冷遇された公爵子息に代わって自由に生きる

セイ

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21.冒険者になる

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ファイたちに案内され、ギルドの建物まで来た。
中へ入ると視線が一気に集中して俺は思わずファイの背に隠れた。

「散れ!!」

ファイの一言で視線は散らばったが、気になるようでチラチラと見てくる人はいる。

ファイたちはやっぱりここで有名だから皆もファイたちの動向が気になるらしい…。
たぶんファイにくっついてる俺が気になるんだろうけど…。

「ナルこっちだ」
「あ、うん」
「この受付で登録出来る」

受付には綺麗なお姉さんが愛想良く立っているけど…俺にはわかるぞ。目がお前はファイの何なんだって言ってるのが。

「冒険者登録の手続きを行います。まずこちらの紙に必要事項をお書きください」
「はい…」

受付嬢の視線はさておき、大人しく記入する。

「ファイ…俺住所…どうしたらいい?」
「俺のとこでいいだろ?一緒に住むんだから。教えるから覚えとけな」
「うん。わかった」

そんなやり取りを受付嬢は遮ってきた。

「あ…あの!!ファイさんはその子と…どういう関係ですか!?」

その一言で周りは静まり返った。
ファイの視線は冷たかった。ちょっとキレてる…。

「……それは君に関係あるか…?」
「あ…皆気になってる事と思いますが…」
「…はっきり言っておく!!この子は俺の番だ!!何かしようものなら俺達は容赦しない!!」
「番…!?こんな子が…?」
「俺が番だと困りますか?」
「…っ!!いえ…すみません…」

やっぱりファイに気がある女だった…。
はっきり言ったからたぶん大丈夫だと思うけど…。

「わかったならさっさと手続きを進めて貰えるか?」
「はいっ!!申し訳ありません!!書類を確認しましたので次はレベルの確認をさせて頂きます」

レベルは上げといたけど…大丈夫かな?師匠が大丈夫って言ってたから平気かな…?

「ご自身のレベルによって最初に与えられるランクが変わります。1~30レベルがEランク、31~50レベルがDランク、51~70レベルがCランク、71~100レベルがBランク、101~150レベルがAランク、151レベル以上がSランクとなっております。Dランクまでは必要レベルと任務実績で昇格できますが、Cランクはそれに加えてギルマスとの模擬戦、Bランク以上は模擬戦の変わりにそのランクに応じた魔獣討伐で昇格致します。任務実績はギルドカードに魔力によって自動的に記録されますので虚偽報告は出来ません」
「結構細かく決まりがあるんだねぇ…」
「まぁ、嘘言って高ランクになってもどうせ死ぬだけだしな。そんなバカは碌な事になりゃしないよ。ナルはもうすでに実力はそこらの冒険者にも劣らないくらいだから大丈夫だろ」
「ん、俺頑張るね!!」
「では、この板に手を置いて頂けますか?」
「はい」
「魔力を少し吸い取らせて頂きます。終わるまでは手を動かさないようお願いします」
「わかりました」

板に置いた瞬間スルスルと魔力が出ていく感じがわかった。
最初に魔力循環をしたときみたい…。

「測り終わりました。手を離して頂いてよろしいですよ。ナルさんのレベルは…63レベル!?た…高い……」
「またちょっと上がってたね」
「まぁ…あんだけ魔獣狩ってりゃなぁ…俺の分まで取りやがって…」
「ナル君俺が教えたのすぐ出来ちゃうんだもん。このレベルは当たり前だよねぇ」
「順調順調!ナル君頑張ってて良い子!!そこらの奴らも見習ってほしいくらいだねっ♪」

皆から褒められるの凄く照れるけど嬉しい。

「ナルさんのランクはCランクからです…がギルマスとの模擬戦も必要になりますが…」
「ん、やります!!」

俺のランクを聞いて周りがざわめいた。
そんな珍しいのかな…?
子供じゃないんだしそのくらいレベルあげるの当たり前じゃない?低レベルなんて子供のお使いくらいしか出来なくない?

