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一章 セラフィナ誕生
4.お披露目の衣装合わせ
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わたくし、セラフィナ、もうすぐ一歳になります。
体も少しずつ動くようになってきて、歯もかなり生えて来て、わたくしはよちよちと少しだけ歩けるようになっていたし、這い這いならば高速で移動できるようになっていたし、食事は大人と変わらないものを味つけを薄くして小さく切って食べさせてもらえるようになっていた。
毎日が動けるし、美味しいし幸せでならない。
なにより、話せるのだ。
「にぃ! にぃー!」
「どうしたの、セラフィナ? お兄様だよ」
まだ完璧には話せないのだが、ラファエルお兄様を呼ぶこともできる。
「まっま、ぱっぱ」
「わたくしを呼びましたか、セラフィナ」
「わたしを呼んだか、セラフィナ。おいで」
よちよちとお父様とお母様の元に歩いて行けば、抱っこしてもらえてわたくしはその力強さと温かさに喜びを感じる。
わたくしがまだ「お父様」「お母様」と上手に呼べないので、お父様とお母様は平民のようにわたくしが「パパ」「ママ」と呼ぶのを許してくださっていた。
今日は一歳のお披露目のための衣装合わせだ。
わたくしは日々大きくなっているので、大きめに作られたドレスを着せられて、オムツの上からカボチャパンツをはかされてお父様とお母様とラファエルお兄様に見せる。
ドレスは胸で切り替えがしてあって、乳児のポッコリとしたお腹を妨げないようなデザインになっている。
「にぃ! まっま! ぱっぱ!」
「とてもよく似合っているよ」
「セラフィナはなんてかわいいのでしょう」
「天使のようですね」
お父様もお母様もラファエルお兄様もわたくしを見てうっとりとしている。
前世でも兄弟はいたことはいた。父の愛人の子で、母が同じではなくて、親戚の子だと言われていたが、父にべったりでかわいがられ愛されていた男の子。
前世でその男の子と仲がいいとは言えなかったが、ラファエルお兄様はわたくしをものすごくかわいがってくれる。毎日子ども部屋に通って来てくれて、わたくしに夢中と言ってもおかしくはない。
今世では兄にも両親にも恵まれた。
前世のことは忘れて幸せな今世を生きてもいいのではないかという思いと、わたくしが死んでからアルベルト様がどうなってしまったのかという思いが重なって、わたくしは胸が複雑になる。難しい顔をして動かなくなったわたくしに、お父様もお母様もラファエルお兄様も心配している。
「そのドレスはかわいいが窮屈ではないのか?」
「お靴が重いのでしょうか? セラフィナが動かなくなってしまいました」
「セラフィナ、困った顔をしていますね。どうしましたか?」
唇をきゅっと閉じて思案しているわたくしは、お父様とお母様とラファエルお兄様を心配させてしまったようだ。笑顔になろうとするが、赤ん坊の体は制御が難しい。感情のままにしか動かないのだ。
「ふ、ふぇ……」
「長時間ドレスは苦しかったのかもしれない。靴も重くて歩きにくかったかもしれない」
「すぐに着替えさせてあげますからね」
「当日は短時間でセラフィナの服を着替えさせてあげましょう」
お父様もお母様もラファエルお兄様も迅速に動いて、わたくしは普段の柔らかな生地のロンパース姿になる。足元も布の靴に履き替えさせられて、革靴で重くて動きにくかったのが軽くなる。
それでもわたくしの表情は晴れなかった。
アルベルト様が心配だったのだ。
わたくしがいなくなるとすぐに不安になってしまうアルベルト様。
まだ十歳だったのだから仕方がない。
わたくしが生まれて一年がもうすぐすぎるということは、アルベルト様は十一歳。ラファエルお兄様も十一歳になって同じ年になっているはずだ。
アルベルト様は幼いころからとても賢かったので、死の意味もちゃんと知っている。
わたくしが死んでしまったことに対して、責任を感じていないはずはないのだ。
わたくしはアルベルト様を庇って死ねて後悔はなかったが、残されたアルベルト様がどう思っているかは分からない。
