異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百七十六話 ゲテモノ

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このダンジョンの魔物は利口なのか、ベリアと一緒の状態では中々襲っては来なかったが、夜の9時を過ぎると複数体で攻撃を仕掛けて来た。

今回はベリアも一緒なので分割して対応し、単独戦闘の時よりも負担無く無力化が出来た。

「やっぱりベリアが一緒だと対処が楽だな」

「この程度の大きさの魔物なら、風魔法で倒せるからな」

「羨ましい限りだ」

倒した魔物の処理は夜なので後回しにしているが、まだ自分達を狩るつもりではいるようでメガネには相変わらず反応が表示されている。

「そうか?アタイはイズミの武器も魅力的だと思うぞ」

「威力はあるが、魔法みたいに同時に何体もは処理しきれない」

「そこはイズミの頑張り次第だな…」

ベリアが会話の途中で鞘に収めたナイフを抜くと、体勢を低くして森から距離を取り始めた。
イズミはマスタングに索敵を頼むと、少し離れた所に強い魔物の反応がある事が分かった。

「イズミ…この臭いは多分、ケルベロスだ」

「もしかして、この前の?」

「恐らく。だけど変な臭いも混じってる」

ベリアの嗅覚は間違い無く遠くに居るケルベロスを捉えており、近づいてくると予想して戦闘態勢を取っている。
今度はやられまいとイズミはショットガンのシェルを抜き取ると、スラッグ弾を装填して一撃の威力アップを狙い準備を進めた。

「イズミ、ベリア…様子はどうじゃ」

「嫌な予感がヒシヒシと、と言った所です」

完全武装のオルドリンと、それに付き添うセリーヌが姿を見せたので簡単に情報を共有しておく。

「ベリアが遠くにケルベロスが居ると」

「オブリビアで出会したと言う魔物じゃな」

「そうですね…情報はベリアの嗅覚頼りなので、それ以上は何とも」

「ケルベロスを相手にするは酷じゃな」

オルドリンが手に持った武器を肩に担ぎ直すと、森の方をジッと睨みつける。

「結界は張ってみますが、ケルベロスを防げるかどうか」

「セリーヌよ、ケルベロスなら一撃で結界を砕きかねん。魔力温存の為に探知程度にしておいた方が良いだろう」

遠くから魔物の咆哮が轟き、マスタングがヘッドライトを森へ照射を再開したので皆が身構える。

「…来る!」

ベリアの全身の毛が逆立つと同時に、森から大型の魔物が姿を現した。

「なんじゃ…儂の知るケルベロスとは大部違うのう」

その姿を目の当たりにしたオルドリンはどうにか言葉を絞り出したが、それ以上の言葉は出て来なかった。

現れたケルベロスはイズミ達が倒した魔物を喰らい始める。
ケルベロスたらしめる特徴である3つの頭部は、過去に1つ落ちた記憶があるが別の形で復活を遂げていた。

獣の頭部が2つと、無数の人間の頭や手足で象られた1つでだ。
良く見るとケルベロスの右前脚に人間の手が纏わりついていて気持ちが悪い。

獣の頭部が魔物を喰らい終えると、ゆっくりとその視線がイズミへと向いてゆく。

「…何だろうな、俺と目が合ってる気がするよ。気分が悪いな」

「何を呑気な事を言っておる!」

少しばかり現実逃避にも思える発言をしたイズミに檄を飛ばすオルドリンだったが、歪な頭部にある無数の人間の顔が一斉に叫び出すと全員が顔を歪めた。

目の前で頭部が形を変えはじめ、大きな人間の頭部へと変化したのだ。
その頭についた巨大な目がイズミ達と捉えると、気持ち悪い程に大きな口を開いた。

「我々の悲願を邪魔する人間共…同族の恥さらしめ」

「おいおい、今の自分の姿を見てからその発言をしてくれ。まるでゲテモノだぜ?」

「生きる恥さらし共は、目玉も腐っているようだな」

イズミは軽口を叩きつつマスタングに魔法通信を繋げた。

どうも人型の頭部はケルベロスとは別の意思でも持ち合わせているらしく、目玉をギョロギョロと動かしながら大きな口から唾液を垂れ流す。

「…マスタング、あの頭部をミサイルで潰してくれ。俺の手持ちでは恐らく無理だ」

「かしこまりました」

マスタングと次の一手の相談を終えたイズミは、小さく呼吸を整えるとショットガンを構える。

「さてゲテモノ、聞きたい事は色々とあるが…ご退場下さいな」

「ゲテモノ呼びとは不敬な。やはり我々とは同じ形をしているだけの欠陥種族のようだ」

「不敬ついでに聞いて良いか?お前は誰だ」

「我は…我々は?」

巨大な目玉がグルリと動き、黒目が明後日の方向を向く。
その瞬間にイズミはショットガンで目玉を撃つと、ケルベロスが勢い良く飛び跳ねて距離を取った。

マスタングはケルベロスが着地をする瞬間を狙ってミサイルを発射した。
避けきれず巨大な人間の顔にミサイルが命中し、派手な爆発と爆風と熱気がイズミ達にも伝わって来る。

無数の人間の悲鳴が聞こえ思わず耳を塞ぎたくなったが堪えていると、ベリアが風魔法で煙を追いやってくれた。
改めてケルベロスを姿を拝むと、巨大な人間の頭部は跡形も無く消え去り大量の血を撒き散らしていた。

イズミ達が最後に見た姿に戻ったケルベロスが雄叫びを上げると、無くなった頭部と流れ出た血から黒い煙が噴出される。

悲鳴を聞きつけた冒険者数名がイズミ達の元へやって来ると、ケルベロスを確認するや素早く緊急事態と判断して防御行動を取り始めた。

「これは…いかん、転移魔法じゃ!」

オルドリンが声を荒げるとセリーヌがワンドを構え呪文を唱えだす。

「間に合うかしら」

セリーヌが魔法を発動すると同時に、その目にケルベロスの肉体が朽ちてゆく様が映る。

イズミ達の足元で何かが光ったように見えた瞬間、真っ黒な布で視界を遮られたように目の前が暗転した。
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