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アレクサンテリ視点
22.ソフィアとのお茶会
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レイシーの誕生日のお茶会の翌日、レイシーは朝食の席でわたしと目が合うと顔を真っ赤にしていた。昨夜のことを思い出しているのだろう。
それでも、レイシーはわたしから目を反らさずに、わたしに一通の手紙を見せた。
「妹のソフィアがわたくしに会いたがっているのですがよろしいでしょうか?」
手紙を見れば、レイシーの妹のソフィアがレイシーに会いたがっていることが分かった。レイシーの誕生日のお茶会にディアン子爵家は招かれていなかった。レイシーのお茶会は公爵家や侯爵家を排除するために小規模にしていたので、子爵家という身分の低い貴族まで招く余裕がなかったのだ。
それに関してはレイシーの誕生日を祝いたかったであろうソフィアには申し訳ないことをしたし、わたしはレイシーに申し出ていた。
「レイシーの妹ならば、わたしにとっても義妹になる。お茶の時間にでも、わたしも同席していいかな?」
「アレクサンテリ陛下が同席なさるのですか!?」
「なにか問題が?」
ソフィアはわたしを疑っているところがある。それを払拭するためにも、わたしはソフィアに向き合わねばならないと思っていた。
わたしの気持ちを確かめるようにレイシーが言ってくる。
「アレクサンテリ陛下、わたくしは、アレクサンテリ陛下が想う方と結ばれないので、代わりに結婚の圧から逃れるために結婚という形をとった仮初めの妃なのだと思っておりましたが……」
「そんなことは絶対にない。わたしの妃はレイシーだけで、レイシーだけを生涯大切にしていくとわたしは誓っている」
「わたくしは、アレクサンテリ陛下の本当の妃ですか?」
「もちろんそのつもりだ。唯一の妃だ」
レイシーの問いかけに対して、わたしは誠実に、正直に答えた。
それをレイシーは信じてくれたようだ。
「ソフィアは誤解しているのです。アレクサンテリ陛下が、わたくしのことを弄ぶのではないかと」
「そんなことはない。ソフィアに直接そのことを伝えたい。お茶会には同席するので、今週末にソフィアを皇帝宮に呼ぼう」
「皇帝宮に入れていいのですか?」
「ソフィアはレイシーの妹だ。わたしにとっても義妹となる。家族として受け入れよう」
やはり、ソフィアはわたしとレイシーの関係を誤解している。
結婚をずっと拒んでいたわたしが、急にレイシーに求婚して皇宮に連れ去ったようにソフィアには見えているかもしれないが、二十二歳のときにレイシーの刺繍したハンカチを見てから、わたしはレイシーと会いたいと思っていたし、いつかレイシーに求婚するつもりだった。
セシルとのことを明らかにできないので、それをはっきりと言うことはできないが、ソフィアには家族として受け入れてほしかった。
何より、レイシーはソフィアを溺愛しているのだ。レイシーの愛する妹ならばわたしも大事にしたいと思っていた。
わたしはすぐにレイシーに手紙を書くように促し、週末には学園の寮まで皇宮から迎えの馬車を出すように手配した。
週末、ソフィアが皇帝宮にやってきた。
ディアン子爵家もレイシーがわたしの婚約者となってから、少しずつ立ち直っているようで、ソフィアは皇帝宮に来るのに相応しい装いをしていた。
皇帝宮のお茶室に通されたソフィアとレイシーが安心して話せるように、わたしは少し遅れてお茶室に到着するように計算して戻ってきた。
わたしがお茶室に入ると、楽しそうに話していたソフィアとレイシーがソファから立ち上がる。
「本日はお招き下さりありがとうございます。姉の誕生日を祝いたかったので、お茶会を開いていただけてとても嬉しいです」
貴族的な言い回しで、「姉の誕生日のお茶会に参加できなくて不満でした」と言われた気がするが、気にしないことにする。レイシーの妹だと思うとソフィアの前でも自然に微笑みが浮かんでくる。
「レイシーの妹君を歓迎するよ。レイシーは本当に素晴らしい妃で、教育係のラヴァル夫人もその優秀さをいつも褒めている」
「姉は学園でもずっと首席でしたからね」
「それだけでなく、皇帝宮では仕立て職人と共に作業室で縫物をしたり、中庭で野菜を育てたりして、使用人たちにも慕われているよ」