泣き出してしまいそうになったわたくしを抱っこして、お父様が力強い腕で揺らしてくれる。
お父様は身長も高く体も逞しいので、抱っこの安定感がとても素晴らしい。ラファエルお兄様も十一歳という年齢よりもずっと大人に見えるし、帝家の血を引いているアルベルト様もまたラファエルお兄様と変わらない体格だった気がする。
アルベルト様はお父様の弟君の息子なのだ。いわゆる皇弟の息子ということになる。
お父様は貴族や皇族が通う学園を卒業して成人してから一年後、一歳年下のお母様が学園を卒業してからすぐに結婚している。二十一歳のときにラファエルお兄様が生まれて、わたくしが三十一歳のときに生まれている。
今はお父様が三十二歳、お母様が三十一歳なのだ。
アルベルト様のお父様はお父様の一歳年下で、年上の奥様との間に二十歳のときにアルベルト様が生まれているので、アルベルト様とラファエルお兄様は同じ年で学友である。
従兄弟同士なので、気安い関係ともいえるだろう。
気安い関係のはずなのに、アルベルト様はラファエルお兄様のことを前世でわたくしにほとんど話してくれたことはなかった。学友に選ばれたときには誇らしげに報告してくれたが、お茶に呼ばれたときなどはなんとなく気が乗らない様子でお茶会に参加していた。
抱っこされると眠くなるのが赤ん坊というものだが、わたくしももう一歳になるのである。ある程度は我慢ができるようになってきた。
抱っこされた安心感で涙は引っ込んだが、まだ難しい顔をしているわたくしに、ラファエルお兄様が声を上げる。
「セラフィナは慣れない格好をしてお腹が空いたのではありませんか?」
「そうかもしれないな。セラフィナ、おやつにしようか?」
おやつ。
その言葉に幼いわたくしの体は抵抗できない。
よだれは出てくるし、椅子に座らされると反射的に口を開けてしまう。
赤ちゃん用のふわふわのおせんべいを渡されて、唾液で溶けてしまうそれをわたくしは手で持ってもちゅもちゅと味わう。このおせんべいは優しい味がしてわたくしも大好きだった。
乳幼児用の薄味も、使用人として薄い具がほとんど入っていないスープにカチカチのかびる寸前のパンを食べていたわたくしにとっては、ものすごいご馳走だった。なんでも美味しく食べられるのはわたくしの前世に感謝しなければいけないのかもしれない。
そうでなければ、わたくしはこの赤ん坊生活に嫌気がさしていたに違いない。
よだれでどろどろになったおせんべいを、うまく手が使えなくて口の周りに塗り付けてしまうわたくしを、ラファエルお兄様が笑顔で口の周りを拭ってくれる。コップで飲むのも上手になってきたので、コップでお茶を飲まされて口の中がさっぱりする。
お腹がいっぱいになってくると眠くなってしまうのが赤ん坊の困ったところである。
「セラフィナ、眠いの? 椅子から落ちてしまうよ」
うとうととし始めたわたくしをラファエルお兄様が支えてくれて、布の靴を脱がせてベビーベッドに連れて行ってくれた。ラファエルお兄様の抱っこも侮れないのだ。とても安定していて、安心して身を委ねられる。
ベビーベッドに寝かされたわたくしが、まだ寝たくないと抵抗して手足をバタバタさせると、素早くラファエルお兄様が絵本を持ってくる。
絵本の内容は赤ん坊向けで面白いとは言い難いのだが、皇帝一家の絵本である、挿絵が素晴らしく美しいのだ。
美しい挿絵の絵本を見ながら、ラファエルお兄様の朗読を聞いていると、眠気が耐えきれないようになってしまう。
「お披露目の会場にはベビーベッドを設置させよう」
「それがいいですね」
「セラフィナが眠いのを我慢させるのはかわいそうだ」
「当日は衣装も少し手を加えさせて、着心地のいいものにしましょう」
お父様とお母様がわたくしのお披露目について話し合っているのが聞こえる。
わたくしの一歳の誕生日まで残り数日。
誕生日のお披露目の席でわたくしはアルベルト様に会えるだろうか。
アルベルト様に会ったとして、わたくしは喋ることもままならない身で、何ができるだろうか。
アルベルト様にとっては、クラリッサだったわたくしが死んだ翌日のことになる。
落ち込んでいるかもしれない。
それだけクラリッサだったわたくしはアルベルト様と親しくしていたという自覚がある。
