冷遇された公爵子息に代わって自由に生きる

セイ

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11.国境越え

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目を覚ますとすでに朝日は昇っており、ファイの姿はなかった。耳を澄ませばお風呂からシャワーの音がする。

体を起こすと腰に鈍い痛み。
この痛みが昨夜の行為を思い出させた。

前世の俺も今世の俺もしたことの無い行為に思わず顔が赤くなるのがわかる。

こんなに気持ちいいとは思わなかった。
愛しい人とするから気持ちいいのだと思うけど…実際気持ちよさに支配されてやってる間の事はあまり覚えてないんだよね…。

でもファイが好きって言ってくれたのは覚えてる。
とても嬉しかった。これまで愛されなかった分の幸せが一気に訪れて罰が当たりそう…。

「ナル…?起きた?体大丈夫か?昨日はちょっと歯止めが効かなくて初めてのナルに激しくしちゃった…ごめんね…?」
「ん~ん、謝らないで。俺も…嬉しかったから…」
「ふっ…そっか。なら良かった。一応一度風呂入れて綺麗にしたけど気持ち悪いとこない?」
「ん…大丈夫。ありがと…。」
「腹は?空いてない?昨日夕飯食べずに始めちゃったからお腹空いてるよな?体大丈夫なら今から屋台行くか?辛いようなら屋台で適当に買ってくるけど…」
「一緒に行きたい!!屋台みたい!!」
「ははっ…!!元気で何より!着替えて行くか」
「うんっ!!」

俺達は着替えて街へと繰り出した。

朝市が始まっているのか街中は賑やかだった。
そこかしこでいい匂いが漂っていて、俺のお腹も鳴き始めている。

「ファイ、あの串焼き食べたい。美味しそう。あ、あのパンも食べたい!野菜とお肉が挟んでるやつ!!ね、ね、あのジュースは何のジュース?」
「慌てなくても屋台は逃げないぞ?人が多いから離れるなよ?」

そう言われてすかさずファイの手を握った。
迷子は困る。
手を握ったファイは幸せそうな顔してた。
そんなファイを見て俺も幸せ。

「朝カルラが戻ってきて仲間が合流したいって話をしてたらしい。合流する前にもう少し2人で居たいから早めに街を出ようと思うけど…大丈夫か?」
「俺はいつでも大丈夫だよ」
「アイツらが一緒だと2人でゆっくり出来ないからなぁ…」
「ふふっ…俺はファイの仲間と会えるの楽しみだよ」
「あまり仲良くならないように。俺が嫉妬するから」
「ははっ…俺はファイだけだよ?」

ファイには悪いけどその可愛い嫉妬が嬉しい。

「ねぇねぇ、この屋台ご飯多めに買って俺のアイテムボックスに入れればいつでも温かいまま食べれるよ?」
「!!それは有り難い!!いろんなもん買おうぜ!今まで食料だけはどうにもならんかったからなぁ。保存効くものか、現地調達だったから、温かいものがすぐ食えるのはいいなぁ」

お互い好きなものを買い込み、俺達はすぐ街を出た。

この街は隣国近くの街だったようで、もうすぐ国境の門に着くらしい。俺はどうやって出よう…。

「…俺どうやって出よう?」
「ん?この間みたいに転移じゃないのか?俺が門兵の気を引いておくからその隙に離れた所で転移すりゃ大丈夫だろ」
「…迷惑かけて…ごめんね…?」
「迷惑だなんて思ってないよ。…だけどいつかはお前の事情は聞きたいとは思ってるけどな。じゃないと何から守ればいいかわからん」

落ち込む俺の頭をポンポンしながらきっぱりと言う。
国から出たら公爵家の追っ手も来づらくなるし大丈夫…かなぁ?

「ん…ありがと…」

ホントにファイはいい人だ。
こんな得体のしれない自分を愛してくれて…。
申し訳ない気持ちはいっぱいだけど、もうこの人の手を離すことは出来ない。この温もりを知ったら離れることは出来ない。

落ち着いたら全部話そう。
俺の事もナサニエルの事も…。
それで嫌われてしまったら…俺はこの先ずっと一人だ。
俺の番はファイだけだから…。

「少しの間離れるけど大丈夫か?」
「うん。大丈夫」
「門の先の森の入り口で待っていてくれ。すぐ追いつく」
「わかった」

ちゅっと頬にキスを残して門へ向かうファイ。
俺はファイと反対に足を向け、転移をした。

ファイより一足先に森の入り口で隠れて待った。
一人で待つ時間が長くて、不安が募っていく。一人になる事がこんなに不安になるなんて…。大きな木の下で足を抱えて縮こまってただひたすら待った。

「…ナル…?」
「あ…ファイ…?」

ガサリと草を踏む足音がしたらファイの声がして安心した。俺は木からひょっこり顔を出すと笑顔のファイがいて思わず飛びついてしまった。

「ナル?大丈夫か?遅くなって悪かった」
「何かあった?」
「あ~…宿で見かけた男。アイツが門に先回りしていてな…。お前は何処だと、探し回ってるみたいだった。奴が探してる人物に似ているからと。街で会ったきりで知らんと言ったら街へ戻って行ったが…」

公爵家があんなヤバそうな奴雇って俺を探してるなんて…なりふりかまってられなくなったか?家を出てからたった数日でここまで来るなんて。雇ったのはきっと兄様だろう。公爵家の人間を使うよりは冒険者を使った方がバレにくいもんな。俺も誰が追っ手かわからなくなるし。頭の回転は父上よりも兄様の方が早い。

「あ…もう追っ手がここまで…ごめん…ごめん…ファイごめん…迷惑かけてごめん…」
「大丈夫。俺はそんな事思ってない。なんて顔してる?俺はお前を守ってやる。安心しろ。な?」

俺を安心させるために抱きしめてくれるファイ。
一人だったら何とも思ってなかっただろう。
捕まるのは俺だけだから。
でも今はファイがいる。ファイまで捕まってしまったらどうなるかわからない。それが不安。

「とりあえずここからさっさと離れよう。王都まで行けば俺のテリトリーだ。情報も取れるし、お前を守れる」
「うんっ…!ファイ…ありがと…ぐすっ…」

そこからすぐ離れるように森の中を進んだ。












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