異世界無宿

ゆきねる

文字の大きさ
550 / 624
第二十七章 サンダーブレード作戦

第五百三十七話 宝石の王様?

しおりを挟む
「イズミさん、詳細な鑑定の為に少しだけ研磨をさせて頂いてもよろしいですか?」

「どうぞ」

トレヴァーは自前の装備を取り出すと、鉱石の一部を軽く研磨し始める。

「何と美しい…鮮やかと表現するのが正しいかもしれません。美しさと鮮やかさの共存です!青みがかった緑色に、ロウソクの灯りで見た時の赤色は赤紫色にも受け取れます。ここまで色の変化が鮮明だなんて」

トレヴァーは感動のあまり涙を流し始め、シンドラーとサマンサが若干引いているのが分かった。

「ギルド長!この鉱石いえ宝石は是が非でも商人ギルドで購入し、ネックレスと指輪の2つを作りましょう!」

「トレヴァー、少々気が早いぞ。先ずはこの石の価値をもっと分かりやすく説明しなさい」

「分かりやすく説明ですか?なら簡単です。この宝石は奇跡の存在です。ルビーやサファイア、ダイヤモンドやエメラルドとは違う…この大きさで存在する事自体が奇跡なのです!研磨した場所を見て下さい、王侯貴族達が持つ多くの宝石と比較しても遜色の無い透明度になる事は、私が特級鑑定士の名誉をかけて保証致します」

「つまり透明度は最高級品と同等と」

「それ以上かもしれません。色自体も非常に鮮やかですし、色の変化も惚れ惚れする程に鮮明です。1つ問題があるとすれば」

トレヴァーは鉱石を丁寧にテーブルに置くと、ボソリと言葉を紡いだ。

「まだ正式な名前が無く、貴族にもほとんど認知されていない事でしょうか」

「正式な名前が無いのであれば、宝石として売りに出す際に大々的に名を売れば良い。我々は商人ギルド、良い物を高く売る為の技術は世界一だぞ」

そんな会話がされているが、イズミはこの宝石の名前がもう少しの所まで出かかっているのに思い出せずにいた。
舌先まで出かかっているような気がするが、如何せん宝石関係の知識は少ないのだ。

「アレキサンドライト…やっと思い出せたぞ、スッキリした」

イズミはようやく宝石の名前を思い出し一人勝手に解決し自己満足に浸っていたが、無意識に口から溢れていたようで商人ギルドの3人の視線がイズミに向けられている事に気が付いたのは、自己満足を終えて直ぐの事である。

「アレキ…なんですって?」

イズミはこの瞬間、自分が手痛いミスをした事に気が付いた。
まだ名前が無いと言われている宝石だと言うのに、元いた世界基準での名前を思い出して、あろうことか無意識に言葉にしていたとは、不覚である。

「あ…思い出したんですよ、その石を私にくれた男の名前を」

「それが、アレキ…」

「確か、アレキサンド…ルだったかな?アレキサンドロスではなかったような?」

元いた世界の歴史であればロシア帝国時代に皇帝へと献上され、その日は当時のロシア皇太子てあるアレキサンドル2世の成人式の日だったとかで、アレキサンドル2世の名前にちなんでアレキサンドライトと命名された…とかだったはずだ。
宝石の王様と言う称号を持つ、素晴らしい宝石だ。
そういった肝心な所までは思い出せない、それが宝石に関して興味関心の無い人生を送っていたイズミの残念な所である。

「なので、この石を私にくれた男の名前にちなんで、アレキサンドライトとするのはどうでしょう?アダマンタイトみたいに、名称の最後にイトってつくと良い感じになりますし?何か強そうだし」

「アレキサンドライト…とても素敵な名前です」

口八丁手八丁よろしく、何とかイズミは話をまとめることができた。
トレヴァーは宝石の名前を二度三度と呟いている内に、その名前が気に入ったようである。

「ギルド長、このアレキサンドライトは是が非でも買い取りを!」

「幾らで買い取るか、それが問題だぞ…今の会話をイズミ氏は聞いておるからな」

「あ…」

希少だとか最高級品だとか聞いてしまったら、買い取り金額も跳ね上がる事を期待するのが人の性である。

シンドラーとトレヴァーはイズミに一声かけてから一旦席を外すと、二人で買い取り価格の交渉の為に計算を始めた。

「トレヴァー、この石を完璧に加工しきったとしてだ。幾らで売れると考える?」

「仮にネックレス単体や指輪単体として考えても、指輪であっても金貨2万枚は下る事はありません。宣伝方法次第にはなりますがね」

「それについては私に考えがある。上手くいけば抜群の宣伝が出来るはずだ。あの大きさの鉱石だが、どれだけ使える部分があるのかは未知数だが…その辺りはどう見る」

「私の見立てを信じて下さるのであれば…7割は理想的な状態のカットで仕上げられるでしょう。残りは今後の宝石界の為に研究や資料として残しておくのが良いでしょうね、カットのテストにも消費してしまいますし」

「あの大きさから7割使えて、ネックレスと指輪か…よし、金貨4万枚で行こう」

「よ、4万枚!?」

「これは私の勘だが…効果的な宣伝をしてから売りに出せば、ネックレスだけで金貨10万枚近くは行くだろう。元は確実に取れる。それにだ、私の権限で自由に支払える即金の上限額は金貨5万枚、残りの1万枚は取っておきたいのもある。これで行こう」

部屋に戻って来た二人が椅子に座ると、シンドラーが買い取り金額を提示する。

「イズミさん、我々としましてはこの鉱石を金貨4万枚で買い取らせて頂きたい。4万枚でしたら、私の権限にて直ぐにお渡しが出来ます」

「分かりました、それで良いですよ」

イズミは二つ返事で提案を受け入れた。

「よろしいのですか?」

「はい、大丈夫です。私が持ってるよりは、遥かに良い未来が鉱石を待ってそうですから」

金貨が4万枚もあれば、男神様向けの酒代は賄えるだろう。
これで足りなくなるようならば、それは男神様達が飲み過ぎなのだ。
そう考える事にした。

交渉成立すると、10分後には金貨4万枚がイズミの手元にやって来た。
ショルダーバッグに収納したイズミは、ニコニコしているシンドラーとトレヴァーそして引き攣った表情をしているサマンサに挨拶をしてから商人ギルドを後にする。

次の目的地は光の教会である。
ロレッタの願いに関する打ち合わせをするついでに、男神様から授かったワンドの事も確認すべく、マスタングに乗り込むのだった。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~

めでめで汰
ファンタジー
バッファーの少年カイトのバフスキルは「ステータス欄の中に入って直接数字を動かす」というもの。 しかし、その能力を信じなかった仲間からカイトは追放され迷宮に置き去りにされる。 そこで出会ったLUK(幸運)値の高い少女ハルと共にカイトは無事迷宮から生還。 その後、カイトはハルの両親を探すため地下迷宮の奥へと挑むことを決意する。 (スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)

不死身のボッカ

暁丸
ファンタジー
逓信(ていしん)ギルドに所属する甲殻人ボッカ。歩荷(ぼっか=運搬人)だからボッカと素性を隠す特急便の運搬人。 小柄な身体に見合わぬ怪力、疾風のスピードと疲れ知らずのスタミナで、野を越え山越え荷物を運ぶ。 逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。 割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。 ※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。 ※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。 ※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。 ※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...