「あー……」
眠る前にアルベルト様の名前を呼ぼうとしても、うまくいかなくて、不満なまま、わたくしは眠りについていた。
体も少しずつ動くようになってきて、歯もかなり生えて来て、わたくしはよちよちと少しだけ歩けるようになっていたし、這い這いならば高速で移動できるようになっていたし、食事は大人と変わらないものを味つけを薄くして小さく切って食べさせてもらえるようになっていた。
毎日が動けるし、美味しいし幸せでならない。
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「にぃ! にぃー!」
「どうしたの、セラフィナ? お兄様だよ」
まだ完璧には話せないのだが、ラファエルお兄様を呼ぶこともできる。
「まっま、ぱっぱ」
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「わたしを呼んだか、セラフィナ。おいで」
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わたくしがまだ「お父様」「お母様」と上手に呼べないので、お父様とお母様は平民のようにわたくしが「パパ」「ママ」と呼ぶのを許してくださっていた。
今日は一歳のお披露目のための衣装合わせだ。
わたくしは日々大きくなっているので、大きめに作られたドレスを着せられて、オムツの上からカボチャパンツをはかされてお父様とお母様とラファエルお兄様に見せる。
ドレスは胸で切り替えがしてあって、乳児のポッコリとしたお腹を妨げないようなデザインになっている。
「にぃ! まっま! ぱっぱ!」
「とてもよく似合っているよ」
「セラフィナはなんてかわいいのでしょう」
「天使のようですね」
お父様もお母様もラファエルお兄様もわたくしを見てうっとりとしている。
前世でも兄弟はいたことはいた。父の愛人の子で、母が同じではなくて、親戚の子だと言われていたが、父にべったりでかわいがられ愛されていた男の子。
前世でその男の子と仲がいいとは言えなかったが、ラファエルお兄様はわたくしをものすごくかわいがってくれる。毎日子ども部屋に通って来てくれて、わたくしに夢中と言ってもおかしくはない。
今世では兄にも両親にも恵まれた。
前世のことは忘れて幸せな今世を生きてもいいのではないかという思いと、わたくしが死んでからアルベルト様がどうなってしまったのかという思いが重なって、わたくしは胸が複雑になる。難しい顔をして動かなくなったわたくしに、お父様もお母様もラファエルお兄様も心配している。
「そのドレスはかわいいが窮屈ではないのか?」
「お靴が重いのでしょうか? セラフィナが動かなくなってしまいました」
「セラフィナ、困った顔をしていますね。どうしましたか?」
唇をきゅっと閉じて思案しているわたくしは、お父様とお母様とラファエルお兄様を心配させてしまったようだ。笑顔になろうとするが、赤ん坊の体は制御が難しい。感情のままにしか動かないのだ。
「ふ、ふぇ……」
「長時間ドレスは苦しかったのかもしれない。靴も重くて歩きにくかったかもしれない」
「すぐに着替えさせてあげますからね」
「当日は短時間でセラフィナの服を着替えさせてあげましょう」
お父様もお母様もラファエルお兄様も迅速に動いて、わたくしは普段の柔らかな生地のロンパース姿になる。足元も布の靴に履き替えさせられて、革靴で重くて動きにくかったのが軽くなる。
それでもわたくしの表情は晴れなかった。
アルベルト様が心配だったのだ。
わたくしがいなくなるとすぐに不安になってしまうアルベルト様。
まだ十歳だったのだから仕方がない。
わたくしが生まれて一年がもうすぐすぎるということは、アルベルト様は十一歳。ラファエルお兄様も十一歳になって同じ年になっているはずだ。
アルベルト様は幼いころからとても賢かったので、死の意味もちゃんと知っている。
わたくしが死んでしまったことに対して、責任を感じていないはずはないのだ。
わたくしはアルベルト様を庇って死ねて後悔はなかったが、残されたアルベルト様がどう思っているかは分からない。
泣き出してしまいそうになったわたくしを抱っこして、お父様が力強い腕で揺らしてくれる。