「姉はとても謙虚で使用人にも優しいですからね」
わたしの言葉にいちいち突っかかってくるソフィアだが、それを咎める気はない。ソフィアの気持ちを納得させるだけの内容を、わたしは口にしなければいけない。
「アレクサンテリ陛下は、わたくしの刺繍の腕をとても評価してくださっているのです。わたくしが学園に入学して帝都に来たときに、初めて売ったハンカチを買ってくださって、そのときからわたくしのことを気にかけてくださっていたのです」
「え、十二歳のお姉様を気にかけていたのですか?」
レイシーがフォローに入ろうとしてくれたが、ソフィアの表情が更に険しくなった気がする。二十二歳の成人男性が十二歳の少女に懸想していたかもしれないと思ったら、変態疑惑が浮上してしまうだろう。
「正確には、初めてお会いしたのはデビュタントです。十五歳のときです」
「十五歳のお姉様を、二十五歳の皇帝陛下が……」
慌ててレイシーが言い添えるが、更にソフィアはわたしを不審な目で見ている。
「皇帝陛下は、年端も行かない女性がお好きなのですか?」
「年齢は関係ない。レイシーのことは運命だと思っているだけだ。それにレイシーはもう十九歳だよ」
「その十九歳のお誕生日にわたくしは呼ばれなかったのですけれどね」
「ソフィア、言い方というものがあるでしょう。アレクサンテリ陛下に対して不敬ですよ」
レイシーが十九歳だということを強調すれば、ソフィアから誕生日のお茶会に呼ばれなかったことに関する不満がはっきりと出た。それに対してレイシーは諫めている。
わたしはソフィアが何を言っても咎めるつもりはないので、笑って言う。
「気にしなくてもいいよ、レイシー。レイシーの妹だと思えば少しも不快ではない。レイシーはわたしの妃なのだからね」
「お姉様は皇帝陛下の妃殿下になられる前から、わたくしの姉ですよ」
「ソフィア!」
ソフィアはわたしに対抗したいようだが、わたしはソフィアと仲良くなれたらいいと思っている。
ため息をつくレイシーに微笑みかけていると、ソフィアがわたしを睨み付けてきた。
「どうしてお姉様なのですか? 皇帝陛下を慕う方はどれだけでもいたはずです」
「姉を取られたような気分になっているのかもしれないが、すまないが、わたしにはレイシーが必要なのだ。レイシーはわたしの生きる希望。わたしの光りなのだ」
「その理由を伺いたいです」
「言っても信じてもらえないと思うが、最初はレイシーをわたしの初恋のひとと重ねていた。今は、レイシーを知ってレイシーがそばにいないとわたしは生きていけないと思っている」
ソフィアにも理解できるように話をすれば、ソフィアはわたしとレイシーの左手の薬指に注目した。
「お姉様の左手の薬指の指輪と皇帝陛下の左手の薬指の指輪、お揃いなのですね」
「これはレイシーのために作らせた指ぬきで、正確には指輪ではないのだよ」
「分かりました。皇帝陛下は本気でお姉様を想っているのですね?」
「それは間違いない」
「それでしたら、わたくしが何か言えることはありません」
指輪はいらないと言ったレイシーの心に添えるように作らせた、パープルサファイアを飾った指ぬきという名目の指輪。これが並みの値段でないことも、揃って付けていることも、ソフィアにとってはわたしを信頼するきっかけになったのかもしれない。
やっと怒りをおさめてくれるソフィアに、わたしはレイシーの方を見た。レイシーは安堵したようにため息をついている。
レイシーのためにもソフィアとは和解したかったので、ソフィアが分かってくれたことは嬉しかった。
「お姉様、妃殿下として誰かに苛められたら、いつでもディアン子爵家に帰ってきていいのですよ」
「そのようなことがないように、わたしが必ず守る」
「お姉様、大好きです」
「ソフィア、ありがとうございます」
その後はお茶会は和やかに続き、レイシーはソフィアにお茶菓子や軽食を取り分けてやって、ソフィアはそれを美味しそうに食べていた。
お茶会が終わると、皇宮の馬車でソフィアを遅らせた。
見送りに立つレイシーにわたしも一緒にソフィアを見送る。
「わたくしよりソフィアの方が美しいと思うのですが、ソフィアに心惹かれませんでしたか?」
「え? レイシーとソフィアを比べるつもりはないが、レイシーはこの世で一番美しいと思っているよ」
