクサンテリ陛下が声を上げた。
「それを私に注文させてくれないか?」
「どんな人形やぬいぐるみですか?」
「レイシーとわたしの目の色をしたぬいぐるみがいいかな。それにわたしたちの婚約式の衣装と結婚式の衣装を着せるのだ」
「それは記念になりますね」
そういう方向でも売り出していけばいいかもしれない。
アレクサンテリ陛下のアイデアは素晴らしくて、わたくしは大きく頷いていた。
ルドミラ様もカイエタン宰相閣下も主催なので、挨拶のために席を立たなければいけない場面があった。そのときに近寄ってくる貴族たちにわたくしは警戒していたが、最初に挨拶してきたのはルドミラ様とカイエタン宰相閣下の子どもたちだった。
「皇帝陛下、妃殿下、婚約式以来ですね。妃殿下、皇帝陛下の従兄弟のエメリックです。もしかして、皇帝陛下と妃殿下の身に着けている造花はお揃いですか?」
「エメリック、久しぶりだな。これはレイシーが作ってくれたのだ」
「妃殿下はお裁縫や造花作りをなさるって本当だったのですね。とても素敵なお花です。わたくしもほしいですわ。失礼しました、わたくしは、皇帝陛下の従姉妹のテレーザです」
「エメリック様、テレーザ様、よろしくお願いします。わたくしは、レイシー・ディアンです。造花はわたくしが作らせていただきました」
「兄上、姉上、妃殿下にご挨拶したのですね。わたしはアウグスタ」
アレクサンテリ陛下より少し年下の二十歳くらいのエメリック様と、十代半ばに見えるテレーザ様、お二人に続いて、十歳前くらいアウグスタ様も挨拶してくださる。全員金髪だが、アレクサンテリ陛下と同じく真紅の瞳をしていた。
「造花はディアン子爵家の領地で事業を立ち上げています。そちらの方に注文してください」
「ディアン子爵家は造花の事業を立ち上げているのですか?」
「縫物や造花の事業を立ち上げています。工場が建って、寮ができ、女性たちが働きに来ているはずです」
わたくしがテレーザ様に説明すると、エメリック様とアウグスタ様が目を丸くしている。
「女性たちに仕事を与えているのですね」
「庶民の女性は働くことが難しく、自立するのが大変だと聞いています」
「そうなのです。わたくしも裕福な子爵家ではなかったので、平民の方々と変わらない暮らしをしていました。平民の方々、特に女性は今、自立して働くことが難しい社会になっています。けれど、結婚することだけが女性の生き方ではないと思うのです。自分の暮らしを自分で立てていく。それは、誰もが願うことではないでしょうか」
「それで寮を作られたのですか?」
「そうです。寮があれば女性も安全に働くことができます。男性よりも女性の一人暮らしの方が危険ですからね」
エメリック様とアウグスタ様に話していると、二人とも興味深く聞いてくれていた。
テレーザ様がわたくしの前に出る。
「工場で技術を学んだら、女性が店を構える社会になるかもしれませんね」
「わたくしが目指しているのはそれです。女性も男性と同じく社会進出ができる国。それがディアン子爵家の領地から始まればいいと思っています」
つい熱弁してしまったが、テレーザ様もエメリック様もアウグスタ様も真剣に聞いてくれていた。
この国はまだ女性の社会進出が厳しいのである。女性は一人で暮らしていると犯罪に巻き込まれやすいし、危険だとセシルの両親も反対していた。工場に寮があってそこで暮らしていれば、女性たちの安全は守られる。女性たちが安心して暮らせる場所を提供できるのだ。
そこでしっかりと稼いだ女性たちが店を持って、社会進出していけば、女性の働きやすい国ができるのではないだろうか。女性に雇われるのならば娘を預けてもいいという親が出てくるかもしれない。
セシルはお針子になりたかったがその夢は叶えられなかった。夢の中のできごとで、現実とは少し違うかもしれないが、アレクサンテリ陛下は実際にセシルと暮らしているし、セシルがこの国で生きていたのは確かなのだ。わたくしは自分がセシルの生まれ変わりなのかは分からないが、セシルの果たせなかった夢を果たしたいと思っていた。
「妃殿下は庶民のことも考えているのですね」
「女性の社会進出など、わたしは考えたことがありませんでした」
「ご立派です」
エメリック様とアウグスタ様とテレーザ様に認められて、わたくしは安堵していた。
わたくしが三人のアレクサンテリ陛下の従兄弟たちと話していると、他の貴族たちも話しかけてくる。
