異世界無宿

ゆきねる

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第二十八章 梅雨が明けるまで

第五百八十六話 山分け作業

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オリヴィアの武器購入も済んだ所で、一度酒盛りで男神様や精霊達から戴いた物を整理すべく、イズミはグラテミアの屋敷の1部屋を借りて並べ始めた。
オリヴィアは屋敷に到着するや従者に連れられて、湯浴び出来る部屋へと移動して行ったので今は1人だ。

戴いた品物がどのような代物なのか全く分からないので、鑑定スキルを持った人物をフラウリアに呼んで貰うと、久し振りの女性が部屋にやって来た。

「久し振りねイズミ、随分と派手にやってるみたいだけど」

「アーリア、久しぶり。頼みたい事ってのは」

「部屋を見れば分かるわよ。これの鑑定でしょ?」

鑑定スキルを持っている人物として部屋に居るのはフラウリアとアーリア、そしてグラテミアの3名だ。
そしてアーリアは小さくため息をつくと、広げられた綺麗な布の上に置かれた大量の品物へと目を向ける。

「大体は把握してるけど一応聞くわね、何をしてたの?」

「男神様や精霊達向けに酒盛りをしてたんだ…5回程ね」

「やっぱり」

「アーリアはどうやって把握したのか、後学の為に聞いておいても」

「女神様から聞いたのよ。【ソッチに酒飲みへ行ってるみたいだから、何かあったらよろしく】って言われたわ。大事になってないようで良かった…イズミ、その目はどうしたの?」

「目?まぁ色々あったのさ。大した事じゃ無い」

イズミはアーリアに瞳を覗かれてから瞼を閉じて顔を背け、まだ出せていない品物をテーブルに並べる。

「強力な魔力の揺らめきが2…いえ3種類ある」

「特に生活には影響無いぞ」

「でしょうね。単なる目印のような物だから…2つは私でも分かるわ。ブラックドラゴンと、魔王様の魔力ね。もう1つは私が感知した事の無い魔力だけど」

「現職の魔王様のだ、めっちゃイケメンでヤバかった」

「…現職の魔王様に会ったの?」

「ああ、一緒に酒を飲んだ」

品物を出し終えたイズミが水を飲みながら鑑定スキル持ちの3人の顔を見ると、アーリアだけ深刻そうな表情をしている。

「グラテミアさんは驚かないのですね」

「フラウリアからも報告は来てましたし、酒盛りから帰られる際に此方に立ち寄って下さいましたので」

「イケメンだったでしょう?」

「私の口から魔王様の容姿を表現するのは、とてもとても」

そうは言うグラテミアだが、右手を頬に当てた時の口元には笑みがあった。
概ね同じ意見なのではなかろうか?

「アーリアは会った事は無いのか?」

「あるわよ。でも魔力は感じ取れなかったの」

「そんな事もあるのか…戴いた品物はこれで全部です。これを酒盛りに携わった皆で山分けにしようと思ってます、勿論鑑定をしてくださる御三方にも鑑定協力のお礼として受け取って頂きたいですが」

その後部屋内に居る全員で相談した結果、酒盛りの場に居た人にのみ振り分けをする事になった。
鑑定に協力をしてくれる3人への報酬は、イズミの取り分から差し引く事でまとめた。

「私とメーレルさんとベリアが5日間全て出てます。オリー…オリヴィアは1日だけで、光の協会に所属しているロレッタさんも1日だけ」

「光の協会の人間に渡すなら…これとかが良いかも」

アーリアは小振りなガラス製のグラス2個と、これまた小振りなワンドを2個を小分けにする。

「グラスには通常状態では見えない精霊文字が彫られていて、破損防止と浄化効果が付与されてる。効果はほとんど永続だけど、定期的に月光浴が必要よ」

「大分破格の代物だな。ワンドの方は?」

「使用者の魔力量次第だけど、かなりの万能魔道具よ。本当に多用途で使えるわね…冷めたスープを一瞬で適温にするとか、雨水や川の水や泥水を綺麗な飲料水に変えるとか。魔力の枯渇した土に魔力を込める事も出来る」

「光の協会の人間なら、欲しがりそうだな」

「絶対に欲しがるわね。農作物の発育を助ける事も出来そうだし、病も未然に防いだり進行具合によるけど治せるかも」

「そんな代物なら、是非ロレッタさんに渡したい所ですが…グラテミアさんとフラウリアさん、よろしいですかね?」

イズミが念の為に2人に確認を取ると、あっさりと返事が来た。

「それが良いと思います」

フラウリアがそう言ってくれたので、このグラスとワンドはロレッタさんの報酬にする事が決定した。

他の品物の鑑定作業も進み、大まかにギルドへ売りに出せる物と出せない物との2種類に分別が出来た。
売りに出せる品物は宝石や魔石にアクセサリーがメインであり、大なり小なり効果付与がある。
問題は売りに出せない品物だ。

「イズミ…売り出すのは現実的じゃない魔道具は、合計で32個よ」

「現実的じゃないってのは、べらぼうに特別な代物なのか?」

「例えばこの宝石付きの指輪だけど、超再生が付与されてるの。使用者の魔力を使って、対象者の肉体的欠損箇所を再生させる事が出来る…問題は使用者の魔力を一度に大量消費する事よ、最悪死ぬわね」

「能力的には欲しがる奴がいそうだが」

「危険よ。誰でも使えるから奴隷に付けさせて兵士の肉体再生に活用したり出来るし、鑑定したら使用方法上セイフティが無いから悪用仕放題なの」

アーリアの持論にも一理ある。
指輪の能力が誰でも使えるとなれば、無理矢理使わせる事も出来るのだ。
そして並みの人間がこの指輪を手にすれば、直ぐにアーリアの言ったような使い方にたどり着くだろう。

「では、どう扱うのが理想か意見を聞きたいね」

「そうね、私の立場から提言するなら…魔術師協会で厳重管理をするか、光の協会の本部で使って貰うかね。国に管理させるのは避けるのが無難よ。大半の魔族は治癒魔法や再生魔法を習得している事が多いから、この指輪はあまり旨味がないかも」

アーリアの意見を聞いたイズミがグラテミア達へと視線を向けると、2人は静かに頷く。

「因みにだが…俺は使えるのか?」

「無理に決まってるでしょ、魔法も使えないのに使える訳がないじゃない」

「だよな。じゃあ一旦は俺の取り分にして、アーリアにお礼として渡すとかでも?」

「それでも別に良いけど、光の協会に賄賂として渡した方がイズミには旨味があるかもしれないわよ」

「賄賂か…出処を伏せても色々と聞かれるし、面倒なんだよな」

「何かの情報を貰う対価として、この指輪を出すのも有効よ」

「俺が持っててもアイテムボックスの肥やしにしかならないと思うが」

イズミはその後も売りに出せそうにない品物の内容を聞き、最終的に自分の取り分にしてアーリア達の鑑定作業に対する報酬として一部を渡す事に決めた。
流石にベリアやメーレル、オリヴィアに渡すのは気が引けたのだ。

そんな厄介な品物の一つであるアイテム…見た目は小型の砂時計…を手に取ると、イズミは静かにアイテムボックスに収納する。
付与効果は【時盗み】で、文字通り対象者の時間を強制的に奪う能力だ。
奪える時間に制限が無く、奪った時間は別の者へ分ける事が出来るらしい。

使い方次第でかなり化けるアイテムだがグラテミアもフラウリアも興味は無く、アーリアは他のアイテム数点を報酬として選んでおり砂時計迄は手が出せないと言われてしまった。

やむを得ないので、今回はマスタングにて厳重保管する事にした。
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