「登録初回でこんな高ランクで始まるのはルトラさん以来ですね…」
「ルトラも凄いんだねぇ…!!」
「…ナル君よりは低いレベルだったよ?一応僕もCランクからだったけどね…」

ファイたちまでにはまだまだ届かないけど一応ランクは高めで始められるし良かった良かった。

「じゃあパーティー登録もついでによろしく」

パーティー登録をしようとしたら、やっぱり文句を言う奴が出てきた。師匠の思った通りだった。

「ファイさん!!そのランクで貴方のパーティーに入れるなら何故俺を入れてくれないんすか!?俺の方が強いと思いますっ!!」
「…強さで入れてるわけじゃないけど…?自分の番をパーティーに入れるのがダメなのか?パーティーメンバーを決めるのは俺達だ。お前に文句言われる筋合いはねぇぞ?」
「そいつがパーティーの弱点になってもですか?」
「弱点にはならんな。ナルはお前より強いし。ランクが低いから弱いってのはお前の価値観たろ?」
「事実です!レベルが全てです!」
「ナルは一ヶ月かからずにこのレベルまで上げたんだぞ?」
「!?い…一ヶ月…!?」
「…ファイ…文句言う奴集めてくれていいよ?全員相手してあげる。俺自身で認めさせる」
「…お前がそんな事する必要はねぇんだぞ…?」
「こうするのが一番早い…」

文句言う奴はいつまで経っても文句言ってくるんだから力で認めさせるのが手っ取り早い。
これで勝てば俺の強さも証明できて襲ってくるような奴も少なくなるだろう。

「ナルよく言った!師匠としてお前を舐めるやつはいらん!!全力でやってこい!!」
「うん!俺やってくる!!」
「ナル…気をつけろよ?」

ギルドに入ってから殺気ダダ漏れな奴数人いたからなぁ。
ファイが何も言わないのを良いことに、全く馬鹿な奴ら。

「なにを騒いでる!!」

この騒ぎを聞きつけてやってきたのはコーガさんくらい体格が大きい熊のおっさんだった。きっとあの人がギルマス…かな?

「ギルマス騒いで悪いな…」
「おぉ…ファイお帰り!!無事任務終わったようで何よりだ。で?この騒ぎの中心はお前か?」
「ん~俺…よりもコイツかな。俺の番のナルだ。よろしく頼む」
「ふぅ~ん…お前の番ね…。番のパーティー加入に文句が入ったってところか?」
「よくお分かりで。だから文句言う奴をナルが相手するとこだったんだ」
「…はぁ…こんな狭いとこでやるのは勘弁してくれ。やるなら地下訓練場貸してやるから。そこなら魔法もどんだけぶっ放しても文句は言わん」

へぇ!!そんな便利な場所あるんだ?
魔法の威力どうやって抑えようか考えてたけど、気にしないでいい場所あるならいいね!

「じゃ、さっさとそこ行こ!!さっさと片付けてファイとゆっくりのんびり休みたいから!!」
「終わったら俺の家に案内しよう。近くに俺達のアジトもあるからそこで皆で加入祝いしようか」
「ふふっ…俺すぐ終わらせるね!」
「クソガキ…舐めた事言いやがって…!ぜってぇ潰してやる…!!」

…この人ファイの番の俺潰したら次は自分が潰されるって思わないのかな?番に手ぇ出された人の怒りを買うことの怖さを知らないのかなぁ?
まぁ、俺は潰されないけどね!!

何だか凄く大事になっちゃったけど、それも楽しい。
ファイにくっついてルンルン気分で地下へと向かった。




「ナル君とても楽しそうだねぇ…」
「今まで魔獣相手だったし、人相手にするのは滅多になかったから色々試したいんじゃない?」
「ナルの魔法えげつねぇからなぁ」
「ナル君を傷つけた奴、ファイが全員殺しそう…」


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