「妃殿下のご実家のディアン子爵家の領地では、人形も作られると聞きました」
「人形の服も作ると聞きました」
「人形の花冠や髪飾りも注文可能ですか?」
アレクサンテリ陛下の別荘でも貴族たちは人形の生産や人形の服に興味があったが、子どもを持つ親たちは人形に関心があるようだ。
そういえば、この国では人形はあまりかわいくないものしか生産されていないし、服も規格がバラバラなので揃えるのが難しかった。
これは商売になるのではないだろうか。
ディアン子爵家の商売人の血が騒ぐ。
「もし、人形やぬいぐるみに着せ替えの衣装や花冠をつけて製造したら、買われますか?」
「もちろん、注文したいです」
「ぬいぐるみもですか? わたしの娘は、ウサギのぬいぐるみが好きなのです」
「かわいい人形が手に入りますか?」
貴族たちの問いかけに、わたくしはこれは絶対商売になると確信していた。
「ディアン子爵家に伝えてみます」
人形やぬいぐるみの規格を全部同じにして、同じサイズの服を製造すればたくさんの種類の服が手に入るようになる。
小さいころわたくしはぬいぐるみを買ってもらったが、それに服を作って遊ぶのが好きだった。それはセシルが記憶の中で自分の人形を自分で作り、服を作っていたので、それを真似したのだ。
この国で現在売っている人形があまりかわいくないものばかりならば、わたくしがかわいい人形を作って売りだせばいいのではないだろうか。
人間の服を仕立てる仕立て職人さんたちはいても、人形やぬいぐるみやその服を作る工場はこの国にはまだなかったと思う。
新しい事業の気配にわたくしがわくわくしていると、アレクサンテリ陛下がわたくしの肩を抱く。
「ディアン子爵家での人形とぬいぐるみ作り、及び、その服の作成のための工場にわたしが出資しよう」
「アレクサンテリ陛下、いいのですか?」
「前回の別荘でも注文が入っていた。ディアン子爵家に工場が建てば、この国の子どもたちはかわいい人形やぬいぐるみで遊べるようになるだろう。それを女性の自立に繋げるのも素晴らしい。さすがレイシーだと思っているよ」
アレクサンテリ陛下が出資してくださると聞いて、わたくしはディアン子爵家に手紙を書かなければいけないと思っていた。
これは大きな事業になるだろう。
たくさんの雇用者が生まれて、ディアン子爵家の領地は豊かになる。
アレクサンテリ陛下に「ありがとうございます」とお礼を言えば、アレクサンテリ陛下は「この国のためにしているだけだ。レイシーの考えは素晴らしい」とお褒めの言葉をいただいた。
ルドミラ様のお茶会が終わると、わたくしは皇帝宮に帰ってディアン子爵家に手紙を書いた。
かわいい人形やぬいぐるみを同じ規格で作って、その衣装や花冠やコサージュを作って売ること。それが大きな商売になりそうなこと。
手紙を書き終えると、アレクサンテリ陛下がそれに自分の手紙を添えてくれた。
そこにはアレクサンテリ陛下がその事業に出資すると書かれているはずである。
「皇帝陛下がディアン子爵家に贔屓をしていると思われないでしょうか?」
「この事業が成功したら出資金は返してもらうつもりだよ。大丈夫、事業は成功する。それに、ディアン子爵家だけでなく、この国の子どもたちと、働く女性のために出資したと思っている。レイシーはこの国の子どもたちと働く女性のためのことを考えていて、本当に皇后に相応しいと思うよ」
アレクサンテリ陛下があまりにも褒めるので、わたくしは手紙に書いた内容をアレクサンテリ陛下に告げてみた。
「子どもだけでなく、成人した女性や男性もターゲットにしようと思っているのです。愛する人と同じ目の色や髪の色の人形を作ったり、愛する人と同じ目の色のぬいぐるみを作ったりすれば、成人した女性や男性も恋人に贈りやすくなると思いませんか? 注文を受ければ、衣装も似せることができます」
わたくしの提案に、アレクサンテリ陛下が声を上げた。
「それを私に注文させてくれないか?」
「どんな人形やぬいぐるみですか?」
「レイシーとわたしの目の色をしたぬいぐるみがいいかな。それにわたしたちの婚約式の衣装と結婚式の衣装を着せるのだ」
「それは記念になりますね」
そういう方向でも売り出していけばいいかもしれない。
アレクサンテリ陛下のアイデアは素晴らしくて、わたくしは大きく頷いていた。
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