ソフィアは確かに目立つ顔立ちをしているかもしれないが、レイシーは楚々とした美しさがある。その美しさがわたしの胸を打つのだとレイシーに告げると、顔を赤くしていた。
それでも、レイシーはわたしから目を反らさずに、わたしに一通の手紙を見せた。
「妹のソフィアがわたくしに会いたがっているのですがよろしいでしょうか?」
手紙を見れば、レイシーの妹のソフィアがレイシーに会いたがっていることが分かった。レイシーの誕生日のお茶会にディアン子爵家は招かれていなかった。レイシーのお茶会は公爵家や侯爵家を排除するために小規模にしていたので、子爵家という身分の低い貴族まで招く余裕がなかったのだ。
それに関してはレイシーの誕生日を祝いたかったであろうソフィアには申し訳ないことをしたし、わたしはレイシーに申し出ていた。
「レイシーの妹ならば、わたしにとっても義妹になる。お茶の時間にでも、わたしも同席していいかな?」
「アレクサンテリ陛下が同席なさるのですか!?」
「なにか問題が?」
ソフィアはわたしを疑っているところがある。それを払拭するためにも、わたしはソフィアに向き合わねばならないと思っていた。
わたしの気持ちを確かめるようにレイシーが言ってくる。
「アレクサンテリ陛下、わたくしは、アレクサンテリ陛下が想う方と結ばれないので、代わりに結婚の圧から逃れるために結婚という形をとった仮初めの妃なのだと思っておりましたが……」
「そんなことは絶対にない。わたしの妃はレイシーだけで、レイシーだけを生涯大切にしていくとわたしは誓っている」
「わたくしは、アレクサンテリ陛下の本当の妃ですか?」
「もちろんそのつもりだ。唯一の妃だ」
レイシーの問いかけに対して、わたしは誠実に、正直に答えた。
それをレイシーは信じてくれたようだ。
「ソフィアは誤解しているのです。アレクサンテリ陛下が、わたくしのことを弄ぶのではないかと」
「そんなことはない。ソフィアに直接そのことを伝えたい。お茶会には同席するので、今週末にソフィアを皇帝宮に呼ぼう」
「皇帝宮に入れていいのですか?」
「ソフィアはレイシーの妹だ。わたしにとっても義妹となる。家族として受け入れよう」
やはり、ソフィアはわたしとレイシーの関係を誤解している。
結婚をずっと拒んでいたわたしが、急にレイシーに求婚して皇宮に連れ去ったようにソフィアには見えているかもしれないが、二十二歳のときにレイシーの刺繍したハンカチを見てから、わたしはレイシーと会いたいと思っていたし、いつかレイシーに求婚するつもりだった。
セシルとのことを明らかにできないので、それをはっきりと言うことはできないが、ソフィアには家族として受け入れてほしかった。
何より、レイシーはソフィアを溺愛しているのだ。レイシーの愛する妹ならばわたしも大事にしたいと思っていた。
わたしはすぐにレイシーに手紙を書くように促し、週末には学園の寮まで皇宮から迎えの馬車を出すように手配した。
週末、ソフィアが皇帝宮にやってきた。
ディアン子爵家もレイシーがわたしの婚約者となってから、少しずつ立ち直っているようで、ソフィアは皇帝宮に来るのに相応しい装いをしていた。
皇帝宮のお茶室に通されたソフィアとレイシーが安心して話せるように、わたしは少し遅れてお茶室に到着するように計算して戻ってきた。
わたしがお茶室に入ると、楽しそうに話していたソフィアとレイシーがソファから立ち上がる。
「本日はお招き下さりありがとうございます。姉の誕生日を祝いたかったので、お茶会を開いていただけてとても嬉しいです」
貴族的な言い回しで、「姉の誕生日のお茶会に参加できなくて不満でした」と言われた気がするが、気にしないことにする。レイシーの妹だと思うとソフィアの前でも自然に微笑みが浮かんでくる。
「レイシーの妹君を歓迎するよ。レイシーは本当に素晴らしい妃で、教育係のラヴァル夫人もその優秀さをいつも褒めている」
「姉は学園でもずっと首席でしたからね」
「それだけでなく、皇帝宮では仕立て職人と共に作業室で縫物をしたり、中庭で野菜を育てたりして、使用人たちにも慕われているよ」
「姉はとても謙虚で使用人にも優しいですからね」
わたしの言葉にいちいち突っかかってくるソフィアだが、それを咎める気はない。ソフィアの気持ちを納得させるだけの内容を、わたしは口にしなければいけない。