お父様は身長も高く体も逞しいので、抱っこの安定感がとても素晴らしい。ラファエルお兄様も十一歳という年齢よりもずっと大人に見えるし、帝家の血を引いているアルベルト様もまたラファエルお兄様と変わらない体格だった気がする。
アルベルト様はお父様の弟君の息子なのだ。いわゆる皇弟の息子ということになる。
お父様は貴族や皇族が通う学園を卒業して成人してから一年後、一歳年下のお母様が学園を卒業してからすぐに結婚している。二十一歳のときにラファエルお兄様が生まれて、わたくしが三十一歳のときに生まれている。
今はお父様が三十二歳、お母様が三十一歳なのだ。
アルベルト様のお父様はお父様の一歳年下で、年上の奥様との間に二十歳のときにアルベルト様が生まれているので、アルベルト様とラファエルお兄様は同じ年で学友である。
従兄弟同士なので、気安い関係ともいえるだろう。
気安い関係のはずなのに、アルベルト様はラファエルお兄様のことを前世でわたくしにほとんど話してくれたことはなかった。学友に選ばれたときには誇らしげに報告してくれたが、お茶に呼ばれたときなどはなんとなく気が乗らない様子でお茶会に参加していた。
抱っこされると眠くなるのが赤ん坊というものだが、わたくしももう一歳になるのである。ある程度は我慢ができるようになってきた。
抱っこされた安心感で涙は引っ込んだが、まだ難しい顔をしているわたくしに、ラファエルお兄様が声を上げる。
「セラフィナは慣れない格好をしてお腹が空いたのではありませんか?」
「そうかもしれないな。セラフィナ、おやつにしようか?」
おやつ。
その言葉に幼いわたくしの体は抵抗できない。
よだれは出てくるし、椅子に座らされると反射的に口を開けてしまう。
赤ちゃん用のふわふわのおせんべいを渡されて、唾液で溶けてしまうそれをわたくしは手で持ってもちゅもちゅと味わう。このおせんべいは優しい味がしてわたくしも大好きだった。
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そうでなければ、わたくしはこの赤ん坊生活に嫌気がさしていたに違いない。
よだれでどろどろになったおせんべいを、うまく手が使えなくて口の周りに塗り付けてしまうわたくしを、ラファエルお兄様が笑顔で口の周りを拭ってくれる。コップで飲むのも上手になってきたので、コップでお茶を飲まされて口の中がさっぱりする。
お腹がいっぱいになってくると眠くなってしまうのが赤ん坊の困ったところである。
「セラフィナ、眠いの? 椅子から落ちてしまうよ」
うとうととし始めたわたくしをラファエルお兄様が支えてくれて、布の靴を脱がせてベビーベッドに連れて行ってくれた。ラファエルお兄様の抱っこも侮れないのだ。とても安定していて、安心して身を委ねられる。
ベビーベッドに寝かされたわたくしが、まだ寝たくないと抵抗して手足をバタバタさせると、素早くラファエルお兄様が絵本を持ってくる。
絵本の内容は赤ん坊向けで面白いとは言い難いのだが、皇帝一家の絵本である、挿絵が素晴らしく美しいのだ。
美しい挿絵の絵本を見ながら、ラファエルお兄様の朗読を聞いていると、眠気が耐えきれないようになってしまう。
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「それがいいですね」
「セラフィナが眠いのを我慢させるのはかわいそうだ」
「当日は衣装も少し手を加えさせて、着心地のいいものにしましょう」
お父様とお母様がわたくしのお披露目について話し合っているのが聞こえる。
わたくしの一歳の誕生日まで残り数日。
誕生日のお披露目の席でわたくしはアルベルト様に会えるだろうか。
アルベルト様に会ったとして、わたくしは喋ることもままならない身で、何ができるだろうか。
アルベルト様にとっては、クラリッサだったわたくしが死んだ翌日のことになる。
落ち込んでいるかもしれない。
それだけクラリッサだったわたくしはアルベルト様と親しくしていたという自覚がある。
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