異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百七十八話 高過ぎるハードル

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イズミはパッと思い付く案を誰にも聞かれない様に魔法通信を駆使し、マスタングに確認をしてみる。

「マスタング、トレイズと言う男が仕掛けた結界の打開策なのだが…手っ取り早く誰かに魔法適性を追加させるのは悪手か?」

「推奨しません。現状において魔法適性追加の為に、我々の魔力を消費すべきではありません」

「ベリアに追加するのは?」

「それも得策ではありません。ベリア様には冒険者ギルドへの報告義務がありますので、魔法適性が増えたとなれば確実に我々に対する圧力が強まります」

「そりゃ面倒だから却下だな…いっそミサイルで結界を破壊するか?」

「結界に命中するかが不明です」

マスタングの回答を聞いたイズミは、運転席のドアを開けるとモニターを確認する。

「結界は防御魔法では無いので、そもそも攻撃が当たらない可能性が高いです」

「盾じゃないからミサイルがターゲットとして認識をしないのか。では魔法鍵はどうだ」

「結界は扉ではありませんので、対象外です」

そこまで確認をしたイズミは、マスタングから降りてオルドリン達の元へ向かう。

「誰かあの結界を破壊する事は出来ないのか?」

「…無理じゃな」

「シュナイダーを引っ張り出して来ても?」

「奴の魔法適性は4個じゃ。それに此処まで来れるとも思えん」

可能性の有無を確かめるべく聞いてみたが、男の自尊心が失われたシュナイダーは完全に戦力外扱いのようである。

「では、扉を開放したら撤収ですか?」

「…悔しいが、それしか無いだろうな」

オルドリンの声のトーンはかなり低く、この場には諦めムードが漂い始めている。

「駄目だ!もう少しで開放出来そうなのだが、何かが反対側から引っ張ってるみたいに戻されちまう」

汗だくになった冒険者の1人が、セリーヌの結界に入って来て報告すると水を一気に飲んだ。

「今のままではこの階層から出れないし、結界の解除も出来ない。完全に孤立状態だな」

「今しがたヴィラード達に魔法通信を試みたが、雑音だらけで使えたものでは無かった」

策が全く浮かんで来ず、時間だけが過ぎてゆく。
今の所は魔物が現れていない事が、自分達にとって唯一の救いなのかもしれない。
そんな事を考えていた時だった。

「マスター。少々よろしいでしょうか」

「なんだ?」

「マスターであれば、何もせずとも結界を通過出来るかもしれません」

「その根拠は?」

イズミは誰にも何も言わずにマスタングに乗り込むと、モニターに表示される情報を確認する。

「展開されている結界は、魔法適性の数のみで判断をしております。原理としては表示されている情報の通りです」

モニターの右側には結界が、左側には各魔法適性を色分けしたポイントが配置されている。

「スキャンした結果、この結界には魔法適性の指定がありませんでした。つまりどの適性でも良いので、合計で6個有していれば良いのです」

モニター上で結界を通過するシミュレーション結果が展開される。

「マスターが問題無く通過出来ると判断する根拠ですが、とても単純です…マスターには魔法適性がありません」

「確かに、エレナと一緒に水晶で見てもらった時に適性が無いって出てたな」

「そうです。マスターには魔法適性が1つもありません、つまり無です。冒険者ギルドの人間が話していた事を思い出して下さい」

イズミは運転席に深く腰掛け、腕を組むで必死に思い出す。

『おかしい。幼子でも魔族でも、魔獣でも必ず1つは反応するのに…』

確かそんな事を言っていたような気がする。

「これは推測ですが過去に全魔法適性を持つ者は居ても、マスターの様に全魔法適性無しは居なかったのではないでしょうか」

「…何が言いたい?」

「マスター。高過ぎるハードルを飛び越えるのは困難ですが、高過ぎるが故に下を潜れるかもしれません」

マスタングはこう言いたいのだろう。
この結界は魔法の属性を問わず、適性が1個から5個までの存在が通過出来ないように設定されている。
6個以上の保有者であれば通過出来るが、0個は想定外なのでイレギュラーで通過出来るのではないか。

「あまり嬉しくないが、これに賭けてみるしか無さそうだな」

呼吸を整えたイズミはマスタングから降りると、一度オルドリン達の居る結界内に入り確認をしてみる。

「突然の質問で恐縮なのですが」

イズミの声を聞いた全員が、一斉にイズミの方へ顔を向ける。

「この中で、魔法適性が無い人間の話しを聞いた事がある方はいますか?」

「魔法適性の無い人間?」

オルドリン以外の全員の頭上に、疑問符でも付いているかのような表情をしている。
聞いた事が無いのだろう。

「確か、お主に関する資料に書かれていたな…光の教会内でも調査をしたが、過去に1人も魔法適性無しの者は出て来なかった。居れば確実に教会は調査をしている筈じゃ」

「俺が魔法適性を調べたのは数ヶ月前の事だ。トレイズとやらが展開した結界は、何時頃発動したのか分かりますか?」

「…発動してから一度も更新はされておらんようじゃから、帝国が侵攻して来た時、つまり20年以上前かの」

「だとすれば。トレイズが結界を張った時点において、常識的に考えれば魔法適性無しの存在なんて考える事は無い訳だ」

イズミは身体を伸ばして筋肉を解すと、結界の近くへと歩き出した。
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