「アレクサンテリ陛下は、わたくしの刺繍の腕をとても評価してくださっているのです。わたくしが学園に入学して帝都に来たときに、初めて売ったハンカチを買ってくださって、そのときからわたくしのことを気にかけてくださっていたのです」
「え、十二歳のお姉様を気にかけていたのですか?」
レイシーがフォローに入ろうとしてくれたが、ソフィアの表情が更に険しくなった気がする。二十二歳の成人男性が十二歳の少女に懸想していたかもしれないと思ったら、変態疑惑が浮上してしまうだろう。
「正確には、初めてお会いしたのはデビュタントです。十五歳のときです」
「十五歳のお姉様を、二十五歳の皇帝陛下が……」
慌ててレイシーが言い添えるが、更にソフィアはわたしを不審な目で見ている。
「皇帝陛下は、年端も行かない女性がお好きなのですか?」
「年齢は関係ない。レイシーのことは運命だと思っているだけだ。それにレイシーはもう十九歳だよ」
「その十九歳のお誕生日にわたくしは呼ばれなかったのですけれどね」
「ソフィア、言い方というものがあるでしょう。アレクサンテリ陛下に対して不敬ですよ」
レイシーが十九歳だということを強調すれば、ソフィアから誕生日のお茶会に呼ばれなかったことに関する不満がはっきりと出た。それに対してレイシーは諫めている。
わたしはソフィアが何を言っても咎めるつもりはないので、笑って言う。
「気にしなくてもいいよ、レイシー。レイシーの妹だと思えば少しも不快ではない。レイシーはわたしの妃なのだからね」
「お姉様は皇帝陛下の妃殿下になられる前から、わたくしの姉ですよ」
「ソフィア!」
ソフィアはわたしに対抗したいようだが、わたしはソフィアと仲良くなれたらいいと思っている。
ため息をつくレイシーに微笑みかけていると、ソフィアがわたしを睨み付けてきた。
「どうしてお姉様なのですか? 皇帝陛下を慕う方はどれだけでもいたはずです」
「姉を取られたような気分になっているのかもしれないが、すまないが、わたしにはレイシーが必要なのだ。レイシーはわたしの生きる希望。わたしの光りなのだ」
「その理由を伺いたいです」
「言っても信じてもらえないと思うが、最初はレイシーをわたしの初恋のひとと重ねていた。今は、レイシーを知ってレイシーがそばにいないとわたしは生きていけないと思っている」
ソフィアにも理解できるように話をすれば、ソフィアはわたしとレイシーの左手の薬指に注目した。
「お姉様の左手の薬指の指輪と皇帝陛下の左手の薬指の指輪、お揃いなのですね」
「これはレイシーのために作らせた指ぬきで、正確には指輪ではないのだよ」
「分かりました。皇帝陛下は本気でお姉様を想っているのですね?」
「それは間違いない」
「それでしたら、わたくしが何か言えることはありません」
指輪はいらないと言ったレイシーの心に添えるように作らせた、パープルサファイアを飾った指ぬきという名目の指輪。これが並みの値段でないことも、揃って付けていることも、ソフィアにとってはわたしを信頼するきっかけになったのかもしれない。
やっと怒りをおさめてくれるソフィアに、わたしはレイシーの方を見た。レイシーは安堵したようにため息をついている。
レイシーのためにもソフィアとは和解したかったので、ソフィアが分かってくれたことは嬉しかった。
「お姉様、妃殿下として誰かに苛められたら、いつでもディアン子爵家に帰ってきていいのですよ」
「そのようなことがないように、わたしが必ず守る」
「お姉様、大好きです」
「ソフィア、ありがとうございます」
その後はお茶会は和やかに続き、レイシーはソフィアにお茶菓子や軽食を取り分けてやって、ソフィアはそれを美味しそうに食べていた。
お茶会が終わると、皇宮の馬車でソフィアを遅らせた。
見送りに立つレイシーにわたしも一緒にソフィアを見送る。
「わたくしよりソフィアの方が美しいと思うのですが、ソフィアに心惹かれませんでしたか?」
「え? レイシーとソフィアを比べるつもりはないが、レイシーはこの世で一番美しいと思っているよ」
ソフィアは確かに目立つ顔立ちをしているかもしれないが、レイシーは楚々とした美しさがある。その美しさがわたしの胸を打つのだとレイシーに告げると、顔を赤くしていた。
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