異世界無宿

ゆきねる

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第二十八章 梅雨が明けるまで

第六百六話 話を聞く朝食

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ミレイユが目覚めたのは、なんと翌朝の事だった。
マスタングから降ろしグラテミアの屋敷にてベッドに寝かせたりもさせたが、全く起きる雰囲気も無く眠ったままだったのだ。

イズミ達は前日に打ち合わせをしており、先ずは体調の確認をしてもらう。
この役割は三人の中で1番フレンドリーなベリアに頼んだ。
少なくともイズミは、ベリアが1番親しみやすいと思われやすいと考えている。

体調は問題無さそうなので、食事と湯浴びのどちらを先にするかを聞いてもらうと、かなりの空腹なのかお腹の虫が鳴いた。

「そうか、取り敢えず軽くご飯を食べようか」

イズミはまた厨房を借りると、モーニングセットを作る事にする。
量を食べられるかどうか不明なので気持ち少なめで出して、まだ食べられそうなら追加で作るつもりである。

「お、今日もあのモーニングセットってやつか?アタイも食べるからな!」

「そんなに連続で食べて、飽きないのか?」

「付けるジャムで味が変わるから、飽きないぞ」

ジャムはベリアの中で数種類出てくるのがデフォルトなのかもしれない。

「はいよ…じゃ、少ししたら食堂に来てくれ」

そう言うとイズミはまた、厨房の一角を借りるのだった。
今回も材料は厨房から戴き…ちゃんと支払いはする…黒パンは前回より薄めに切ってトースターに入れ込むと、約3分の位置に設定してから焼いてゆく。
スクランブルエッグとベーコンも手早く調理し、皿に盛り付ける頃には食堂に3人が揃い踏みだった。

「あれ?なんか今日は薄めだな」

「ミレイユが食べやすいサイズかなと、気持ち薄めにしてみました。焼き加減は良い感じだと思うが」

3人の前に料理を並べていると、オリヴィアが感心したように黒パンのトーストを手に取る。

「焼き色が前回より綺麗ね」

「トースターと黒パンの相性だと、この厚みと焼き時間3分が良い感じなのかもな。あとは食べてみてだ」

ショルダーバッグからジャムの入った瓶を取り出し、塗るようにスプーンも用意する。

「今日は赤いベリーのジャムにしようっと!」

ベリアは早速ベリーのジャムの入った瓶を手に取ると、黒パンにガッツリ乗せて頬張る。
その食べ方は豪快に見えるが、羨ましくなる程に美味そうに食べる。

「ミレイユ、貴方も食べて良いのよ?」

「…でも」

オリヴィアが出来立ての内に食べるように言ってみるも、ミレイユは隣のテーブルへと目をやって料理に手を出さない。

「ミレイユ。もしかしてだが、精霊様にも分けようと思ってるのかい?」

ミレイユの顔がイズミに向くと、静かに頷く。

「なら精霊様の分はこれから作って来るから、ミレイユは料理が冷める前に食べなさい」

「いいの?」

「勿論さ。まだ自分の分も作れてないし、1人前の追加くらいなら大丈夫」

厨房へ戻ったイズミはモーニングセットを作ると、3人が座っているテーブル席に自分用の皿を置いてから精霊向けの皿を隣のテーブルに置いた。
イズミには精霊の姿が全く見えないが、ベリアは朧げながらその輪郭が見えるようなと言った具合だ。

ミレイユも順調にモーニングセットを食べ進めており、ベリアもオリヴィアも一安心と言った様子だった。

食べ終えたミレイユが席を立ち隣のテーブルへ近付くと、小声で皿の料理を食べて良い事を精霊に伝える。

「オジサン、あのジャムを付けても良いのかって、コルンが」

「良いけど、付けすぎには注意だぞ」

「ありがとう!」

料理を食べて少しは元気になったのか、笑顔を見せながらブルーベリーのジャムを持ってゆく。
黒パンのトーストにジャムを塗ってやると、テーブルの上がぼんやりと光りだした。

「ジャム、甘くて美味しい。黒パン、美味しく焼けてる。卵ふんわり、好き」

そんな声が聞こえると思えばベリアにはようやく、声の主である精霊の姿が見えるようになったようだ。

「イズミ、このスプーンくらいの背丈の女の子がいるんだけど。見えてるか?」

「いや全く。オリーはどうだ」

「アタシも見えないね」

残念ながら精霊の姿は見えないものの料理に対する評価は聞こえたので、確かにこの場に存在している事は分かった。

「あらイズミさん。精霊が見えないのでしたら、マスタングさんに頼んでみては?」

食堂前を通りかかったグラテミアがイズミ達の会話を聞いたのか、視認する為の方法をマスタングに聞くべきとアドバイスをだした。
早速マスタングに魔法通信を繋げると、メガネに視認性を高める効果を付与する事で様子見する事になった。

マスタングの元へ向かいメガネを受け取ると元々使っていたメガネをトランクに収納し、オリヴィアにも渡して2人でも精霊の姿を確認出来るかを確かめる。

「うーん…ぼんやりだな」

ベリアとミレイユが言うには、モーニングセットを食べ終えた精霊はまだテーブルの上に居るらしいのだが、メガネを駆使しても視認する事は出来なかった。

「もしかしてですが、精霊側が魔力の放出を抑えているからかもしれません」

グラテミアの目にはハッキリと精霊が見えているようで、イズミからメガネを借りて確認をしてから説明をしてくれた。

「精霊が食事を取って力を蓄えていますか放出をしていないので、女神の加護を授かった者は辛うじてその姿を見れていますが、このメガネと言う道具を使っても精霊側からの魔力を掴めず正確な視認をするに至らないのでしょう」

「酒盛りの時は見えたのですがね」

「酒盛りと此処では状況が全く違いますよ。男神様や魔王様が近くにいらっしゃったから、そのお力で皆さんも精霊の姿を見れたのです」

「言われてみればそうでした」

何故精霊の姿が見えないのか、グラテミアとミレイユの助けを借りて精霊に事情を聞いてみると、現在かなり消耗しており魔力も体力もギリギリの状態らしい。
そこで精霊の姿が見えて会話も出来るミレイユの元へ向かい食事を貰っていたのだが、ここ数ヶ月はミレイユの生活環境が激変して体力回復も遅れていたとの事だった。

ミレイユはボロボロになった精霊を助けたい一心で、自分の分として出された僅かな食事すらも精霊と分け合いながら何とか生活をしていた事が分かった。
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