異世界無宿

ゆきねる

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第二十五章 オブリビアダンジョン

第四百九十三話 世に出せる物と駄目な物

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個室に3人が揃った所でアーリアに遮音魔法をかけて貰うと、先ずはイズミがキメラ討伐のドロップ品である木箱の中身を取り出した。
実際は白装束の幽霊だったトレイズが守っていた代物も含まれているが、説明としてはドロップ品で大丈夫だろう。
元々は青白く光る薬草だけを見てもらう想定だったが、サクッと他のを先に出してみる。

「どれどれ…凄いブレスレットね。全部が守りに徹してる効果付与と、ブレスレット自体の癖が強くて装着者は苦労しそう。この書物は…ずっと昔に禁じられた魔法に関する研究書みたい。外部に流す位なら私が買って永久封印するか、さっさと燃やしなさい」

本をパラッと流し見しただけで内容が理解出来てしまうアーリアには脱帽だが、コレで書物は不用品リストに入ってしまった事になる。
自分としては少し残念ではある。

「へぇ、この魔道具はユニークね。素材を用意すれば、人工的に魔石を生成出来るみたい」

「高値で売れそうか?」

「売れるわね。書物と魔道具が一緒にあるって事は、魔石を大量に生成して禁術でも使ったのでしょう。イズミが持ってるなら使用者は既に故人だし、好きにして良いと思うわ」

「なら、金に困った時に売りに出すとしよう。俺のは終わりで、残りはベリアのだな」

待ってましたと言わんばかりに、ベリアはアイテムを取り出した。
最初に取り出したのは、ダマスカス鋼のような素材で作られた片手剣だ。

「…ダンジョンのドロップ品で間違い無いのよね?」

「そうだぞ。めっちゃデカい魔物を倒したら出て来たんだ」

「この剣はとても特別な剣よ。一応戦闘でも使えるけど、本来の用途は儀礼や儀式に近いの…効果の1つは病斬り」

「詳しく」

アーリアは深呼吸をしてから、少し本格的に鑑定を始める。

「うーん…肉体的な病では無く、魔力由来の病を断ち切ったりするの。独特の模様は身体を蝕む魔力を剣を介して流し出す、そんな意味合いを含ませているように感じる。とんでもないレアアイテムよ」

「この剣で斬れば、魔力の暴走を起こした者を止められるのか」

「平たく言えば、そうなるわね。逆に考えると、健康な人を斬っても効果は発揮されない」

「ちょっと微妙だな」

「冒険者には微妙かもしれないけど、剣自体はドワーフでも完全再現は出来ない逸品よ。王族への献上品とかにしたら多方面に牽制出来るわね…まぁ、扱えないだろうから出来て国宝として飾るくらいでしょう」

「牽制って」

「私の見立てではベリアさんは確実にSランク冒険者に昇格するわ。生まれた国で授与式や祭典が開かれるし、王との謁見は必ずある。獣人族への差別問題は昔に比べると和らいでいるけど、まだまだ古い考え方の貴族は多いの。でもこの剣を献上品に出せば、その価値を理解出来る識者を確実に味方に取り込める。その意思があるならね」

アーリアの説明ではイマイチ理解が出来なかったので、もう少し噛み砕いて説明を頼む。

「ごめんなさい、つい熱が入っちゃったわ…貴族は贅沢や稀少価値の高い品を所有する事がステータスな一面もあるから、規格外なレアアイテムを献上したとなると周囲は目の色を変える」

そこまで聞いて、イズミは少しだけ読めてきた。

「戦闘に使えずとも、別の活用方法はあるって事だな」

「そして、剣を真の意味で使える者は極少数だから、悪用される事が無い」

ベリアは説明を聞き終えて剣を仕舞うと、次は表紙に魔法陣が描かれた本を出した。

「アタイにはサッパリな内容なんだけど」

「…なにコレ!?随分と面白い事を真面目に研究してるわね」

アーリアはあるページを読み始めると、口角を上げて説明してくれた。

「魔法を上手く活用してぐーたら生活を満喫する為に、開発が必要な魔法に関する研究だって」

「ぐーたら生活」

「本当に面白いわよ。水浴びやお手洗い以外でベッドから出たくないから、出来ることは1つでも多く魔法で解決をしたいから、色々と考えてみました…ってのが、この書物にまとめられてるの」

「…売れるのか?」

「ギルドで良い価格を提示されなかったら、私が買うわよ。読んで研究してみる価値はありそう」

ベリアは続けて首飾りを見てもらったが、これは普通に豪華な首飾りと言うだけであり、ベリアとしては面白みは感じていないようだった。

「あとは…コレだな」

ベリアが青白く光る薬草を見せると、アーリアの動きがピタリと止まった。

「どうしたんだ?」

あまりにも動かないのでベリアはアーリアの顔の前に手を翳すと、我に返ったアーリアの顔に汗が流れる。

「コレは…世に出すとマズいかも」

「え!?まさか毒草とか?」

「違うわ…超希少な薬草よ。私も実物を見るのは2度目のレア中のレア、SSランクの上よ」

アーリアは少し興奮気味に説明を続ける。

「その薬草を1本食べれば、魔法適性が1つ増えると言われているのよ。調理方法は自由」

この薬草を冒険者ギルドへ鑑定を頼んだら間違い無く国が動く事態に発展するから、頼むならギルド内の上層部のみに話をするべきだと助言を受ける。

「じゃあさ、コレをイズミが食べたら魔法適性が追加されたり?」

「それは無理ね。イズミの身体はとても特殊で、魔力はあるけど何をしても魔法は使えないのよ」

「ちなみにだけど、アーリアは欲しい?」

扱いに難がありすぎる為、どうしたものか困ったベリアはアーリアに聞いてみる。

「魔術師協会の所属する者としてなら、研究素材として欲しいけど…オークションや売りに出たら買える金額じゃないわね。大国の国家予算の何%になるか、分かったものじゃないわ」

「アーリアは個人的に欲しくないのか?魔法適性を増やしたいとは?」

「個人的になら要らないし思わないわ。全部使えるもの」

サラッと返答されたが、アーリアにとって魔法適性と言うのは単なる目安程度の感覚なのかもしれない。

「私は軽く見ただけだから、本格的な鑑定はギルドに任せなさい。彼等は鑑定結果に責任を持たなければならないし、正式な買取価格で取引をする為にもね…金額を聞いて驚かないでいれたら、大したものよ」

その事実をもう少し前に知っていれば、ダンジョン内に張られた結界もどうにか出来ていたのに。
イズミはそんな事を考えてしまいながら、アーリアの規格外さに笑うしかなくなっていた。
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